相続の相談先で別の専門家を紹介されたら──そのまま頼む前に確認しておきたいこと

この記事の要点 別の専門家を紹介されても、紹介を受けるかどうか、誰に頼むかは相談者が決めてよい 頼む前に、なぜその専門家が必要なのか、紹介先が担当する範囲、費用の見積もりを確かめておくと、あとの行き違いを防ぎやすい 紹介料の有無も尋ねてかまわない。司法書士は、依頼者の紹介について対価を受け取ることも支払うことも、倫理上の決まりで禁じられている 相続の相談に行ったら、「この部分は税理士に」「ここから先は弁護士に」「土地の測量は土地家屋調査士に」と、別の専門家を紹介されることがあります。紹介してもらえるのはありがたい一方で、「断ったら悪いのでは」「言われるまま頼んでいいのか」と迷う方もいるかもしれません。結論から言うと、紹介を受けるかどうかは相談者が決めてよいことです。そのうえで、頼む前にいくつか確かめておくと、あとで「思っていたのと違った」となりにくくなります。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

亡くなった人の住民税は誰が払う?──1月1日時点の課税の仕組みと、相続人が納める流れ

この記事の要点 個人の住民税(市町村民税・道府県民税)は、毎年1月1日(賦課期日)に住所がある人に、前年の所得をもとに課税される(地方税法294条1項1号・2項、318条、39条、313条1項) 1月1日に生きていた人がその年の途中で亡くなっても、その年度分の住民税はなくならず、相続人が納める義務を引き継ぐ(同法9条1項)。相続人が複数いれば相続分に応じて分けて負担する(同条2項) 1月1日より前に亡くなった人は、その年の1月1日に住所がないため、その年度分の住民税は課されない仕組みになっている 結論から言うと、亡くなった方の住民税を払うのは相続人です。ただし、どの年度の分を払うことになるかは「1月1日に生きていたかどうか」で決まります。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

経営者の生前対策チェックリスト──遺言・株・保証・後継者・登記、年に一度見直す項目

この記事の要点 経営者の生前対策は「一度つくって終わり」ではありません。遺言を書いた後に株を贈与した、後継者の候補が変わった、借入が増えた──こうした変化で、つくった対策の前提が崩れることがあります。年に一度、決まった項目を点検するのが基本です 点検する分野は大きく6つ:①遺言 ②自社株と株主名簿 ③経営者保証 ④後継者と判断能力への備え ⑤会社と個人の財産の線引き ⑥会社の登記 会社の登記には期限があります。登記した事項に変更が生じたら2週間以内に変更の登記が必要で(会社法915条1項)、怠ると100万円以下の過料の対象になりえます(会社法976条1号) 項目ごとに確認先が違います。遺言の手続き・株主名簿の点検・登記は司法書士、株の評価や税金は税理士、保証は取引金融機関(必要に応じて弁護士)、労務・社会保険は社会保険労務士、もめごとは弁護士です 次の一歩は、登記事項証明書・定款・株主名簿・遺言の控え・借入と保証の一覧を、1か所にそろえることです 経営者の方に知っておいてほしいのは、生前対策で本当に怖いのは「何もしていないこと」だけではなく、「一度やったきり、見直していないこと」でもある、という点です。結論から言うと、毎年の決算や定時株主総会の時期に合わせて、この記事のチェックリストを1回通して見る習慣をつけるのがおすすめです。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

登記の「抹消」と「更正」はどう違う──消す・直す・戻す、3つの手段の使い分け

この記事の要点 登記が終わった後に誤りや無効が分かったときの直し方は、主に抹消(消す)・更正(直す)・真正な登記名義の回復(本当の持ち主へ名義を戻す)の3つです。 見分けの軸は、①誤りが登記した時点からあったか、②直した後も同じ登記といえるかの2つです。名前の字や持分の割合のように一部だけ直せば足りるなら更正、登記そのものが成り立たないなら抹消が基本です。 抹消には、抵当権を持つ銀行など登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要です(不動産登記法68条)。承諾が得られない場合などに、名義を移す形で直す「真正な登記名義の回復」が使われることがあります。 登録免許税は、抹消が不動産1個につき1,000円、名前・住所の更正も1個につき1,000円です。真正な登記名義の回復は、不動産の価額の1000分の20で扱われると考えられます。 相手が協力しない、権利が誰のものかで争いがある、という場合は訴訟が必要になることがあり、弁護士への相談が必要です。 登記簿を見たら名義や内容が事実と違っていた──そんなとき、「登記を直す」方法は一つではありません。結論から言うと、登記が終わった後の直し方は、次の3つに分かれます。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

生命保険の「指定代理請求」とは──本人が請求できなくなったときに備える一手間

この記事の要点 指定代理請求とは、被保険者(保険の対象になっている人)が病気やけがで保険金などを請求できないときに、あらかじめ指定された家族が本人に代わって請求できる仕組みです 対象になるのは、主に本人が受取人になっている入院給付金・高度障害保険金・介護保険金などです。死亡保険金を受け取るための仕組みではありません 指定できる家族の範囲や対象になる給付は、保険会社・契約ごとに異なります 代わりに請求して受け取ったお金は、本人(被保険者)の財産です まずは保険証券や契約内容のお知らせを見て、指定代理請求人が決められているかを確認し、分からない点は保険会社(担当の募集人)に問い合わせましょう 結論から言うと、指定代理請求は「本人が受け取るはずの保険金を、本人が請求できない状態になったときに、決められた家族が代わりに請求する」ための仕組みです。親が入院給付金や介護保険金の出る保険に入っていても、親自身が請求の手続きをできなくなると、せっかくの保険金を受け取れない場面が出てきます。そうした場面に備えて、誰が代わりに請求できるのかを契約の中で決めておく、というのがこの制度の考え方です。 ...

2026年10月25日 · ひぐらしさとし

限定承認をしたあとの期限──5日以内の官報公告と「2か月以上」の請求期間、清算の順番

この記事の要点 限定承認をした人は、限定承認をした後5日以内に、亡くなった方の債権者などに向けて官報で公告しなければならず、請求を申し出てもらう期間は2か月を下ることができません(民法927条1項・4項) 相続人が複数いる場合は、家庭裁判所が相続人の中から選ぶ「相続財産の清算人」が手続きを進め、この期限は「選任があった後10日以内」に読み替えられます(民法936条) 申出期間が終わるまでは支払いを拒むことができ、終わったあとは債権者に債権額の割合に応じて支払い、遺言でもらう人(受遺者)への支払いはその後です(民法928条・929条・931条) 限定承認は「申述して終わり」ではない 結論からいうと、限定承認は家庭裁判所に申述したところがゴールではなく、その先に数日単位の短い期限で始まる清算手続きが控えています。限定承認の仕組みや、相続人全員で3か月以内に申述するという要件そのものは限定承認の解説記事で整理していますので、ここでは「その後に来る期限」に絞ります。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

準正とは?──戸籍での書かれ方と、相続人の確定で意味を持つ場面

この記事の要点 準正(じゅんせい)は、父に認知された子が、父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する仕組みです(民法789条)。認知の後に父母が婚姻する場合と、婚姻中の父母が認知する場合があります コンピュータ化された戸籍の法定の記載例では、「準正」という見出しではなく、子の身分事項欄に「父母との続柄」の訂正として記録され、訂正前の続柄も【従前の記録】として残ります 現在の法定相続分は嫡出子かどうかで差がないため、準正の有無が相続分に関わるのは、主に平成25年9月4日以前に開始した相続を今あらためて整理する場面です 準正とは──「認知」と「父母の婚姻」がそろったときの効果 結論から言うと、準正とは、婚姻関係にない父母から生まれた子が、父の認知と父母の婚姻がそろうことで、嫡出子(婚姻関係にある父母の子)の身分を取得することをいいます。民法789条は次のように定めています。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

後継者に株を生前贈与する──贈与契約・株主名簿の書換え・事業承継税制の入口(税理士へ)

この記事の要点 自社株の生前贈与は、①贈与契約(書面で残すのが基本)→②譲渡制限株式なら会社の譲渡承認→③株主名簿の名義書換、の順で進みます。株券発行会社では、株券が発行済みなら、それを渡さなければ株式を移す効力が生じません(会社法128条1項) 譲渡制限株式は、相続で取得した場合と違い、贈与で取得した場合は会社の承認がないと原則として名義書換を請求できません(会社法134条) 株主が誰かは登記簿に載りません。株式を贈与しても登記は不要ですが、名義書換をしないと、後継者は会社に「自分が株主だ」と主張できません(会社法130条) 名義書換は、原則として贈与した経営者と後継者が共同で請求します。経営者が元気なうちに、贈与とセットで済ませておくのが基本です 贈与税・株式の評価・事業承継税制は税理士、遺留分(法律で保障された最低限の取り分)をめぐるもめごとは弁護士の領域です。贈与を実行する前に確認しておきましょう 経営者の方に知っておいてほしいのは、自社株の生前贈与は「贈与契約を結んで終わり」ではない、ということです。株式に譲渡制限(会社の承認がないと譲渡できない定め)がある会社では会社の承認を受け、最後に会社の株主名簿を書き換えて、はじめて後継者が会社に対して株主として扱われます。そして、この一連の動きは法務局の登記簿には現れません。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

登記名義人の氏名変更登記──結婚・離婚・改名で登記簿の名前を変える手続き(住所変更とセットで)

この記事の要点 結婚・離婚・改名などで名前が変わったら、不動産の所有者は、変更の日から2年以内に登記簿の氏名を変える「氏名変更登記」を申請する義務があります(2026年4月1日より前の変更は2028年3月31日まで)。 添付書類の中心は、変更前の氏名・変更後の氏名・変更の日がわかる戸籍の証明書と、本籍の記載がある住民票の写しです。 住所も変わっているときは、住所と氏名の変更を1つの申請書でまとめて申請できます。登録免許税は不動産1個につき1,000円で、法務局の記載例では、住所と氏名をまとめて変更する場合も土地1筆・建物1棟で2,000円とされています。 検索用情報の申出をしておけば、法務局が職権で氏名を書き換える仕組みも使えます。ただし反映は法務省の決めたスケジュールどおりなので、売却などを控えている方はご自身で申請するのが確実です。迷ったらお近くの司法書士にご相談ください。 結論から言うと、結婚などで名字や名前が変わっても、不動産の登記簿の名前は自動では変わりません。登記簿の名前を今の名前に合わせるには、所有者本人が法務局に「所有権登記名義人氏名変更」の登記を申請するか、法務局の職権による変更(スマート変更登記)を利用する必要があります。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし

家族が立て替えた介護費用は相続で精算できる?──領収書と記録の残し方

この記事の要点 家族が自分のお金で立て替えた親の介護費用は、親に返してもらう性質のものであれば、親が亡くなった後、相続人が引き継ぐ親の債務(相続債務)になり得ます ただし、子には親を扶養する義務があります(民法877条1項)。扶養の範囲の支出や、返してもらうつもりのなかった支出と見られると、精算の対象にならないこともあります 精算は、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)の中で合意して行うのが通常の形です。合意を支えるのは、領収書・家計簿・親との取り決めの書面といった記録です 立替金の精算は、特別寄与料・寄与分・使い込みの問題とは別の話です 今日からできるのは、親のお金と自分のお金を分けること、領収書を残して記録をつけること、親が元気なうちに取り決めを書面にしておくことです 親の介護が続くと、施設の利用料やおむつ代、通院のタクシー代などを、子どもが自分の財布から払う場面が出てきます。結論から言うと、こうして立て替えたお金は、親に返してもらう性質のものであれば、親が亡くなった後に相続の中で精算する余地があります。ただ、親子の間のお金のやり取りは「親孝行として出したのか」「後で返してもらう約束だったのか」が曖昧になりやすく、記録がないと、ほかの相続人の理解を得にくいのが実情です。 ...

2026年10月24日 · ひぐらしさとし