第1問(不動産登記法・表示)
問: 一筆の土地の一部について現実に地目が変わった場合であっても、一筆の土地について二つの地目を登記することはできないため、その一筆の土地は、原則として分筆をしたうえで、分筆後のそれぞれの土地に現況に応じた地目を定めることになる。
答: ○
解説: 表示に関する登記では「一筆一地目の原則」が採られており、一筆の土地に複数の地目を併存させることはできない。したがって、一筆の土地の一部の地目が現実に変更した場合(例えば宅地の一部が現況の道路となった場合)には、その部分を分筆して別の筆とし、分筆後のそれぞれの土地に現況に応じた地目を定めることになる。
この点について、不動産登記法39条2項は、分筆・合筆の登記の申請がない場合であっても、登記官は、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域を異にするに至ったときは、職権でその土地の分筆の登記をしなければならない、と定めている。すなわち、一筆の一部の地目が変わった状態は、職権分筆によって解消すべきものとして扱われている。
中級者として整理しておきたいのは、分筆の登記が「申請」によるルートと「職権」によるルートの双方を持つ点である。原則は表題部所有者又は所有権の登記名義人による申請(不動産登記法39条1項)だが、一筆一地目の原則を維持するための職権分筆の仕組みも併せて条文上用意されている。
第2問(土地家屋調査士法)
問: 土地家屋調査士に対する懲戒処分は、その事務所の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の長が行い、その種類は、戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止の3種類である。
答: ×
解説: 懲戒処分の「種類」が、戒告・2年以内の業務の停止・業務の禁止の3種類である点(土地家屋調査士法42条)は正しい。誤りは「懲戒権者」の部分である。
かつては法務局又は地方法務局の長が懲戒権者とされていたが、令和元年の土地家屋調査士法改正(令和2年8月1日施行)により、懲戒権者は法務大臣に変更された。同改正は司法書士法と土地家屋調査士法を併せて改正したもので、司法書士の懲戒権者も同様に法務大臣に一元化されている。
中級者としては、「現行法の懲戒権者は法務大臣である」という結論とあわせて、改正前は法務局長等であったという経緯も押さえておきたい。古い教材や過去問の解説では旧法ベースの記述が残っていることがあり、引っかけの素材になりやすい。なお、懲戒の手続として、何人も、調査士に懲戒事由があると思料するときは、法務大臣に対しその事実を通知し、適当な措置をとることを求めることができる点も、あわせて確認しておきたい。
また、この令和元年改正では、懲戒の事由があった時から7年を経過したときは懲戒の手続を開始することができないとする除斥期間の制度も新設された。懲戒権者の変更とセットで、令和元年改正の重要ポイントとして押さえておきたい。
第3問(民法・相隣関係)
問: 一筆の土地を分筆して、その一方を第三者に譲渡した結果、譲渡された土地が公道に通じない袋地となった場合、その袋地の所有者は、公道に至るため、譲渡人が引き続き所有する土地のほか、その袋地に隣接する別の第三者の所有地も通行することができる。
答: ×
解説: 民法213条は、土地の分割や一部譲渡によって袋地(公道に通じない土地)が生じた場合の通行権について、一般の囲繞地通行権(民法210条)とは異なる特則を置いている。
民法213条1項は、分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができると定め、同条2項は、これを土地の一部譲渡の場合に準用している。本問では、袋地の所有者が通行できるのは譲渡人が引き続き所有する土地のみであり、分割・譲渡と関係のない第三者の所有地を通行することはできない。
さらに、この場合の通行については、償金を支払うことを要しない(民法213条1項後段)。一般の囲繞地通行権では償金の支払いを要する(民法212条)のと異なる点である。これは、袋地が生じた原因が分割・一部譲渡という当事者の行為にある以上、その負担を当事者間で完結させるのが公平だという考え方による。
中級者としては、「分割・一部譲渡による袋地=他の分割者の土地のみ・無償」「それ以外の袋地=囲繞地通行権・原則として償金が必要」という対比を押さえておきたい。
第4問(測量計算・方向角と距離の逆算)
問: 座標値が点A(X=200.000 m、Y=150.000 m)、点B(X=160.000 m、Y=180.000 m)で与えられているとき、点Aから点Bへの方向角 $T_{AB}$ と平面距離 $S$ を求めよ。
答: 方向角 $T_{AB}$ = 143°07′48″、平面距離 $S$ = 50.000 m
解説: まず座標差を求める。
$$ \Delta X = X_B - X_A = 160.000 - 200.000 = -40.000 \text{ m} $$
$$ \Delta Y = Y_B - Y_A = 180.000 - 150.000 = +30.000 \text{ m} $$
平面距離 $S$ は三平方の定理による。
$$ S = \sqrt{\Delta X^2 + \Delta Y^2} = \sqrt{(-40.000)^2 + (30.000)^2} = \sqrt{2500} = 50.000 \text{ m} $$
方向角は、まず座標差の符号から象限を判定する。$\Delta X < 0$、$\Delta Y > 0$ であるから、A→Bの方向は第2象限(方向角は90°〜180°の範囲)にある。
基準となる鋭角 $\theta$ を求める。
$$ \theta = \tan^{-1}\left(\frac{|\Delta Y|}{|\Delta X|}\right) = \tan^{-1}\left(\frac{30.000}{40.000}\right) = \tan^{-1}(0.75) \approx 36°52'12’' $$
第2象限であるから、方向角は次のように補正する。
$$ T_{AB} = 180° - \theta = 180° - 36°52'12’’ = 143°07'48’' $$
【検算】 求めた方向角と距離から座標差を逆算する。
$$ \Delta X = S \cos T_{AB} = 50.000 \times \cos(143°07'48’’) = 50.000 \times (-0.800) = -40.000 \text{ m} $$
$$ \Delta Y = S \sin T_{AB} = 50.000 \times \sin(143°07'48’’) = 50.000 \times 0.600 = +30.000 \text{ m} $$
座標差が一致するため、$T_{AB} = 143°07'48’’$、$S = 50.000$ m で正しい。
座標差の符号から象限を見誤ると、方向角が180°ずれる典型的なミスにつながる。電卓の $\tan^{-1}$ がそのまま返す角度は鋭角であるため、象限判定による補正(第1象限はそのまま、第2象限は $180°-\theta$、第3象限は $180°+\theta$、第4象限は $360°-\theta$)を必ずセットで行うことが重要である。なお、本試験では関数電卓(プログラム機能なし・2台まで)の持込みが認められており、$\tan^{-1}$ や三角関数の値はその場で求められる。
第5問(不動産登記法・建物の床面積)
問: 区分建物ではない一般の建物の床面積は、各階ごとに壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積によって定めるが、区分建物の床面積(専有部分の床面積)は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によって定める。
答: ○
解説: 不動産登記規則115条は、建物の床面積について、「各階ごとに壁その他の区画の中心線(区分建物にあっては、壁その他の区画の内側線)で囲まれた部分の水平投影面積により、平方メートルを単位として定め、一平方メートルの百分の一未満の端数は、切り捨てる」と定めている。
したがって、
- 一般の建物……壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積
- 区分建物……壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積
という違いがある。区分建物について内側線によるのは、区分所有建物の専有部分の範囲を内側線で画する考え方(いわゆる内法(うちのり)計算)に整合させるためである。
中級者として注意したいのは、登記記録上の床面積(内法)と、建築基準法上の床面積(壁芯(へきしん)。壁の中心線で算定)とで、区分建物では数値が一致しないという点である。マンションのパンフレット上の面積(壁芯)と登記面積(内法)が異なるのはこのためであり、面積の数値だけでなく「どの線で囲まれた面積か」を意識することが、表示登記の実務でも試験でも問われる。端数処理が「1㎡の100分の1未満は切り捨て」である点も、あわせて押さえておきたい。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 中心論点 | 主な根拠条文・先例 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示) | 一筆一地目の原則と職権分筆 | 不動産登記法39条1項・2項 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 懲戒権者(令和元年改正で法務大臣に一元化)と処分の種類 | 土地家屋調査士法42条、令和元年改正(令和2年8月1日施行) |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 分割・一部譲渡による袋地の通行権(他の分割者の土地のみ・無償) | 民法213条1項・2項、民法210条・212条との対比 |
| 第4問 | 測量計算 | 座標から方向角・距離を逆算する計算と象限判定 | 三平方の定理、方向角の象限補正 |
| 第5問 | 不動産登記法(表示) | 建物の床面積の算定方法(一般建物=中心線/区分建物=内側線) | 不動産登記規則115条 |