所有者不明土地管理制度とは──持ち主がわからない隣の土地に管理人を付けてもらう方法

この記事の要点 持ち主がわからない土地について、裁判所に「所有者不明土地管理人」という管理人を選んでもらえる制度があります(民法264条の2。2023年4月1日施行) 申立てができるのは「利害関係人」。管理されないことで不利益を受けるおそれのある隣地の所有者も、事案によっては該当し得ます 管理人は、土地の保存や、性質を変えない範囲での利用・改良にあたる行為を行うことができ、売却などの処分には裁判所の許可が必要です 申立先は、その土地の所在地を管轄する地方裁判所。申立てにあたっては、管理費用に充てるお金(予納金)を納めるのが通常です 「人」ではなく「土地」の単位で管理人が付く点が、従来からある不在者財産管理人との大きな違いです 隣の土地が長年放置されていて、草木が伸び放題、塀は崩れかけ。何とかしたくても、登記簿を調べても持ち主にたどり着けない──。そのようなときに使える可能性があるのが、この記事で解説する「所有者不明土地管理制度」です。裁判所が土地の管理人を選び、その管理人が持ち主に代わって土地を管理してくれる、2023年4月に始まった比較的新しい制度です。 ...

2026年8月25日 · ひぐらしさとし

成年後見人と本人の利益がぶつかるとき──特別代理人の選任と後見監督人の役割

この記事の要点 成年後見人と本人の利益がぶつかる行為(利益相反行為)については、後見人は本人を代理できず、本人のために特別代理人を選任するよう家庭裁判所に請求します(民法860条・826条) ただし後見監督人がいるときは、監督人が本人を代表するため、特別代理人の選任は必要ありません(民法860条ただし書・851条4号) 保佐・補助にも同じ仕組みがあり、こちらは臨時保佐人・臨時補助人を選任します(民法876条の2第3項・876条の7第3項) 「母の成年後見人になった。その母の相続——父の遺産分割協議に、自分も相続人として参加する」。このような場面では、後見人であるご本人(子)が、母の代理人としての立場と、自分自身の相続人としての立場を同時に持つことになります。民法は、こうした場面で後見人が本人を代理することを認めず、別の代理人を立てる仕組みを用意しています。本記事は、執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

少額訴訟で勝ったあと、お金を回収するには|少額訴訟債権執行の基礎

この記事の要点 少額訴訟で勝っても、裁判所が自動的に相手からお金を取り立ててくれるわけではありません。回収するには、あらためて強制執行を申し立てる必要があります 少額訴訟の判決や和解の調書をもとに預金・給料などの「金銭債権」を差し押さえる場合には、簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる「少額訴訟債権執行」という手続きが用意されています(民事執行法167条の2) 対象は金銭債権に限られます。不動産や動産を差し押さえる手続きは地方裁判所・執行官の担当となり、司法書士が代理できる範囲からは外れます 以下は執筆時点(2026年8月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

代表取締役が亡くなったときの登記──会社が最初にすべき手続きの順番

この記事の要点 代表取締役が亡くなったときは、「登記の書類をそろえる」より先に後任を決められる状態をつくることが出発点になる 後任の決め方は機関設計(取締役会があるか)で変わり、取締役の人数が足りなくなった場合は裁判所に一時取締役・一時代表取締役の選任を申し立てる方法がある(会社法346条2項・351条2項) 亡くなった方が株主でもあった場合、その株式について議決権を行使してもらうには、原則として相続人側で権利を行使する人を決めてもらう必要がある 登記に必要な書類と2週間の期限は別記事にまとめてあるので、この記事は順番と段取りに絞る 代表取締役が亡くなると、会社には「登記」と「日々の意思決定」の二つの課題が同時に降ってきます。ただ、実際に困るのは書類の名前ではなく、何から手をつけるのかという順番のほうです。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

ライフラインを隣地に通せる「設備設置権」──水道・電気・ガスの導管と民法改正

この記事の要点 他人の土地に設備を通すか、他人の設備を使わなければ電気・ガス・水道の供給を受けられない土地の所有者は、必要な範囲でそれができる(民法213条の2第1項) 場所と方法は「相手にとって損害がいちばん少ないもの」を選び、あらかじめ目的・場所・方法を相手に通知しなければならない(同条2項・3項) 他の土地に設備を設置したときは土地の損害に対する償金、他人の設備を使うときはその使用を開始するために生じた損害に対する償金と、利益を受ける割合に応じた設置・維持費用の負担が必要(同条5項〜7項) 土地を分けた(分筆・一部譲渡した)ことでライフラインを引けない土地が生じた場合は、分割の相手方の土地だけに設備を設置でき、土地の損害に対する償金は不要(民法213条の3) 話し合いがまとまらない、償金の額でもめる、工事を止められた──といった争いになった段階では弁護士へ。制度の位置づけや登記の関わりはお近くの司法書士にご相談ください 家を建てようとしたら、水道の本管が前面道路まで来ておらず、隣の土地の下を通さないと引き込めない。あるいは、隣家がすでに引いている給水管に分岐させてもらわないと水が来ない。こうした「ライフラインが自分の土地まで届かない」場面のために、民法には設備設置権・設備使用権という規定が置かれています(民法213条の2)。 ...

2026年8月24日 · ひぐらしさとし

「追認」とは? 取り消せる行為・無権代理を有効に確定させる意味

この記事の要点 追認(ついにん)とは、取消しができる行為や無権代理行為のように、いったん効力が不確定な状態にある法律行為を、後から「有効なものとする」と確定させる意思表示のこと 効果は場面によって違い、無権代理行為の追認は原則として契約の時にさかのぼって効力が生じる(民法116条)のに対し、取り消すことができる行為の追認は「以後、取り消すことができない」という効果になる(民法122条) 追認ができるのは誰でもよいわけではなく、取消しができる行為なら取消権を持つ人、無権代理行為なら本人というように、法律が定める立場の人に限られる 契約書や登記の話をしていると、「あとで追認すれば大丈夫です」という言い方を聞くことがあります。追認とは、いったん効力が不確定になっている法律行為を、後から「有効なものとして確定させる」意思表示のことです。似た言葉に「承認」や「同意」がありますが、追認は「すでに行われた行為の効力を、事後に確定させる」という点に特徴があります。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

登記書類の「捨印」って何?押す・押さないの実務の傾向

この記事の要点 捨印(すていん)とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく訂正用の印のことで、法令が押印を義務づけている制度ではなく、実務上の慣行として広まったもの 登記の委任状などで求められる場面があるのは、軽微な字句の誤りをその都度作成者に押印し直してもらわずに直せるようにするため 捨印を求めるかどうか・どこまで訂正の範囲を認めるかは、事務所や場面によって扱いに差があり、近年はオンライン申請の広がりで紙の書類そのものが減ってきた面もある 登記の委任状や契約書に署名押印するとき、「念のため、こちらにも捨印をお願いします」と言われた経験がある方は少なくないと思います。捨印とは、書類の欄外にあらかじめ押しておく、訂正のための印のことです。誤字や記載漏れが見つかったとき、その捨印を使って二字削除・三字加入のように訂正すれば、作成者に改めて押印をもらいに行かなくても直せる、という便宜のための仕組みです。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

借りている家(借家権)も相続される──賃貸住宅の相続と大家さんへの連絡

この記事の要点 賃貸住宅を借りていた人が亡くなっても、借りる権利(借家権)は大家さんの承諾なく相続人にそのまま引き継がれる 内縁関係で同居していた人も、一定の条件のもとで住み続けられる場合がある 滞納していた家賃は「負の相続財産」として相続人が引き継ぐ 亡くなった方が持ち家ではなく賃貸住宅(アパート・マンション)に住んでいた場合、その部屋を借りる権利はどうなるのでしょうか。「借りていた家だから、契約は自動的に終わるのでは」と思われる方も多いのですが、実際はそうではありません。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

隣地使用権とは──工事や測量で「お隣の土地に入る」ときのルール

この記事の要点 隣地使用権は、境界標の調査・測量や、塀・建物の築造・修繕などのために、必要な範囲でお隣の土地を使わせてもらえる民法上の権利 使える目的は限定されており、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知する必要がある 住まいとして使われている建物に立ち入るときは、居住者の承諾が別途必要 隣地の所有者や使用者が損害を受けたときは、償金(金銭による償い)を請求できる 「境界標の調査で測量士さんがお隣の土地に立ち入ると言っている」「塀を建て替えるのに、どうしてもお隣側から作業しないといけない」――こうした場面で出てくるのが「隣地使用権」です。 ...

2026年8月23日 · ひぐらしさとし

相続の相談、本人が体調不良や遠方で行けないときは家族だけでもいい?

この記事の要点 本人が体調や距離の事情で同行できないときも、まず家族だけで状況や進め方を聞いてもらうこと自体は一般的にできる ただし正式に手続きを依頼する段階では、原則として本人の意思確認が必要になる 家族だけで相談に行くときは、本人が同行できない理由と、本人がこれまでどう考えているかを整理しておくとスムーズ 入院中や施設入所中、あるいは遠方に住んでいるなどの事情で、本人が相談の場に同行できないことは珍しくありません。結論から言うと、こうした場合でもまずは家族だけで相談に行き、状況や今後の進め方について話を聞いてもらうこと自体は、多くの事務所で一般的に対応してもらえます。相続や登記の相談は、その場で契約を結ぶ場に限らず、状況整理や見通しを聞く場でもあるためです(相談と依頼の違いについては相談したら必ず依頼しないといけない?もあわせてご覧ください)。 ...

2026年8月22日 · ひぐらしさとし