第1問(不動産登記法・表示登記) — 建物の合体
問: A所有の甲建物(所有権の登記あり)とB所有の乙建物(所有権の登記あり)を物理的に一棟の丙建物に合体させた。合体による建物の表題登記及び所有権の登記の申請に関する次の記述の正誤を判定せよ。
「合体前の甲建物及び乙建物の所有権の登記名義人であるAおよびBは、合体の日から1月以内に、合体による建物の表題登記及び合体前の建物の所有権の登記名義人についての所有権の登記の申請をしなければならない」
答: 正しい。
解説: 不動産登記法57条1項は、「合体前の建物のうちいずれかの建物について所有権の登記がある場合において、当該合体前の建物の所有権の登記名義人または当該所有権の登記名義人以外の表題部所有者は、合体の日から1月以内に、合体による建物の表題登記及び合体前の建物の表題部所有者または所有権の登記名義人についての所有権の登記の申請をしなければならない」と規定する。
合体は、複数の独立した建物が物理的に一棟の建物となる現象を指す。区分建物の合併(不登法54条)とは異なり、建物自体の物理的な変動が生じる点に注意。
中級向けポイント:
- 合体前の建物がすべて表題部所有者のみの登記(所有権の登記なし)であれば、合体による建物の表題登記のみを申請する(不登法49条参照)
- 合体前の建物に所有権の登記のあるものとないものが混在する場合:合体後の建物については表題登記+所有権の登記が必要
- 合体は申請義務違反の場合、過料の対象となる(不登法164条1項)
第2問(土地家屋調査士法) — 筆界特定手続の代理権限
問: 土地家屋調査士は、不動産登記法123条以下に規定する筆界特定手続について、当事者の代理人となることができるか。また、隣接土地所有者間の筆界の確定を求める民事訴訟(筆界確定訴訟)の代理人となることはできるか。
答: 筆界特定手続の代理はできる(土地家屋調査士法3条1項4号)。筆界確定訴訟の代理はできない(弁護士法72条)。
解説: 土地家屋調査士法3条1項4号は、土地家屋調査士の業務として「筆界特定の手続(筆界特定の申請の手続及びその手続に係る審査請求の手続を含む)について代理すること」と定める。この代理は調査士の独占業務として位置づけられる。
一方、隣接土地所有者間で筆界の所在について争いがある場合、当事者は裁判所に筆界確定訴訟(境界確定訴訟)を提起することができる。これは民事訴訟であり、訴訟代理は弁護士法72条により弁護士の独占業務となる。
中級向けポイント:
- 筆界特定:筆界特定登記官が公的に筆界の現地における位置を特定する行政手続(不登法123条以下)。あくまで行政上の判断であり、訴訟による筆界確定を妨げない(不登法144条以下の構造からの解釈)
- 筆界確定訴訟:裁判所が判決により筆界を確定する民事訴訟(職権主義的色彩あり)。判決は当事者間で既判力を持つ
- 民間紛争解決手続(ADR)における筆界に関する紛争解決手続については、調査士法3条1項7号により、特別研修を修了した「ADR認定調査士」が代理可能
- 簡裁訴訟代理権を持つ認定司法書士でも、筆界確定訴訟は形式的形成訴訟と解され訴額の算定が困難(または通常140万円を超える)であるため、認定司法書士の代理範囲外と整理される
第3問(民法・相隣関係) — 囲繞地通行権の場所・方法と償金
問: 袋地(公道に通じない土地)の所有者が、囲繞地通行権に基づき隣地を通行する場合、通行の場所及び方法はどのように定まるか。また、通路の開設の可否と、償金の支払方法について説明せよ。
答: 通行の場所及び方法は、通行権者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(民法211条1項)。必要があるときは、通行権者は通路を開設することができる(同条2項)。償金は、通路の開設による損害を除き、1年ごとに支払うことができる(民法212条ただし書)。
解説: 民法210条1項は、「他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる」と規定する。
民法211条1項は、「前条の場合には、通行の場所及び方法は、同条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」と定める。
同条2項は、「前条の規定による通行権を有する者は、必要があるときは、通路を開設することができる」と規定する。
償金については、民法212条本文で「第210条の規定による通行権を有する者は、その通行する他の土地の損害に対して償金を支払わなければならない」、ただし書で「通路の開設のために生じた損害に対するものを除き、1年ごとにその償金を支払うことができる」と規定する。
判例:最判平成2年11月20日民集44巻8号1037頁(民法213条の規定による囲繞地通行権は、その目的たる土地について特定承継があったときに消滅しない)。なお、この判例は民法213条(共有物分割または土地の一部譲渡によって生じた袋地の通行権)の論点であり、本問の210条以下とは隣接論点として位置づけられる。
中級向けポイント:
- 通行権者は所有権者に限らず、地上権者・賃借権者も含まれる(民法267条等参照)
- 共有物の分割または土地の一部譲渡によって生じた袋地については、民法213条により、分割または譲渡者の所有地のみを無償で通行できる
- 民法213条の2・213条の3(令和3年改正、令和5年4月1日施行)はライフライン設備設置権の規定であり、本問の通行権とは別論点
第4問(測量計算) — 座標法による面積計算
問: 次の4点の座標(単位:m)で囲まれる四角形ABCD(A→B→C→D→Aの順)の面積を、座標法により求めよ。
| 点 | X | Y |
|---|---|---|
| A | 0.000 | 0.000 |
| B | 10.000 | 0.000 |
| C | 10.000 | 8.000 |
| D | 0.000 | 6.000 |
答: $70.000 , \text{m}^2$
解説: 座標法(ガウスの面積公式・倍面積法)は、閉合した多角形の頂点座標から面積を直接求める方法である。公式は次のいずれかで表される。
$$ 2S = \left| \sum_{i=1}^{n} x_i (y_{i+1} - y_{i-1}) \right| $$
(添字 $i$ は $1, 2, \ldots, n$、$y_{n+1} = y_1$、$y_0 = y_n$ と循環させる)
または、
$$ 2S = \left| \sum_{i=1}^{n} (x_i y_{i+1} - x_{i+1} y_i) \right| $$
本問にガウスの面積公式を適用すると:
$$ 2S = |x_A(y_B - y_D) + x_B(y_C - y_A) + x_C(y_D - y_B) + x_D(y_A - y_C)| $$
$$ = |0 \cdot (0 - 6) + 10 \cdot (8 - 0) + 10 \cdot (6 - 0) + 0 \cdot (0 - 8)| $$
$$ = |0 + 80 + 60 + 0| = 140 $$
よって $S = 70.000 , \text{m}^2$。
検算(台形公式): ADを左辺(長さ6)、BCを右辺(長さ8)、ABを底辺(長さ10)とする台形とみなすと、台形の面積公式 $S = \frac{(a+b)}{2} \times h$ で、$a = 6$、$b = 8$、$h = 10$ なら、$S = \frac{(6+8)}{2} \times 10 = 70.000 , \text{m}^2$。一致。
中級向けポイント:
- 座標を反時計回り(左回り)に並べると$2S$は正値、時計回りだと負値になる。最後に絶対値を取る
- 試験では関数電卓(プログラム機能なしのもの・2台まで持込可)が使えるため、座標法の計算は機械的に進められる
- 三斜法(三角形分割)と比べ、座標法は頂点数が増えても誤差が蓄積しにくい
第5問(不動産登記規則77条) — 地積測量図の記載事項
問: 地積測量図(不動産登記規則77条1項)に記載すべき事項として誤っているものはどれか。
- 地番区域の名称・方位・縮尺
- 地番および隣接地の地番
- 地積および求積方法
- 申請人の氏名および住所
- 測量の年月日
答: 4(申請人の氏名および住所は地積測量図の記載事項ではない)。
解説: 不動産登記規則77条1項は、地積測量図に記載しなければならない事項を各号で列挙している:
- 地番区域の名称(1号)
- 方位(2号)
- 縮尺(3号)
- 地番(隣接地の地番を含む)(4号)
- 地積及びその求積方法(5号)
- 筆界点間の距離(6号)
- 平面直角座標系の番号又は記号(7号)
- 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値(8号)
- 境界標があるときは、その表示(9号)
- 測量の年月日(10号)
選択肢4の「申請人の氏名および住所」は登記申請書本体に記載すべき事項(不動産登記令3条1号)であり、地積測量図の記載事項ではない。
中級向けポイント:
- 地積測量図の縮尺は250分の1が原則(不動産登記規則77条3項本文)。ただし、土地の状況等により縮尺の特例が認められる
- 平成17年の不動産登記法・規則の全面改正により、地積測量図には基本三角点等に基づく筆界点の座標値の記載が義務化された(不動産登記規則77条1項8号)。これにより、現地の復元性が確保される
- 建物図面(不動産登記規則82条・縮尺500分の1)、各階平面図(同規則83条・縮尺250分の1)と縮尺・記載事項を区別して整理すること
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 論点 | 主要条文・判例・先例 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示登記) | 建物の合体(合体登記の申請義務・期間) | 不動産登記法57条1項、49条、164条1項 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 筆界特定手続の代理権限/筆界確定訴訟との区別 | 土地家屋調査士法3条1項4号・7号、不動産登記法123条以下・144条以下、弁護士法72条 |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 囲繞地通行権の場所・方法・通路開設・償金 | 民法210条1項、211条1項・2項、212条本文・ただし書、最判平成2年11月20日民集44巻8号1037頁 |
| 第4問 | 測量計算 | 座標法(ガウスの面積公式)による多角形面積計算 | ─(計算問題、調査士は関数電卓持込可・プログラム機能なし・2台まで) |
| 第5問 | 不動産登記規則 | 地積測量図の記載事項 | 不動産登記規則77条1項各号・3項、不動産登記令3条1号、不動産登記規則82条・83条との対比 |