親の土地に家を建てるとき──「使用貸借」のままだと相続で何が起きるか

この記事の要点 親の土地を無償で借りて家を建てる関係は「使用貸借(しようたいしゃく)」といい、貸主(親)が亡くなっても、それだけで契約が当然に終わるわけではないとされています ただし「終わらない」は「ずっと続く」ではなく、使い道に従って使用・収益をするのに足りる期間が経過すれば、貸主の側から契約を解除できるとされています(民法598条1項) また、貸主が亡くなれば土地そのものは相続財産となり、きょうだいなど他の相続人との遺産分割の対象になり得ます 自分の家が建っている土地を、自分以外の相続人が取得する事態も制度上はあり得るため、早い段階で家族間の話し合いを始めておくことが大切です 「親の土地に家を建てさせてもらっている。地代も家賃も払っていない」——こうした関係は、法律上は「使用貸借(しようたいしゃく)」と呼ばれる契約にあたります。契約書を交わしていなくても、口約束や暗黙の了解だけで成り立っている使用貸借は少なくありません。 ...

2026年8月30日 · ひぐらしさとし

遺言執行者が引き受けるかどうか分からないとき──『相当の期間』を定めて返事を求める催告のしくみ

この記事の要点 遺言書に遺言執行者として名前が書かれていても、その人が引き受けるかどうかは本人の自由で、断ることもできる 返事がないまま止まってしまうときは、相続人などが「相当の期間」を定めて確答を求める催告ができ、期間内に返事がなければ承諾したものとみなされる 承諾したあとは「直ちに」任務を始め、「遅滞なく」相続人へ遺言の内容を通知する義務がある 遺言書に「遺言執行者に指定する」と名前が書かれていても、それだけで手続きが自動的に始まるわけではありません。遺言執行者に指定された人が実際に**引き受ける(就任を承諾する)**かどうかは、本人の意思次第です。承諾する義務はなく、断ることもできます。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

戸籍の旧字体・異体字とは?──相続登記で氏名の字が戸籍ごとに違うときの考え方

この記事の要点 明治・大正期の手書き戸籍には、旧字体や異体字で書かれた氏名が数多く残っている 相続で複数世代の戸籍をつなげていくと、同じ人物なのに戸籍ごとに氏名の字体が違って見えることがある 字体の違いだけで別人・誤記と決めつけず、生年月日・父母の氏名・本籍の変遷など他の記載事項を突き合わせて同一人物かどうかを確認する 相続の手続きでは、亡くなった方の戸籍を死亡時から出生時までさかのぼって集める必要があります。何代分もの戸籍を並べていくと、同じ人物のはずなのに、戸籍ごとに氏名の漢字の形が違って見えることがあります。「高橋」の「高」が古い戸籍では「髙」(はしごだか)になっている、「澤田」が後の戸籍では「沢田」になっている――このような食い違いに気づいたとき、誤記や別人ではないかと不安になる方は少なくありません。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

死亡退職金と弔慰金のきほん──受取人と相続財産の関係(税額は税理士へ)

この記事の要点 死亡退職金は、会社に役員退職慰労金規程や慶弔規程があるかどうかで、受取人の定まり方が変わる 規程がなく、亡くなるたびに株主総会の決議だけで支給を決めている場合は、相続財産にあたるかどうかが問題になり得る 死亡退職金と弔慰金は性格の異なるお金であり、扱いも分けて考える必要がある 遺産分割協議書に載せるかどうかは、受取人の定まり方によって変わる。税額の計算・申告は税理士へ 「役員が亡くなり、死亡退職金を支給することになった。この退職金は、遺産分割の話し合いに入れるべきものなのか、それとも別扱いでよいのか」──会社側でも遺族側でも、判断に迷いやすい場面です。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

親子間売買はなぜ住宅ローンが通りにくい?──売買・贈与・相続の分かれ道

この記事の要点 親子間の不動産売買は、金融機関の住宅ローン審査で慎重に扱われる傾向があるとされている 売買・贈与・相続は、登記の原因も必要書類も登録免許税の税率もそれぞれ異なる 時価に比べて著しく低い価格での売買は、その差額部分が「贈与」とみなされる可能性があるため、価格の決め方には注意が必要 税額の計算や個別の判断は税理士へ相談するのが基本 親から子へ、あるいは子から親へ不動産を譲るとき、「売買にするか、贈与にするか、それとも将来の相続まで待つか」で迷う方は少なくありません。とくに売買を選んだ場合、「住宅ローンを組もうとしたら金融機関から難色を示された」という声を聞くことがあります。この記事では、親子間売買で住宅ローンが通りにくいと言われる一般的な背景と、売買・贈与・相続で登記や税金の扱いがどう変わるのかを整理します。 ...

2026年8月29日 · ひぐらしさとし

成年後見人は途中で辞められる?代えられる?──辞任・解任と後任選任のしくみ

この記事の要点 成年後見人は自分の判断だけでは辞められません。辞任には「正当な事由」と家庭裁判所の許可が必要です(民法844条) 解任できるかどうかを判断するのは家庭裁判所です。不正な行為など「後見の任務に適しない事由」があるときに、請求または職権で解任されます(民法846条) 辞任・解任があっても成年後見そのものは終わりません。後任の成年後見人は家庭裁判所が選任します 結論からお伝えします。成年後見人は、途中で辞めることも、家庭裁判所の判断で交代となることもありますが、いずれも「本人(成年被後見人)を保護する仕組みを途切れさせない」形でしか進みません。辞めるのも代わるのも、家庭裁判所の関与のもとで行われます。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

古い借金や未払い代金の請求が届いたら|『時効の援用』とは──時効は自動では成立しない

この記事の要点 消滅時効は、期間が過ぎれば自動的にお金の支払い義務が消える制度ではありません。民法145条により、当事者が「援用」しなければ、裁判所は時効を理由とする裁判ができません 権利を「承認」すると、時効はその時から新たに進行し直します(民法152条1項)。援用と承認は正反対の方向に働くため、どちらに当たる行動かを知っておくことが大切です 個別の請求にどう対応するかの判断は、この記事では扱いません。手続きの仕組みの一般解説です 古い借金や未払い代金の請求が届いたとき、「時効だからもう関係ない」と考えて放置してよいかというと、そうではありません。結論から言うと、消滅時効は期間が過ぎただけでは効力が生じず、時効の利益を受ける側が「援用(えんよう)」という主張をして初めて意味を持ちます。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

社長個人と会社の貸し借り──役員貸付金・借入金は相続でどうなる?

この記事の要点 会社が社長個人に貸していたお金(役員貸付金)は、社長の「借金」=相続債務として相続人に引き継がれる 逆に、社長個人が会社に貸していたお金(役員借入金)は、社長の「財産」=相続財産になり、相続人が会社に対する債権者になる 貸し借りの有無と金額は、決算書の貸借対照表(役員貸付金・役員借入金などの科目)で確認できる 相殺・債権放棄・債務免除といった整理の方法は税務が絡むため、具体的な検討は税理士に相談する まず決算書で貸し借りの有無を確認すること。債務のほうが大きい場合は、相続放棄の期限(原則3か月)にも注意する 会社を経営していた方が亡くなったとき、見落とされやすいのが「社長個人と会社の間のお金の貸し借り」です。結論から言うと、会社が社長に貸していたお金(役員貸付金)は社長の相続債務として、社長が会社に貸していたお金(役員借入金)は社長の相続財産として、どちらも相続人に引き継がれます。貸した方向によって、相続人の立場は「会社にお金を返す側」と「会社からお金を返してもらう側」の正反対になります。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

境界標と塀の費用負担──「筆界」の話は土地家屋調査士へ

この記事の要点 境界標の設置・保存の費用は、隣どうしが等しい割合で負担する(=折半)のが民法の原則です(民法224条本文) ただし測量の費用だけは折半ではなく、土地の広さ(面積)に応じて分担します(民法224条ただし書) 境界の塀(囲障)も、所有者の異なる2棟の建物の間に空き地があるときは共同の費用で設置でき、協議がまとまらないときは「板塀・竹垣など、高さ2メートル」が基準になります(民法225条) もっと良い材料・もっと高い塀にしたい側は、その増加分の費用を自分で負担します(民法227条) 費用の話の前に「そもそも境界(筆界)がどこか分からない」ときは、まず筆界特定制度や土地家屋調査士への相談が先です お隣との境界に目印(境界標)を置くときや、境界に塀を作るときの費用は、原則としてお隣との折半──これが民法の答えです。ただし例外もあり、測量の費用は面積に応じた分担になりますし、立派な塀にしたい側はその分を余計に負担します。 ...

2026年8月28日 · ひぐらしさとし

条・項・号の読み方と枝番号──「第213条の2」の「の2」は第2項ではない

この記事の要点 条文は「条 → 項 → 号 → イ・ロ・ハ」の階層でできている(項は算用数字、号は漢数字) 「第213条の2」の「の2」は枝番号で、独立したひとつの「条」。「第213条第2項」とは別の条文 枝番号や「削除」の表示は、改正のときに後ろの条文番号をずらさないための立法の工夫 条文を調べていて「民法第213条の2」という表記に出会ったとき、「213条の2番目の項(=第2項)のことかな」と読んでしまう方が少なくありません。結論から言うと、これは誤りです。「第213条の2」は、第213条と第214条の間に挟まれた独立したひとつの条であり、「第213条第2項」とはまったく別の条文です。 ...

2026年8月27日 · ひぐらしさとし