第1問(測量法総論) — 基本測量と公共測量
問: 基本測量と公共測量の違いを述べ、それぞれの実施主体を明示せよ。
答: 基本測量は国土地理院が実施し、すべての測量の基礎となるもの(測量法4条)。公共測量は国又は公共団体が費用の全部または一部を負担し、または委託して実施する測量で、基本測量以外のもののうち基本測量の基礎の上に行うもの(測量法5条)。
解説: 測量法は、測量を「基本測量」「公共測量」「基本測量及び公共測量以外の測量(その他の測量)」の3類型に分ける。
- 基本測量(測量法4条):すべての測量の基礎となる測量で、国土地理院が実施。
- 公共測量(測量法5条):国又は公共団体が費用の全部または一部を負担・委託し、基本測量以外のもののうち基本測量の基礎の上に実施。
- その他の測量(測量法6条):基本測量・公共測量以外の測量。
公共測量は、測量計画機関(発注者)が「作業規程」を定め、国土交通大臣の承認を受ける必要がある(測量法33条)。実際には、多くの計画機関が公共測量作業規程の準則(国土交通省告示)に準拠した規程を用いている。
第2問(多角測量) — 閉合差と閉合比
問: トラバース測量における閉合差と閉合比の意味と、その許容範囲が定められる根拠を述べよ。
答: 閉合差は、トラバース測量で算出した出発点に戻る座標差(閉合トラバースの場合)または既知点との座標差(結合トラバースの場合)。閉合比は閉合差を全測線長で除した値で、$\text{閉合比} = \frac{\text{閉合差}}{\text{全測線長}}$ と表される。許容範囲は公共測量作業規程の準則で測量の級別(1級〜4級)ごとに定められている。
解説: トラバース測量における誤差評価の2つの指標:
- 閉合差:座標値で表される位置の差。$\Delta x^2 + \Delta y^2$ の平方根で求められる距離としても表現可能
- 閉合比:閉合差を全測線長で正規化した値。分数表示で示されることが多い(例:1/10,000)
公共測量作業規程の準則上の許容閉合比(基準点測量の場合)の目安:
- 1級基準点測量:1/100,000程度
- 2級基準点測量:1/25,000〜1/30,000程度
- 3級基準点測量:1/10,000〜1/15,000程度
- 4級基準点測量:1/5,000程度
数値は等級・観測方式・地形条件等により異なる。
第3問(多角測量) — 方位角の計算
問: トラバース測量における方位角の伝達式について、前測線の方位角を $\alpha_{n-1}$、観測した夾角(交角)を $\beta_n$ としたとき、次測線の方位角 $\alpha_n$ を求める基本式を示せ。
答: $\alpha_n = \alpha_{n-1} + \beta_n \pm 180°$ (観測した夾角の向きにより±を選択。360°を超えれば-360°、負になれば+360°で補正)
解説: トラバース測量における方位角の伝達は、前の測線の方位角に反対方向の方位角(前測線の方位角+180°)を取り、その点で観測した夾角を加減して次測線の方位角を求める。
- 観測した夾角が右回り(時計回り)の場合:$\alpha_n = \alpha_{n-1} + 180° + \beta_n$
- 観測した夾角が左回り(反時計回り)の場合:$\alpha_n = \alpha_{n-1} - 180° + \beta_n$
結果は $[0°, 360°)$ の範囲に正規化する。
中級向けポイント:
- 試験では実際に4〜5測点を順に追って方位角を計算させる出題が頻出。電卓不可なので、整数度・分での計算に慣れておく
- 始発点の方位角は既知(既知点間の方位角または磁北方位)として与えられる
第4問(水準測量) — 視準軸誤差の消去
問: 水準測量において、レベル(自動レベル)の視準軸誤差を観測手順で消去するための方法は何か。
答: レベルを後視標尺と前視標尺の**中間(等距離)**に設置することにより、視準軸誤差を消去できる。
解説: 視準軸誤差は、レベルの視準線が水平線と平行になっていないことに起因する誤差。これにより、視準距離が長いほど大きな読み取り誤差が生じる。
レベルを前後の標尺の中間に等距離で設置すれば、後視・前視で同じ大きさの読み取り誤差が生じ、両者の差をとる比高計算でキャンセルされる。
中級向けポイント:
- 等視準距離の原則:1器械点ごとに、後視標尺距離と前視標尺距離を等しくする
- 公共測量作業規程の準則では、視準距離の上限と、後視・前視の距離差の上限を等級ごとに定めている(例:1級水準測量は最大視準距離50m、距離差3m以下等)
- 同様の原理で、地球の曲率による「球差」と大気屈折による「気差」も等距離設置でほぼ消去される(両差 $K = \frac{(1-k)S^2}{2R}$ 程度の残差は残るが、等距離なら相殺)
第5問(水準測量) — 標尺零点誤差の消去
問: 水準測量における標尺零点誤差は、観測手順を工夫することでどのように消去できるか。
答: 1組の観測区間において、標尺の据え替え回数を偶数回にすることにより、標尺零点誤差を消去できる。
解説: 標尺零点誤差は、標尺の底面(目盛0mmの位置)と実際の地面接触点との間にズレがある場合に生じる誤差。標尺ごとに固有の値を持つ。
2本の標尺A・Bを交互に使用するとき、奇数回目の据え替えではAが後視・Bが前視、偶数回目では逆になる。据え替え回数を偶数にすることで、各標尺がそれぞれ同数回後視・前視に用いられ、標尺零点誤差が相殺される。
中級向けポイント:
- 公共測量作業規程の準則は、水準測量における標尺の交互使用と据え替え回数の偶数化を要求する
- 標尺零点誤差は標尺ごとに固有なので、観測前に標尺の検査(メートル原器との比較等)も必要
- 往復測定の差(往復較差)の許容値も等級別に定められており、1級水準測量で $2.5\text{mm}\sqrt{S}$(Sは片道距離km)等
第6問(GNSS測量) — 観測法の特徴
問: GNSS測量におけるスタティック法、短縮スタティック法、RTK法(Real Time Kinematic)の特徴を簡潔に述べよ。
答:
- スタティック法:2台以上の受信機を測点に固定して長時間(基線長10km以上で120分以上、10km未満で60分以上)観測。最高精度。
- 短縮スタティック法:基線長10km以下で短時間(20分程度)の観測で実施可能。
- RTK法:固定局と移動局の組み合わせで、リアルタイムに座標を取得。移動測量に適する。
解説: GNSS(Global Navigation Satellite System:GPS、GLONASS、Galileo、みちびき等の総称)測量の主な観測法:
| 観測法 | 観測時間 | 基線長 | 精度(水平) | 主用途 |
|---|---|---|---|---|
| スタティック法 | 60〜120分以上 | 制限なし | 高精度(数mm) | 1〜2級基準点測量 |
| 短縮スタティック法 | 20分程度 | 10km以下 | 高精度(数mm〜cm) | 3〜4級基準点測量 |
| キネマティック法 | 移動しながら | 10km以下 | cmレベル | 詳細測量 |
| RTK法 | リアルタイム | 10km以下 | cmレベル | 公共測量・誘導等 |
| ネットワーク型RTK法 | リアルタイム | 制限緩和 | cmレベル | 広域での効率的測量 |
公共測量作業規程の準則では、観測法ごとに使用条件・観測時間・データ取得間隔等が詳細に定められている。
なお、令和7年3月31日付の準則改正(国土交通省告示第240号)により、GNSS標高測量が新規導入された。これは、GNSS観測で得られる楕円体高に**ジオイド・モデル(ジオイド2024日本とその周辺)**による補正を加えて標高を求める手法で、令和7年4月以降の公共測量で実施可能となっている。電子基準点の測地成果2024とジオイド・モデルを組み合わせて使用する点が特徴。
第7問(写真測量) — オーバーラップ
問: 航空写真測量におけるオーバーラップ(重複度)の標準値を、**進行方向(縦)と隣接コース(横)**について述べよ。
答: 進行方向の縦オーバーラップは60%(前後の写真で60%重複)が標準。隣接コース間の横オーバーラップは**30%**が標準。これらは公共測量作業規程の準則で定められている。
解説: 航空写真測量では、ステレオ視(立体視)を可能にするため、隣接する写真間に十分な重複(オーバーラップ)が必要:
- 縦オーバーラップ(撮影進行方向):60%(連続する2枚の写真で60%重複)。ステレオモデル(立体モデル)作成の必須条件
- 横オーバーラップ(隣接コース間):30%(隣接する撮影コースの写真同士で30%重複)。コース接合・全体モデル作成のため
撮影縮尺と地上画素寸法(GSD:Ground Sample Distance)の関係: $$M = \frac{H}{f}$$ (M:写真縮尺の逆数、H:撮影高度、f:カメラ焦点距離)
中級向けポイント:
- 写真総数の概算:撮影区域面積を1枚あたりのカバー面積(オーバーラップを除いた有効面積)で除して算出
- ステレオモデル数:縦オーバーラップ60%なら、写真n枚で(n-1)モデル
第8問(地形測量) — 2万5千分の1地形図の等高線
問: 2万5千分の1の地形図における等高線の種類と間隔を述べよ。
答:
- 主曲線:10m間隔(細実線)
- 計曲線:50m間隔(太実線、主曲線5本ごと)
- 補助曲線:5m間隔(長破線)または2.5m間隔(短破線)
解説: 国土地理院が刊行する地形図の等高線間隔は、縮尺ごとに定められている:
| 縮尺 | 主曲線 | 計曲線 | 補助曲線 |
|---|---|---|---|
| 2万5千分の1 | 10m | 50m | 5m・2.5m |
| 5万分の1 | 20m | 100m | 10m・5m |
| 20万分の1 | 100m | 500m | 50m |
- 主曲線:通常の等高線。細い実線で表示
- 計曲線:主曲線5本ごとに置く太い実線。標高値が記入されることが多い
- 補助曲線:主曲線では地形が表現できない緩傾斜地等で用いる破線
中級向けポイント:
- 1/25,000地形図の主曲線間隔10mは、最頻出論点
- 補助曲線(5m長破線・2.5m短破線)の用途を区別できるようにする
第9問(路線測量) — 単曲線の要素
問: 単曲線(円曲線)の主要素である交角 I、半径 R、接線長 TL、曲線長 CL、外距 SL の関係を式で示せ。
答:
- 接線長:$TL = R \tan(I/2)$
- 曲線長:$CL = R \cdot I$(Iはラジアン)または $CL = \dfrac{\pi R I}{180°}$(Iは度)
- 外距:$SL = R \left( \dfrac{1}{\cos(I/2)} - 1 \right) = R \sec(I/2) - R$
解説: 道路・鉄道の路線で用いられる単曲線(円弧の形状をした曲線)の幾何要素:
- 交角 I(Intersection Angle):直線部の前後の進行方向のなす角度
- 半径 R:曲線の半径
- 接線長 TL(Tangent Length):直線(接線)と曲線の接点(BC・EC)から交点(IP)までの距離
- 曲線長 CL(Curve Length):曲線の弧長
- 外距 SL(Secant Length):交点(IP)から曲線中点までの距離
中級向けポイント:
- 単曲線測設の主要点:BC(Beginning of Curve・曲線始点)、MC(Middle of Curve・曲線中点)、EC(End of Curve・曲線終点)、IP(Intersection Point・交点)
- 試験では、I・Rの組み合わせから TL や CL を求める計算問題が頻出。ただし測量士補は電卓不可のため、$\tan 30° = 1/\sqrt{3}$ 等の特定角度の値を覚えておく
- 路線中心測量と縦断・横断測量を組み合わせて、用地測量・施工管理に展開される
第10問(地図編集) — 地物の表現原則
問: 地図編集における地物の取捨選択の原則として、表現の優先順位の一般則を述べよ。
答: 地図編集では、原則として次の優先順位で地物を表現する:
- 自然物よりも人工物を優先(道路・鉄道・建物等)
- 重要度の高いものを優先(幹線道路 > 細道路、市街地建物 > 田畑等)
- 点状物 → 線状物 → 面状物の順に取捨選択
- より細密な地図から粗い地図へと編集を進めるのが原則
解説: 地図編集は、より細密な原図(例:1/2,500地形図)から、より縮尺の小さい地図(例:1/10,000地形図)へと情報を取捨選択しながら作成する作業。
取捨選択の基本原則:
- 地図の目的・縮尺に応じて、表現する地物の種類・密度を調整
- 縮尺が小さくなるほど、表現できる地物の数・詳細度が制限される
- 重要な地物は強調し、不要な地物は省略または統合する
中級向けポイント:
- 地図編集の縮尺変更:細密 → 粗(拡大ではなく縮小方向)が原則。逆方向は精度上不可
- 転位(地物の位置をわずかにずらす):縮尺上で地物同士が重なる場合、重要度の高い地物を本来位置に置き、他をずらす
- 公共測量作業規程の準則 第4編「地図情報レベル」、デジタル地図の図式(標準地形図図式・電子国土基本図図式)の理解
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 論点 | 主要条文・準則 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 測量法総論 | 基本測量と公共測量の区別 | 測量法4条・5条・6条・33条 |
| 第2問 | 多角測量 | 閉合差・閉合比の意味と許容範囲 | 公共測量作業規程の準則(基準点測量関係) |
| 第3問 | 多角測量 | 方位角の伝達式 | 公共測量作業規程の準則 |
| 第4問 | 水準測量 | 視準軸誤差の消去(等視準距離) | 公共測量作業規程の準則(水準測量関係) |
| 第5問 | 水準測量 | 標尺零点誤差の消去(据え替え偶数回) | 公共測量作業規程の準則(水準測量関係) |
| 第6問 | GNSS測量 | スタティック法・短縮スタティック法・RTK法の特徴/GNSS標高測量(令和7年4月新規導入) | 公共測量作業規程の準則(GNSS測量関係、令和7年3月31日 国土交通省告示第240号改正) |
| 第7問 | 写真測量 | オーバーラップ(縦60%・横30%) | 公共測量作業規程の準則(写真測量関係) |
| 第8問 | 地形測量 | 2万5千分の1地形図の等高線(主曲線10m・計曲線50m・補助曲線5m/2.5m) | 国土地理院図式 |
| 第9問 | 路線測量 | 単曲線の主要素(TL・CL・SL) | ─(測量原理) |
| 第10問 | 地図編集 | 取捨選択の原則 | 公共測量作業規程の準則 第4編 |