問題: 表題部所有者「AとBが共有する」甲建物と、表題部所有者「AとCが共有する」乙建物について、両建物を合併する登記(建物の合併の登記、不動産登記法54条1項3号)の申請をすることができるか。
答え: できない。建物の合併の登記は、合併しようとする建物の表題部所有者または所有権の登記名義人が同一でなければ申請することができない(不動産登記法56条5号)。
解説: 建物の合併の登記は、構造上区分された数個の建物について、これを登記簿上1個の建物として扱う登記であり、表題部の記載のみを変更する処分行為に近い性質を持つ。そこで不動産登記法56条は、合併の制限事由を5つ列挙し、その5号で「表題部所有者又は所有権の登記名義人が相互に異なる建物」については合併を認めないと定める。
本問では、甲建物の所有者がA・Bの共有、乙建物がA・Cの共有であり、Aは共通するもののBとCは別人である。共有者の構成が完全に同一でない限り「同一性」は満たされないため、合併不可となる。
受験対策上の注意は、(1)登記実務上は共有持分割合の異同まで含めて同一性が要求されると解されている、(2)所有権の登記がある建物と表題部所有者のみの建物との合併も不可(同条5号)、(3)合体(同法49条)と合併(同法54条1項3号)はまったく別概念(合体は物理的に1個になった場合、合併は別個独立した建物のまま登記簿上1個にする場合)──の3点である。
問題: 土地家屋調査士Aは、Bから「隣地所有者Cとの境界紛争について、自分(B)の側で筆界特定の申請代理を依頼したい」との依頼を受け、これを受任した。後日、Cから同じ筆界に関する筆界特定の申請代理を依頼された場合、Aはこれを受任することができるか(Bの同意がない場合を前提とする)。
答え: 受任できない。土地家屋調査士法22条の2第2項は、調査士が筆界特定手続代理関係業務を行うことができない事件を法定しており、「受任している事件の相手方からの依頼による他の事件」がこれに該当する。
解説: 土地家屋調査士法22条の2は、調査士の利益相反を防ぐため、業務を行うことができない事件を法定する。同条は次のような構造になっている。
- 第1項:公務員として職務上取り扱った事件・仲裁人として取り扱った事件 → 業務一般について禁止
- 第2項:筆界特定手続代理関係業務に関する利益相反類型を列挙(相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件等)
- 同項3号:受任している事件の相手方からの依頼による他の事件(依頼者の同意があれば解除可)
本問では、Bから「筆界特定の申請代理事件」を受任した後に、相手方であるCから同じ筆界に関する別の「筆界特定の申請代理事件」の依頼を受けたという事案であり、両方とも筆界特定手続代理関係業務にあたる。22条の2第2項3号の典型事案であり、依頼者であるBの同意がない限り受任することができない。
受験対策上の注意:(1)22条の2第2項の利益相反規定は「筆界特定手続代理関係業務」に限定されており、表示登記の代理業務一般を直接対象としているわけではないこと、(2)「同意」で解除されるものとされないものの場合分け(同項3号・7号は同意で解除可、それ以外は同意があっても受任不可)、(3)違反した場合の懲戒処分(同法42条以下)。表示登記の代理業務における利益相反は、調査士の倫理規程や信義則の観点から別途検討される論点であり、22条の2を直接の根拠にはできない。
問題: A・B・Cが各3分の1の持分で共有する宅地について、Aが第三者Xに対して期間10年の賃貸借契約を締結したい場合、Aは単独でこれを行うことができるか。または、共有者の過半数の同意で足りるか、それとも全員の同意が必要か。
答え: 共有者全員の同意が必要となる(民法251条1項)。
解説: 令和3年改正民法(令和5年4月1日施行)は、共有物の管理に関する規定を整備し、252条に詳細なルールを置いた。
- 共有物の保存行為:各共有者が単独でできる(民法252条5項)
- 共有物の管理行為(軽微変更を含む):持分の価格の過半数で決定(同条1項)
- 共有物に賃借権等を設定する場合:民法602条所定の期間を超えないものは管理行為として過半数で決定可(同条4項)
- 共有物の変更(軽微なものを除く):共有者全員の同意が必要(民法251条1項)
民法602条の短期賃貸借の期間は次のとおり:
- 樹木の栽植・伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
- その他の土地(宅地・田・畑等)の賃貸借 5年
- 建物の賃貸借 3年
- 動産の賃貸借 6か月
本問は宅地(その他の土地)に該当し、短期賃貸借の上限は5年である。期間10年の賃貸借は短期賃貸借の上限を超えるため、民法252条4項の管理行為としては処理できず、共有物の変更(民法251条1項)として全員の同意が必要となる。
受験対策上の引っかけは、(1)「過半数で決まる」と機械的に処理しないこと、(2)山林か宅地かで期間の上限が異なること、(3)令和3年改正で「軽微変更」と「変更」の区別が新設されたこと──の3点。
問題: 既知点A(X = 100.000 m, Y = 200.000 m)から既知点B(X = 150.000 m, Y = 280.000 m)までの距離と方位角を求めよ。なお、座標系は平面直角座標系(X軸=北方向、Y軸=東方向、方位角は北方向から時計回り)を用い、距離は小数第3位まで、方位角は秒位まで答えよ。
答え: 距離 94.340 m、方位角 57°59'41"(または 57°59'42"。電卓による丸めで1秒程度の差が出ます)
解説: 座標差を求める。
$$ \Delta X = X_B - X_A = 150.000 - 100.000 = 50.000 \text{ m} $$
$$ \Delta Y = Y_B - Y_A = 280.000 - 200.000 = 80.000 \text{ m} $$
距離は三平方の定理から:
$$ \text{距離} = \sqrt{(\Delta X)^2 + (\Delta Y)^2} = \sqrt{50.000^2 + 80.000^2} = \sqrt{2500 + 6400} = \sqrt{8900} \approx 94.3398 \text{ m} $$
したがって距離 ≈ 94.340 m。
方位角は北(X軸方向)から時計回りに測るため、tan の引数は ΔY/ΔX となる:
$$ \tan(\theta) = \frac{\Delta Y}{\Delta X} = \frac{80.000}{50.000} = 1.6000 $$
$$ \theta = \arctan(1.6000) \approx 57.9946° $$
度分秒に変換すると:
- 整数部分 57°
- 小数部分 0.9946° × 60 = 59.674’ → 整数部分 59'
- 小数部分 0.674’ × 60 ≈ 40.4"(電卓の精度により 41" または 42" が出る)
したがって方位角 ≈ 57°59'41"(または 57°59'42")。
ポイント:
- 平面直角座標系では X が北、Y が東で、数学の慣習(x が東、y が北)とは入れ替わる。tan の引数を ΔX/ΔY と置く誤りが本試験で頻発するため、必ず「方位角は北から時計回り → ΔY/ΔX」を機械的に押さえること。
- 土地家屋調査士試験は関数電卓の持ち込みが可能(プログラム機能なし・2台まで)。本問のような arctan の計算は電卓で迅速に処理する。ただし、丸め誤差により最後の1〜2秒が予備校解答と異なる場合がある。
問題: 地積測量図の必要的記載事項として、不動産登記規則77条1項各号に列挙されているものに該当しないものを以下から1つ選べ。
イ 地番区域の名称 ロ 方位 ハ 縮尺 ニ 申請人の住所 ホ 筆界点間の距離
答え: ニ(申請人の住所)
解説: 不動産登記規則77条1項は、地積測量図の記載事項を10号にわたって列挙する。条文上の記載事項は以下のとおり(不動産登記規則77条1項各号、令和8年5月時点):
- 地番区域の名称
- 方位
- 縮尺
- 地番(隣接地の地番を含む)
- 地積およびその求積方法
- 筆界点間の距離
- 国土調査法施行令2条1項1号に規定する平面直角座標系の番号または記号
- 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値
- 境界標があるときは、当該境界標の表示
- 測量の年月日
申請人の住所は、地積測量図そのものに記載すべき事項としては規則77条1項に列挙されていない(申請人の住所・氏名は申請書または委任状で表示される)。
受験対策上の盲点:
- 「申請人の氏名」も77条1項各号には列挙されていないが、実務上は地積測量図に作成者(土地家屋調査士)の表示と職印を押すのが通常(土地家屋調査士法施行規則22条等)。
- 座標値の記載は規則77条1項8号で原則として要求される(7号は座標系の番号・記号)。なお、近傍に基本三角点等が存しない場合その他の特別の事情がある場合は、第7号・第8号に代えて、近傍の恒久的な地物に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記録することができる(同条2項)。
- 「測量の年月日」(第10号)を記載漏れする受験生が多いが、明文の必要的記載事項であるため必ず押さえること。
出題分野の振り分け
| 問 | 出題分野 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(建物の合併) | 不動産登記法54条1項3号・56条5号 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法(利益相反) | 土地家屋調査士法22条の2・42条 |
| 第3問 | 民法(共有物の賃貸借・改正民法) | 民法251条1項・252条1項・252条4項・602条 |
| 第4問 | 測量計算(座標から距離・方位角の逆算) | 平面直角座標系・三平方の定理・arctan |
| 第5問 | 地積測量図(必要的記載事項) | 不動産登記規則77条1項各号 |