遺産分割をやり直したら登記はどうなる──「錯誤」による抹消と、再協議で動く税金の注意(税理士へ)

この記事の要点 遺産分割の「やり直し」には、①相続人全員の合意で最初の協議を解消して改めて協議する場合と、②最初の協議にそもそも無効・取消しの原因があった場合の2種類があり、登記の直し方が違います。 相続人全員の合意で協議を解消し、改めて協議することは、最高裁判所の判例で認められています。一方、ほかの相続人が協議で約束したことを守らないという理由で、一方的に協議を解除することはできないとされています。 最初の協議が無効だった場合は、登記した時点から登記が事実と合っていなかったことになるため、「錯誤」を原因として登記を消す(抹消)か直す(更正)のが基本です。抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円です(更正の登録免許税は、課税の区分を申請前に確認します)。 全員の合意によるやり直しは、登記の後に事情が変わったものなので「錯誤」にはなじまないと考えられ、どの形で登記するかによって登録免許税が大きく変わります(相続による移転なら固定資産評価額の0.4%、相続以外の原因による移転なら2%)。申請の前に確認が必要です。 やり直しで財産の行き先が変わると、贈与税や所得税(譲渡所得)が問題になる可能性があります。再協議の前に税理士にご相談ください。 いったんまとまった遺産分割協議を、後から「やり直したい」と考えることがあります。結論から言うと、やり直しの登記は、なぜやり直すのかによって直し方が分かれます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

親の口座から介護費用を出すには──銀行の「代理人」手続きと、元気なうちにしておく備え

この記事の要点 親の口座のお金は親本人の財産です。家族であっても、原則として本人の意思確認なしには引き出せません 親が元気なうちなら、銀行に「代理人」を届け出ておく方法があります。全銀協の資料でも、独自の代理人制度や財産管理サービスを提供している銀行があるとされていますが、内容は銀行ごとに異なり、こうした手続きができない銀行もあります 親の判断能力が低下した後は、銀行は成年後見制度の利用を案内するのが基本です。代理人の届出などがない家族からの払い出しの依頼に応じるのは、本人の医療費の支払いなど本人の利益になることが明らかな場合に限る、ごく限られた対応とされています 代理人の仕組みや条件は銀行ごとに違います。まず取引銀行に確認し、後見や家族信託まで含めた備えはお近くの司法書士にご相談ください 親の介護が始まると、施設の利用料や医療費を親の口座から払いたい、という場面が出てきます。結論から言うと、いちばん確実なのは、親の判断能力がしっかりしているうちに、親本人が取引銀行で「代理人」の手続きをしておくことです。何も備えないまま判断能力が低下すると、家族が代わりに引き出せる場面はかなり限られます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

測量士補試験 試験対策 第24回──水準測量の観測/河川測量/路線測量

問題: 作業規程の準則に定めるレベル等による水準測量のうち、直接水準測量の観測に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。 ア. 1級水準測量では、視準距離は最大50メートル、標尺目盛の読定単位は0.1ミリメートルを標準とする。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

司法書士試験 試験対策 第75回──相殺/仮登記/保全命令・保全取消し・保全執行

問題: 相殺に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。 ア. 相殺の意思表示には、条件又は期限を付することができないが、相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

相談した専門家とは別の専門家にも意見を聞いてよい?──セカンドオピニオンの考え方と伝え方

この記事の要点 別の専門家に意見を聞くこと(セカンドオピニオン)自体は、依頼する前でも後でもできる。ただし依頼前と依頼後では考え方が少し違う 依頼する前なら、複数のところで話を聞いて比べてから決めてよい。依頼した後は、疑問をまず依頼先に尋ねるのが基本 別の専門家に聞くときは、最初に受けた説明・見積・経緯を整理して持っていくと、意見を聞く時間を有効に使える 「一度相談した専門家がいるのに、別のところにも話を聞くのは失礼ではないか」——こう感じて、聞きたいことがあっても言い出せずにいる、ということもあるかもしれません。結論から言うと、別の専門家に意見を聞くこと自体は、相談者が自分で決めてよいことです。ただ、まだ依頼していない段階か、すでに依頼して手続きが動いている段階かで、意識しておきたい点が変わります。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

住宅取得等資金の贈与の非課税とは──親から家の購入資金をもらったときの特例の基礎と、登記の持分の注意

この記事の要点 父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住む家の新築・取得・増改築等に充てるお金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、限度額までの金額には贈与税がかからない(租税特別措置法70条の2) 限度額は贈与を受けた人1人につき、省エネ等住宅なら1,000万円、それ以外の住宅なら500万円。執筆時点の条文では、2026年(令和8年)12月31日までの贈与が対象 全額が非課税になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしないと特例は受けられない。資金の出し方と登記の持分がずれると、別に贈与の問題が生じ得る点にも注意 結論から言うと、この特例は「親などから、自分が住む家を手に入れるためのお金をもらった」ときに、一定額までの贈与税をかからないようにする制度で、使うには期限内の申告が欠かせません。順に整理します。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

経営者保証を外す・引き継がない準備──経営者保証ガイドラインの活用の入口

この記事の要点 経営者保証(社長個人が会社の借入の連帯保証人になること)は、「経営者保証に関するガイドライン」によって、一定の経営状態がそろえば保証なしの融資や既存の保証の見直しを金融機関が検討する枠組みが示されている。ただし法的拘束力はなく、「必ず外せる」ものではない ガイドラインが会社と経営者に求めるのは、①会社と経営者個人のお金・財産の区分・分離、②財務基盤の強化、③財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示、の3つ 事業承継のときは、別に公表された「特則」で、前経営者と後継者の双方から二重には保証を求めないことが原則とされている 準備は「平時(今から)」「事業承継の準備段階」「代表者交代のとき」の3段階で考えると整理しやすい 金融機関との保証解除の交渉や保証債務の整理は弁護士、財務の整え方は税理士・中小企業診断士、代表者交代の登記は司法書士が相談先 経営者の方に知っておいてほしいのは、経営者保証は「外せるかどうか」を運に任せるものではなく、金融機関が保証を求めるかどうかを検討するときの目安が公表された文書に書かれている、という点です。結論から言うと、まず目指すのは「経営者保証に関するガイドライン」が示す3つの経営状態に近づけることであり、事業承継を控えているなら、後継者が保証を当然に引き継ぐ前提で進めず、早めに金融機関に保証の扱いを相談しておくことが出発点になります。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

登記の「更正登記」とは──名前の字・住所・持分を間違えて登記してしまったときの直し方

この記事の要点 更正登記(こうせいとうき)とは、登記した時点ですでにあった誤りや書き漏らしを直す登記です。登記した後に事実が変わったときの「変更登記」とは区別されます。 名前の字や住所の誤りは、登記名義人(登記簿に所有者などとして載っている人)が単独で申請できます(不動産登記法64条1項)。誤りがあったことを示す住民票の写しなどの公的な書類を添付します。 持分など権利の内容の誤りは、持分が増える人と減る人が共同で申請するのが原則です(同法60条)。その不動産に抵当権を持つ銀行など「登記上の利害関係を有する第三者」がいるときは、その承諾が必要になります(同法66条、不動産登記令 別表25項。詳しくは後半の【さらに深掘り】で補足します)。 名前・住所の更正登記の登録免許税は、不動産1個につき1,000円です(登録免許税法 別表第一・1号(十四))。持分など権利の内容の更正は、税額を申請前に確認してください。 土地の面積(地積)や建物の床面積など「表示の登記」の誤りを直すのは、土地家屋調査士の業務です。 登記簿を見たら、名前の漢字が違っていた、住所の番地が間違っていた、夫婦の持分が契約と違う割合で載っていた──このように、登記した時点から内容に誤りがあったときに使うのが「更正登記」です。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

認知症でも遺言は書ける?──遺言能力と「あとで争われない」ための備え

この記事の要点 認知症と診断されたことだけで、遺言が一律にできなくなるわけではありません。問われるのは「遺言をする時に、その内容を理解して判断できる能力(遺言能力)があったか」です(民法963条) 遺言をした時に遺言能力がなかったとされると、その遺言は無効と解されています。診断名や検査の点数だけで有効・無効が自動的に決まる仕組みは、民法には定められていません 成年後見を受けている方(成年被後見人)でも、判断能力が一時的に回復した時に、医師2人以上の立会いのもとで遺言をすることができます(民法973条) あとで争われにくくする備えの柱は、①公正証書で作る、②作成時期に近い医師の診断書などを残す、③作成のいきさつを記録しておく、の3つです 個別の遺言が有効か無効かの見通しや、争いになった場合の対応は弁護士へ、判断能力の医学的な評価は医師へ相談します 「親が認知症と診断されたけれど、今からでも遺言を作れるのだろうか」「作っても、あとで兄弟から『無効だ』と言われないだろうか」。こうした不安を持つご家族は少なくありません。結論からいうと、認知症の診断があっても、遺言をする時に遺言能力があれば、遺言をすることはできます。ただし、本人が亡くなった後に「あの時はもう判断できなかったはずだ」と争われるおそれがあるため、作り方と記録の残し方に工夫が必要です。この記事では、遺言能力の考え方と、争われにくくするための備えを整理します。 ...

2026年10月21日 · ひぐらしさとし

測量士補試験 試験対策 第23回──公共測量の手続/対空標識の設置/用地測量

問題: 測量法に定める公共測量の手続に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。 ア. 公共測量は、基本測量又は公共測量の測量成果に基づいて実施しなければならない。 ...

2026年10月20日 · ひぐらしさとし