相談した専門家とは別の専門家にも意見を聞いてよい?──セカンドオピニオンの考え方と伝え方

この記事の要点 別の専門家に意見を聞くこと(セカンドオピニオン)自体は、依頼する前でも後でもできる。ただし依頼前と依頼後では考え方が少し違う 依頼する前なら、複数のところで話を聞いて比べてから決めてよい。依頼した後は、疑問をまず依頼先に尋ねるのが基本 別の専門家に聞くときは、最初に受けた説明・見積・経緯を整理して持っていくと、意見を聞く時間を有効に使える 「一度相談した専門家がいるのに、別のところにも話を聞くのは失礼ではないか」——こう感じて、聞きたいことがあっても言い出せずにいる、ということもあるかもしれません。結論から言うと、別の専門家に意見を聞くこと自体は、相談者が自分で決めてよいことです。ただ、まだ依頼していない段階か、すでに依頼して手続きが動いている段階かで、意識しておきたい点が変わります。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

住宅取得等資金の贈与の非課税とは──親から家の購入資金をもらったときの特例の基礎と、登記の持分の注意

この記事の要点 父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住む家の新築・取得・増改築等に充てるお金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、限度額までの金額には贈与税がかからない(租税特別措置法70条の2) 限度額は贈与を受けた人1人につき、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円。執筆時点の条文では、2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象 全額が非課税になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしないと特例は受けられない。資金の出し方と登記の持分がずれると、別に贈与の問題が生じ得る点にも注意 結論から言うと、この特例は「親などから、自分が住む家を手に入れるためのお金をもらった」ときに、一定額までの贈与税をかからないようにする制度で、使うには期限内の申告が欠かせません。順に整理します。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

経営者保証を外す・引き継がない準備──経営者保証ガイドラインの活用の入口

この記事の要点 経営者保証(社長個人が会社の借入の連帯保証人になること)は、「経営者保証に関するガイドライン」によって、一定の経営状態がそろえば保証なしの融資や既存の保証の見直しを金融機関が検討する枠組みが示されている。ただし法的拘束力はなく、「必ず外せる」ものではない ガイドラインが会社と経営者に求めるのは、①会社と経営者個人のお金・財産の区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示、の3つ 事業承継のときは、別に公表された「特則」で、前経営者と後継者の双方から二重には保証を求めないことが原則とされている 準備は「平時(今から)」「事業承継の準備段階」「代表者交代のとき」の3段階で考えると整理しやすい 金融機関との保証解除の交渉や保証債務の整理は弁護士、財務の整え方は税理士・中小企業診断士、代表者交代の登記は司法書士が相談先 経営者の方に知っておいてほしいのは、経営者保証は「外せるかどうか」を運に任せるものではなく、金融機関が保証を求めるかどうかを検討するときの目安が公表された文書に書かれている、という点です。結論から言うと、まず目指すのは「経営者保証に関するガイドライン」が示す3つの経営状態に近づけることであり、事業承継を控えているなら、後継者が保証を当然に引き継ぐ前提で進めず、早めに金融機関に保証の扱いを相談しておくことが出発点になります。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

登記の「更正登記」とは──名前の字・住所・持分を間違えて登記してしまったときの直し方

この記事の要点 更正登記(こうせいとうき)とは、登記した時点ですでにあった誤りや書き漏らしを直す登記です。登記した後に事実が変わったときの「変更登記」とは区別されます。 名前の字や住所の誤りは、登記名義人(登記簿に所有者などとして載っている人)が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。誤りがあったことを示す住民票の写しなどの公的な書類を添付します。 持分など権利の内容の誤りは、持分が増える人と減る人が共同で申請するのが原則です(同法60条)。その不動産に抵当権を持つ銀行など「登記上の利害関係を有する第三者」がいるときは、その承諾が必要になります(同法66条、不動産登記令 別表25項。詳しくは後半の【さらに深掘り】で補足します)。 名前・住所の更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十四))。持分など権利の内容の更正は、税額を申請前に確認してください。 土地の面積(地積)や建物の床面積など「表示の登記」の誤りを直すのは、土地家屋調査士の業務です。 登記簿を見たら、名前の漢字が違っていた、住所の番地が間違っていた、夫婦の持分が契約と違う割合で載っていた──このように、登記した時点から内容に誤りがあったときに使うのが「更正登記」です。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

認知症でも遺言は書ける?──遺言能力と「あとで争われない」ための備え

この記事の要点 認知症と診断されたことだけで、遺言が一律にできなくなるわけではありません。問われるのは「遺言をする時に、その内容を理解して判断できる能力(遺言能力)があったか」です(民法963条) 遺言をした時に遺言能力がなかったとされると、その遺言は無効と解されています。診断名や検査の点数だけで有効・無効が自動的に決まる仕組みは、民法には定められていません 成年後見を受けている方(成年被後見人)でも、判断能力が一時的に回復した時に、医師2人以上の立会いのもとで遺言をすることができます(民法973条) あとで争われにくくする備えの柱は、①公正証書で作る、②作成時期に近い医師の診断書などを残す、③作成のいきさつを記録しておく、の3つです 個別の遺言が有効か無効かの見通しや、争いになった場合の対応は弁護士へ、判断能力の医学的な評価は医師へ相談します 「親が認知症と診断されたけれど、今からでも遺言を作れるのだろうか」「作っても、あとで兄弟から『無効だ』と言われないだろうか」。こうした不安を持つご家族は少なくありません。結論からいうと、認知症の診断があっても、遺言をする時に遺言能力があれば、遺言をすることはできます。ただし、本人が亡くなった後に「あの時はもう判断できなかったはずだ」と争われるおそれがあるため、作り方と記録の残し方に工夫が必要です。この記事では、遺言能力の考え方と、争われにくくするための備えを整理します。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

相続放棄が受理されたら次の順位の人へ──誰が相続人になるか、その人の「3か月」はいつから数えるか

この記事の要点 先の順位の相続人が全員放棄すると、子→直系尊属(父母・祖父母など)→兄弟姉妹の順で、次の順位の人が相続人になります。放棄した人の子が代わりに相続人になることはありません 次の順位の人の「3か月」は、亡くなった日からではなく、先の順位の人の放棄によって自分が相続人になったことを知った時から数えるのが基本と考えられます(民法915条1項) 家庭裁判所からの受理の通知は、申述した人などに宛てたものです。次の順位の人に知らせるなら、先の順位の全員の受理を確かめたあとに、日付の残る形で伝えておくと、あとで確かめやすくなります 相続放棄が受理されると、放棄した人の手続きはひと区切りです。しかし、相続そのものは終わっていません。相続人が次の順位の人に移り、その人の期限がそこから動き出すことがあるからです。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

戸籍の「従前本籍」「従前戸籍」の読み方──一つ前の戸籍をたどって出生までさかのぼる手順

この記事の要点 一つ前の戸籍の所在は、本籍を他の市区町村へ移した(転籍)なら戸籍事項欄の【従前本籍】、婚姻などで別の戸籍から入った人ならその人の身分事項欄の【従前戸籍】に書かれる 前の戸籍を取り寄せたら、そちら側に残る「出ていった記録」と日付・所在が合っているかを突き合わせる 出生の記載があるだけでは、出生時の戸籍とは限らない。出生に関する事項は新しい戸籍にも書き写されるため 一つ前の戸籍を探すときに見る2か所 結論から言うと、一つ前の戸籍を探すときに見る場所は2か所です。戸籍そのものがどこから移ってきたかは「戸籍事項欄」に、その人がどの戸籍から入ってきたかは、その人の「身分事項欄」に書かれています。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

会社名義と個人名義の不動産を整理する──社長個人の土地に会社の建物がある場合

この記事の要点 社長個人名義の土地に会社名義の建物がある場合、社長が亡くなると土地は相続人に引き継がれ、建物は会社の財産のまま残る。土地と建物の持ち主が「社長の相続人」と「会社」に分かれる 会社がその土地を使い続けられるかは、地代を払う「賃貸借」か、無償の「使用貸借」かで大きく変わる。建物を持つための土地の賃貸借は「借地権」として借地借家法の保護を受けるが、使用貸借にはその保護がない 土地を相続した人には、自分のために相続が開始したことと、その土地を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務がある(不動産登記法76条の2) 生前の整理方法には、①賃貸借契約を書面にする、②土地を会社に売る、③土地を会社に現物出資する、などがある。税金の扱いは税理士、相続人どうしの争いの見通しは弁護士の領域 最初の一歩は、土地と建物それぞれの登記事項証明書で名義を確かめ、会社が地代を払っているかどうかを確認すること 経営者の方に知っておいてほしいのは、「社長の土地の上に会社の建物が建っている」という状態は、社長がお元気なうちは何も問題が起きないように見えても、相続をきっかけに会社の足元が揺らぐことがある、という点です。結論から言うと、まず確認すべきは「会社がその土地をどういう権利で使っているのか」であり、あいまいなままなら、社長がお元気なうちに契約を書面にするか、土地の名義そのものを整理しておくことが考えられます。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

土地を先に買って家を建てる──土地の決済・つなぎ融資・建物完成後の登記の流れ(表題登記は調査士へ)

この記事の要点 土地を買ってから家を建てる場合、登記は時期が2つに分かれます。土地の決済のときの「所有権移転登記」と、建物が完成したあとの「表題登記→所有権保存登記→抵当権設定登記」です。 建物の表題登記は、建物の所有権を取得した日から1か月以内に申請する義務があります(不動産登記法47条1項)。この登記の申請代理は土地家屋調査士の業務で、司法書士は扱えません。 土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は原則2%ですが、2029年(令和11年)3月31日までは1.5%に軽減されています(租税特別措置法72条1項)。 つなぎ融資は、住宅ローンが実行されるまでの支払いに備える借入れです。金利・手数料・審査などの商品の内容は金融機関に確認してください。 土地の決済の前に、建物完成までの段取り(融資の実行時期と登記の順番)を金融機関・司法書士・土地家屋調査士と共有しておくと安心です。 土地を探して購入し、そこに注文住宅を建てる──いわゆる「土地から家づくり」では、土地を買う日と家が完成する日のあいだに時間があきます。そのため登記も1回では終わらず、時期を分けて行うことになります。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし

公正証書遺言があるか調べる──遺言検索システムの使い方と誰が照会できるか

この記事の要点 亡くなった方が公正証書遺言を作っていたかどうかは、全国どこの公証役場でも「遺言検索」で調べられます(平成元年以降に作成されたものが対象) 申し出られるのは相続人などの利害関係人だけ。遺言者が生きている間は、遺言者本人に限られます 遺言検索の申出は無料。除籍謄本など死亡の事実がわかる書類、相続人であることがわかる戸籍謄本、本人確認書類を用意します 見つかったら、保管している公証役場に遺言公正証書の謄本(写し)を請求します。謄本の請求は郵送でもできます 法務局に預けた自筆の遺言は別の仕組みで調べます。手続きの細かな点は、事前に公証役場へ確認しておくと安心です 親が亡くなり、「公証役場で遺言を作ったと聞いたことがあるけれど、どこにあるのかわからない」と困ってしまうことがあります。結論からいうと、公正証書遺言があるかどうかは、最寄りの公証役場で「遺言検索」を申し出れば調べられます。この記事では、日本公証人連合会の案内にそって、遺言検索の仕組み・照会できる人・必要書類・見つかった後の流れを整理します。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし