成年被後見人がした契約は取り消せる?──日用品の購入など日常生活の行為は例外【民法9条】

この記事の要点 成年被後見人(後見開始の審判を受けた本人)がした契約などの法律行為は、原則として取り消すことができます(民法9条本文) ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は取り消しの対象から外れます(同条ただし書) 取り消すと契約は初めから無効だったものとみなされ、本人が返すのは「現に利益を受けている限度」にとどまります(民法121条・121条の2第3項) ※本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へ

この記事の要点 簡易裁判所の判決に対する控訴は、判決書(電子判決書)などの送達を受けた日から2週間の不変期間内にしなければならない(民事訴訟法285条) 控訴審を担当するのは地方裁判所だが、控訴状は判決をした簡易裁判所に提出する(裁判所法24条3号、民事訴訟法286条1項) 少額訴訟の判決には控訴できず、同じ簡易裁判所への異議(期限は同じく2週間)だけが用意されている(民事訴訟法377条・378条1項) 簡易裁判所で判決が出たものの、その内容に納得できない──そうした場合に、上の裁判所に改めて判断を求める手続きが「控訴(こうそ)」です。結論からいえば、控訴には2週間という短い期限があり、提出先も間違えやすいため、判決を受け取ったらまず期限を確認することが先決です。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

社長が認知症になったら会社はどうなる──後見の審判の前に「会社が止まる」場面と、元気なうちの備え

この記事の要点 社長が認知症と診断されたり、判断能力が落ちたりしても、それだけで自動的に取締役・代表取締役を退任するわけではありません。判断能力の低下を理由に退任となるのは、家庭裁判所の「後見開始の審判」を受けたときです(会社法330条・民法653条3号) 本当に困りやすいのは審判の前です。肩書きは社長のままなのに、社長本人が契約や決議を確かな形で行えるかがはっきりせず、会社の手続きが止まりやすくなります とくに「取締役は社長1人・株主も社長1人(または社長が大株主)」の会社では、社長に代わって判断できる人が会社の中にいないため、取締役を選び直す株主総会も開けなくなるおそれがあります 備えの基本は、元気なうちに代表者・取締役・株式を社長1人に集中させないことです。任意後見や家族信託も選択肢ですが、会社の経営そのものを任せる仕組みではない点に注意が必要です 次の一歩として、会社の登記事項証明書・定款・株主名簿を手元に出し、「社長1人に集まっているもの」を書き出してみてください 経営者の方に知っておいてほしいのは、「社長が認知症になったら会社はどうなるか」という問いには、家庭裁判所の審判が出る前と後で、まったく別の答えがあるということです。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

家を買ったあとに手元に残る書類──売買契約書・重要事項説明書・領収書は、いつまで保管するか

この記事の要点 家の引渡しを受けると、売買契約書・重要事項説明書・代金や諸費用の領収書・住宅ローンの契約書類・建築確認の書類などが手元に残ります マイホームを買った個人について、これらの書類の保存年数を一律に定めた法律の規定は見当たりません。法律で保存が義務づけられている例としては、認定長期優良住宅の記録などがあります それでも、少なくともその家を売るまで残しておくのが基本です。売るときの税金(譲渡所得)の計算や、次の買主への説明で使うことがあるためです 登記識別情報通知(いまの「権利証」)は、ほかの書類とは分けて保管します 書類は一つのファイルにまとめ、保管場所を家族にも伝えておくと、相続のときにも役立ちます 家の引渡しが終わると、たくさんの書類が手元に残ります。結論から言うと、購入のときの書類は、少なくともその家を売るまで、ひとまとめにして保管しておくのが基本です。法律で「何年保管しなさい」と決められている書類は多くありませんが、売るときの税金の手続きや、次の買主への説明の場面で、何年もたってから必要になることがあるからです。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

遺贈は放棄できる?──もらう側が断るときの手続きと、相続放棄との違い

この記事の要点 遺言で財産を譲られる「遺贈」は、受け取る側(受遺者)が放棄できます(民法986条1項)。ただし、遺贈の種類によって手続きがまったく違います 特定の財産を譲る「特定遺贈」は、家庭裁判所の手続きは不要で、遺贈を実行する立場の人(遺言執行者がいれば遺言執行者、いなければ相続人)に「放棄します」と伝えることで放棄できると解されています。後のトラブルを防ぐため、内容証明郵便などの書面で残しておくのが安全です 財産を割合で譲る「包括遺贈」は、相続人と同じ扱いになるため(民法990条)、相続放棄と同じく家庭裁判所への申述が必要と解されています 遺贈の放棄は、一度したら撤回できません(民法989条1項。包括遺贈も、相続放棄と同様に撤回できないと解されています)。放棄された財産は、遺言に別の定めがなければ相続人のものになります(民法995条) 迷ったら、遺言の内容が「特定遺贈」「包括遺贈」のどちらに当たるかを確かめるところから始めましょう 遺言書に「○○に土地を遺贈する」と書かれていても、受け取る側には、それを受け取らない(放棄する)自由があります。民法986条1項は、受遺者(遺贈を受ける人)は、遺言者が亡くなった後、いつでも遺贈を放棄できると定めています。 ...

2026年10月19日 · ひぐらしさとし

「代理」「代表」「使者」の違い──民法99条・会社法349条と登記の委任状で読み分ける

この記事の要点 「代理」は、代理人が自分で意思表示をし、その効果だけが本人に及ぶしくみです(民法99条1項)。登記の委任状に受任者として名前が載る司法書士は、登記の申請手続きについての代理人です この記事で取り上げる「代表」は、会社などの法人の代表です。会社法349条は取締役・代表取締役について株式会社を「代表する」と書き、支配人について「会社に代わって」と書く会社法11条とは言葉を使い分けています。委任状では「○○株式会社 代表取締役△△」として申請人の側に立ちます 「使者」は、本人が決めた内容を伝える・届けるだけの役割を指す講学上の言葉で、民法や会社法に定義した条文はありません。代理人との分かれ目は、内容を決めているのが誰かです 登記を司法書士に依頼するときの委任状には、「委任者 ○○株式会社 代表取締役△△」と「受任者 司法書士□□」という二つの肩書が並びます。似た言葉ですが、会社法や不動産登記令の条文では「代表」と「代理」が書き分けられています。さらに、書類を窓口へ届けるだけの人は、どちらにもあたらない「使者」として整理されます。三つの違いは、誰が内容を決めているか、誰の行為として扱われるかで読み分けると整理しやすくなります。なお、この記事は執筆時点(2026年10月)の条文に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし

公図・地積測量図・建物図面の違いは?──法務局でもらえる3つの図面と取り方

この記事の要点 公図は「土地の並び方」、地積測量図は「1筆の土地を測った結果」、建物図面は「建物が敷地のどこに建っているか」を示す図面で、法律上の根拠もそれぞれ別です 3つとも、所有者でなくても請求でき、電子化された図面なら窓口(管轄外の最寄りの法務局を含む)・郵送・オンラインで取れます。手数料は窓口・郵送で500円、オンラインで440円または470円です 図面は登記の資料で、図面だけで現地の境界が決まるわけではありません。境界の確認や測量は土地家屋調査士の分野です 土地や建物の登記簿(登記事項証明書)は文字の記録なので、「隣はどの土地か」「建物は敷地のどこにあるか」といった位置関係は分かりません。それを補うのが法務局の図面です。結論から言うと、よく使われるのは公図・地積測量図・建物図面の3つで、取り方はほぼ共通ですが、何のための図面かはまったく違います。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし

遺贈寄付とは──財産の一部を団体に遺す方法と、不動産を寄付するときの注意

この記事の要点 遺贈寄付とは、遺言で「遺贈」という方法を使い、亡くなったあとに財産の全部または一部を団体などに寄付することを指す呼び方です 遺贈には、財産を割合で渡す「包括遺贈」と、特定の財産を指定して渡す「特定遺贈」があり(民法964条)、受け取る団体にとっての負担が大きく違います 団体は遺贈を断ることができ(民法986条)、とくに不動産は受け入れていない団体もあるため、遺言を作る前に受け取る側への確認が欠かせません 不動産や株式などを法人に遺贈すると、値上がり分に所得税がかかる「みなし譲渡所得課税」の対象になることがあり(所得税法59条)、その申告は相続人が行うことになります。税金の判断は税理士に確認しましょう 遺贈を確実に実現するために、遺言で遺言執行者を決めておくことが大切です 遺贈寄付とは、遺言によって、自分が亡くなったあとに財産の全部または一部を、公益的な活動をしている団体などに渡すことです。「遺贈寄付」は法律の条文にある言葉ではなく、遺言による「遺贈」という仕組みを使った寄付を、一般にこう呼んでいます。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし

夫婦で家を買うときの持分の決め方──資金の割合と登記の持分が違うと贈与として扱われ得る話(税額は税理士へ)

この記事の要点 夫婦の共有名義で家を買うときは、登記簿に「夫○分の○・妻○分の○」という持分の割合が必ず記録されます。この割合は、夫婦それぞれが購入資金をいくら負担したかに合わせて決めるのが基本です 資金の負担割合と登記の持分が食い違うと、差額の分について夫婦の間で贈与があったものとして扱われ得ます。「夫婦だから半分ずつ」は、負担の実態と合っていなければ注意が必要です 持分は登記を申請する時点で決めて書き込みます。あとから直すには別の登記(当初から誤っていた場合の更正の登記など)が必要で、手間も費用もかかります 贈与税の配偶者控除などの特例もありますが、使えるかどうか・税額・申告が要るかどうかの判断は税理士にご相談ください 持分の割合を決める前に、誰がいくら出すのかを書き出しておきましょう。登記の進め方は、お近くの司法書士にご相談ください 夫婦で家を買うとき、「名義は2人で半分ずつにしておけば公平だろう」と考える方は少なくありません。結論から言うと、共有名義の持分(その不動産に対してそれぞれが持つ権利の割合)は、夫婦それぞれが実際に負担した購入資金の割合に合わせて決めるのが基本です。夫婦であっても、資金の負担と持分がずれていると、そのずれた分について贈与があったものとして扱われ得るからです。 ...

2026年10月18日 · ひぐらしさとし

相続の相談はいつ行けばいい?──四十九日などの区切りの考え方と、早めに動いたほうがよい場合

この記事の要点 四十九日などの区切りは、宗教・宗派や地域、家庭によって考え方が異なる慣習で、法律が定める手続きの期限ではありません。相談に行く時期を法要の日取りに合わせる必要はありません 一方で、相続放棄・限定承認の3か月、準確定申告の4か月、相続税の申告の10か月、相続登記の申請の3年など、法律で期限が決まっている手続きがあります 借金がありそうなとき、相続人と連絡がつかないとき、不動産を売る予定があるときなどは、気持ちの整理を待たずに、期限が関係するかどうかだけでも早めに確かめておくと安心です 「四十九日が済んで、落ち着いてから相談しよう」と考える方もいるでしょう。結論からいえば、相談に行く時期は法要の区切りではなく、「期限のある手続きが関係しそうかどうか」で考えるのが基本です。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし