死亡保険金の非課税枠とは──「500万円×法定相続人の数」の意味と、使える人・使えない人

この記事の要点 亡くなった方が保険料を負担していた死亡保険金は、民法上の相続財産ではなくても、相続税では「相続や遺贈で取得したもの」とみなされ、課税の対象になる(相続税法3条1項1号) 非課税枠は「500万円×法定相続人の数」。人数は、相続放棄をした人も放棄がなかったものとして数え、養子は数に入れられる人数に上限がある(同法12条1項6号・15条2項) 枠を使えるのは相続人が受け取った保険金だけ。相続放棄をした人や相続人でない人が受け取った保険金には使えず、相続人どうしでは受け取った額の割合で枠を分ける 結論から言うと、死亡保険金の非課税枠は「人数を数えるときは相続放棄をした人も含めるが、枠を使えるのは相続人が受け取った分だけ」という、少しねじれた仕組みです。順に整理します。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

遺言で不動産を特定する書き方──「自宅」や住所だけでは相続登記で困ることがある

この記事の要点 遺言書の中で不動産を書くときは、「自宅」や住所(住居表示)だけで済ませず、登記事項証明書の表題部に書かれているとおりに書くのが基本です。土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積です。 ふだん使う住所と、登記で使う「地番」は別の番号です。自宅の敷地が何筆にも分かれていたり、私道の持分があったりすると、住所だけでは書き漏れが起きやすくなります。 持分だけを持っている不動産、マンション(敷地権付きの区分建物)、登記されていない建物は、それぞれ書き方に注意点があります。 「その他一切の財産」と書く条項は書き漏れへの備えにはなりますが、個々の不動産をきちんと書くことの代わりにはなりません。 書いた遺言書で実際に登記ができるかどうかは、法務局の判断と個別の事情によります。書く前・書き直す前に、最新の登記事項証明書を取り寄せて照らし合わせるところから始めましょう。 遺言書に「自宅は長男に相続させる」と書いておけば、家族には気持ちが伝わります。けれども、亡くなった後に名義を変える手続き(相続登記)では、遺言書に書かれた内容からどの土地・どの建物なのかを読み取れるかが問われます。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

なぜ司法書士は免許証を見るのか──本人確認・意思確認と「地面師」対策

この記事の要点 司法書士が運転免許証などを確認し、本人と会って話を聞くのは、「書類の上の名義人」と「目の前の依頼者」が同じ人か、そしてその人が本当にその登記を望んでいるかを、登記の申請より前の段階で確かめるためです 司法書士は、犯罪収益移転防止法で本人確認(取引時確認)を求められる「特定事業者」の一つです。宅地や建物の売買に関する手続の代理を引き受ける契約などが、確認の対象として定められています 不動産登記法にも、権利証(登記識別情報)を出せないときの事前通知や、司法書士などが作る「本人確認情報」、登記官による本人確認の調査といった、なりすましに備える仕組みがあります 本人確認は、他人になりすまして土地を売るいわゆる「地面師」の被害を防ぐための大切な関門ですが、それだけで被害を完全に防げるわけではありません。確認に協力しつつ、心配な点は早めにお近くの司法書士にご相談ください 不動産の売買や贈与の登記を司法書士に頼むと、運転免許証やマイナンバーカードを見せてほしい、本人と直接会って話を聞きたい、と言われるのが一般的です。「家族が代わりに行けばいいのでは」「印鑑証明書もそろえたのに、なぜ」と感じる方もいるかもしれません。 ...

2026年10月17日 · ひぐらしさとし

預金の残高証明書はいつ・誰が取る?──死亡日現在で請求する順番と相続放棄の3か月

この記事の要点 預金の残高証明書は、相続人が金融機関に「死亡日現在」の残高で請求するのが基本で、請求は死亡の連絡とセットになる(連絡と同時に口座の取引は原則制限される) 相続放棄・限定承認を選べる期間は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月。残高証明書はその判断材料なので、取引先の洗い出しが済んだら早めにまとめて請求する 誰が請求できるか・必要書類・手数料・発行までの日数は金融機関ごとに異なることがあるため、事前に確認する 結論から言うと、残高証明書は「遺産分割の話し合いの前」よりさらに早く、「相続するか放棄するかを決める前」に揃え始めたい書類です。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

特別養子の戸籍はどう書かれている?──「民法817条の2」の記載と相続人確定での読み方

この記事の要点 特別養子縁組は家庭裁判所の審判で成立し、戸籍には「縁組日」ではなく裁判の確定日が記載される。法令の記載例では、養親の戸籍の養子の欄に【民法817条の2による裁判確定日】という項目で記載される 戸籍は「実方の戸籍 → 養子ひとりの新戸籍 → 養親の戸籍」とつながる。出生までさかのぼるときは、間にはさまる新戸籍を抜かさない 実親の相続では、特別養子縁組の記載がある子は原則として相続人にならない(民法817条の9)。ただし、夫婦の一方が配偶者の嫡出子(連れ子)を特別養子とした場合の例外と、離縁による親族関係の回復に注意する 結論から言うと、特別養子縁組は、ひとつの戸籍だけを見ても全体がつかめません。養親の戸籍、養子について一度だけ作られる新しい戸籍、縁組前の実方(じっかた=生みの親の側)の戸籍の3か所に、それぞれ違う形で記載が残るためです。ここでは、相続手続きのために集めた戸籍の中でこの記載に行き当たったときの読み方に絞って、法令に定められた記載例に沿って整理します。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

自筆証書遺言が無効になる典型例──日付・押印・加除訂正・共同遺言・パソコン本文

この記事の要点 自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分の手で書き、印を押すのが法律の定める方式です(民法968条1項)。1つでも欠けると、遺言として効力が認められないおそれがあります 失敗しやすいのは「日付」「押印」「書き間違いの訂正」「夫婦で1枚に書く」「本文をパソコンで作る」の5つです 押印を不要にする改正法(令和8年法律第45号)は公布されていますが、2026年10月の執筆時点では施行されていません。今書くなら押印が必要です 書き終えたら、方式どおりかどうかを第三者に確認してもらうと安心です 自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があれば自分ひとりで作れます。その手軽さの一方で、民法が決めた書き方(方式)を1つでも外すと、遺言として扱われないおそれがあります。民法960条は「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と定めているからです。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

不動産の決済で司法書士は誰が選ぶ?──売主側・買主側・銀行指定の実際と費用負担の慣行

この記事の要点 不動産の売買で司法書士を誰が選ぶかは、法律で決まっているわけではありません。一般には、買主側(不動産会社の紹介や、住宅ローンを組む金融機関の手配を含む)で決まることが多いとされています 住宅ローンを使う場合、金融機関も抵当権の登記の当事者になるため、金融機関の手続きの都合が司法書士選びに関わります 登記費用を誰が負担するかは「誰が選んだか」ではなく、売買契約書の取り決めで決まります。名義変更は買主、売主の抵当権の抹消は売主が負担する形が一般的とされています 買主が自分で司法書士を選びたいときは、決済日が決まる前に、不動産会社と金融機関へ早めに伝えて相談しましょう 不動産を売り買いするとき、「司法書士は誰が頼むものなのか」「不動産会社に紹介された人に決まっているのか」と迷う方は少なくありません。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

成年後見人が2人以上いるときはどうなる?──「共同して」か「分掌して」か、家庭裁判所が決める権限の使い方

この記事の要点 成年後見人は1人とは限らない。すでに成年後見人がいる場合でも、家庭裁判所は必要があると認めるときは、さらに成年後見人を選任することができる(民法第843条第3項) 成年後見人が数人あるとき、家庭裁判所は職権で、「共同して」権限を使うか、「事務を分掌して(分担して)」権限を使うかを定めることができ、その定めは後見登記に記録される(民法第859条の2第1項、後見登記等に関する法律第4条第1項第7号) 成年後見人が数人あっても、第三者からの意思表示は、そのうちの1人に対してすれば足りる(民法第859条の2第3項) 成年後見人というと、1人の後見人が本人の財産のことも生活のこともすべて引き受けるイメージがあるかもしれません。結論から言うと、成年後見人は2人以上選ばれることがあり、その場合に後見人どうしでどう権限を使うかは、家庭裁判所が定めることができます。本記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

簡易裁判所の裁判に家族や会社の社員が代わりに出られる?|裁判官の許可による代理人(代理人許可)の基礎

この記事の要点 簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可を得れば、弁護士でない人(家族や会社の社員など)を代理人にできます(民事訴訟法54条1項ただし書) 許可を求めるには、申請書と、本人と代理人の関係がわかる書類を出します。許可はいつでも取り消されることがあります 和解や訴えの取下げなどを代理人に任せるには、委任状で特別に任せておく必要があります 結論から言うと、簡易裁判所の民事裁判では、裁判官の許可があれば、弁護士でない家族や会社の社員に代わりに手続きをしてもらうことができます。民事訴訟(民事裁判)については、簡易裁判所だけに設けられた仕組みです。本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

公正証書遺言の作り方──公証役場での流れ・証人2人・必要書類・手数料の考え方

この記事の要点 公正証書遺言は、公証役場への事前相談→資料の提出→文案の確認→作成当日→正本・謄本の受け取り、という流れで作るのが一般的です 作成当日には証人2人以上の立会いが必要で、推定相続人や財産を受け取る人などは証人になれません(民法974条) 手数料は「財産を受け取る人ごとの金額」を基準表に当てはめて合算し、加算をのせて決まります。2025年10月1日に手数料の額が改定されています 2025年10月1日から、公正証書は原則として電子データで作成されるようになり、条件を満たせばウェブ会議での手続も制度上可能になりました まずは必要書類をそろえ、内容のメモを作ってから公証役場に相談するのが近道です 公正証書遺言は、公証人(公証役場で公正証書の作成などを担当する法律の専門家)が、遺言をする人から内容を聞き取って作る遺言です。作り方の大きな流れは、公証役場に相談し、必要書類と内容のメモを出し、公証人が作った文案を確認したうえで、作成当日に証人2人の立会いのもとで仕上げる、というものです。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし