成年後見の「鑑定」とは?──必要になる場合・省略される場合と費用の目安

この記事の要点 後見開始・保佐開始の審判では、家庭裁判所が本人の精神の状況について鑑定をするのが原則。ただし「明らかにその必要がないと認めるとき」は鑑定をしないで審判できる(家事事件手続法第119条第1項・第133条) 補助開始の審判では、条文上は医師その他適当な者の意見を聴くこととされ、裁判所の手引では原則として鑑定によらない扱いと説明されている。ただし必要に応じて鑑定が行われることがある 鑑定の費用は、当事者があらかじめ裁判所に納め、裁判所が金額を決めて鑑定人に支払う仕組み。最高裁判所の統計(令和7年)では、鑑定が行われた事件のうち、鑑定費用が10万円以下のものが約85.8%だった 成年後見の申立てでいう「鑑定」とは、家庭裁判所が専門家(鑑定人)を指定して、本人の精神の状況について判断してもらう手続です。後見と保佐では、法律上は鑑定をするのが原則とされていますが、明らかに必要がないと家庭裁判所が認めるときは省略されます。この記事は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

少額訴訟の判決に納得できないとき|控訴はできず「異議」──期限2週間と異議後の審理の流れ

この記事の要点 少額訴訟の判決には控訴できず、不服があるときは判決をした簡易裁判所に「異議」を申し立てる。期限は電子判決書などの送達を受けた日から2週間の不変期間(民事訴訟法377条・378条1項) 適法な異議があると、訴訟は口頭弁論の終結前の状態に戻り、通常の手続で審理と裁判がやり直される。ただし反訴ができないことなど、一部のルールは引き続き適用される(同法379条) 異議の後に出た判決にも控訴はできず、上級の裁判所に判断を求める道としては、憲法違反を理由とする場合に限って最高裁判所に上告する道が残されているだけ(同法380条) 少額訴訟の判決に納得できない場合、地方裁判所に控訴することはできません(民事訴訟法377条)。用意されているのは、判決をした同じ簡易裁判所に「異議(いぎ)」を申し立てて、通常の手続で審理し直してもらう方法です。通常の判決に対する控訴の仕組みは簡易裁判所の判決に納得できないとき|控訴の期限は2週間・控訴状は簡易裁判所へで整理しましたので、ここでは異議の申立てから、その後の審理と判決までに絞ってご説明します。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

遺留分と事業承継の特例とは──自社株を後継者に集める「除外合意・固定合意」の入口

この記事の要点 自社株を生前贈与で後継者に集めると、相続のときにほかの相続人から遺留分(法律で保障された最低限の取り分)を金銭で請求されるおそれがあります 中小企業の事業承継には、経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法の特例」があり、推定相続人全員と後継者の書面の合意で、贈与した自社株を遺留分の計算から外す(除外合意)か、その価額を合意の時点で固定する(固定合意)ことができます 合意の効力が生じるには、合意から1か月以内に後継者が経済産業大臣の確認を申請し、確認から1か月以内に家庭裁判所へ許可を申し立て、許可を受けることが必要です 対象は「生前贈与」で渡した株式等です。遺言で渡す株式は、この特例の対象ではありません 合意の内容づくりと家族間の調整は弁護士、税金は税理士、株主名簿・定款・登記は司法書士と、役割を分けて進めます 自社株を後継者1人に集中させたい経営者にとって、遺留分は「後から効いてくる」問題です。生前に株式を後継者へ贈与しておいても、経営者が亡くなったとき、ほかの相続人が遺留分を主張すれば、後継者はまとまったお金の支払いを求められることがあります。これに備える制度として、経営承継円滑化法(正式名称「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」)には「遺留分に関する民法の特例」が設けられています。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

真正な登記名義の回復とは──本当の持ち主に名義を戻す登記と、贈与・売買との違い

この記事の要点 「真正な登記名義の回復」とは、登記簿の名義が本当の持ち主と違っているときに、間違った名義を消すのではなく、本当の持ち主へ名義を移す形で直す登記の原因(登記の理由)です。 本来は間違った登記を消す(抹消する)のが基本ですが、抹消には登記上の利害関係のある人(抵当権を持つ銀行など)の承諾が必要です。その承諾が得られない場合などに使われる方法です。 贈与や売買は「権利が新しく移った」ことを記録する登記です。真正な登記名義の回復は「もともと本当の持ち主の権利だった」ことを前提に、名義だけを正しい人に合わせる登記である点が違います。 登録免許税は、相続の税率(1000分の4)ではなく、「その他の原因による移転」の区分として不動産の価額の1000分の20で扱われると考えられます。 権利が実際に順番に移っている(元の持ち主→中間の人→いまの持ち主)のに登記名義が元の持ち主のまま残っている場合に、中間の人を飛ばしてこの方法を使うことは、最高裁判決で認められていません。 真正な登記名義の回復(しんせいなとうきめいぎのかいふく)とは、登記簿に載っている名義が本当の持ち主と食い違っているときに、その名義を本当の持ち主へ移す「所有権の移転の登記」の形で直すときに使われる登記の原因です。登記簿の甲区(所有者の欄)には「原因 真正な登記名義の回復」と記録されます。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

日常生活自立支援事業とは──社会福祉協議会が通帳や支払いを手伝う制度(後見の手前)

この記事の要点 日常生活自立支援事業は、判断能力に不安がある方が地域で暮らし続けられるよう、社会福祉協議会(社協)が本人との契約にもとづいて、福祉サービスの手続きや日々のお金の管理を手伝う公的な事業です 使えるのは、判断能力が十分ではないものの、この事業の契約の内容は判断できると認められる方です。認知症の診断や障害者手帳は要件とされていません 利用料は実施する社協が定めていて、地域によって異なります。契約前の相談と、生活保護を受けている世帯の利用料は無料とされています 成年後見制度のうち家庭裁判所の審判で始まる法定後見とは、始まり方(契約か審判か)や、できることの範囲などが違います 相談先は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会です 日常生活自立支援事業とは、認知症の高齢者や知的障害・精神障害のある方などで判断能力が十分ではない方が、地域で自立した生活を送れるよう、社会福祉協議会が本人との契約にもとづいて、福祉サービスの利用の手続きや、預金の出し入れなど日々のお金の管理を手伝う事業です。家庭裁判所の手続きを経る成年後見制度とは別の、福祉の側の仕組みです。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

測量士補試験 試験対策 第25回──基準点測量/GNSS測量/地図編集

問題: 作業規程の準則に定める基準点測量に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはいくつあるか。 ア. 1級基準点測量及び2級基準点測量は、原則として、結合多角方式により行うものとし、やむを得ない場合に限り単路線方式により行うことができる。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

司法書士試験 試験対策 第76回──弁済/持分会社/債権執行

問題: 弁済に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものはいくつあるか。 ア. 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができず、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときであっても、同様である。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

「過料」「科料」「罰金」の違い──同じ「かりょう」と読んでも、刑罰かどうかが分かれる

この記事の要点 「罰金」と「科料(かりょう)」は刑法9条が列挙する刑罰で、罰金は一万円以上(15条)、科料は千円以上一万円未満(17条)。科されれば、有罪とされたことになる 「過料(かりょう)」は刑法9条の刑の種類に入っていない、刑罰ではない金銭の制裁。相続登記を怠ったときの過料(不動産登記法164条1項)や会社の登記を怠ったときの過料(会社法976条)はこちら これらの過料は刑罰ではないので、刑罰を受けた経歴(いわゆる前科)にはならないが、法律上の義務に違反した結果として裁判所が科す制裁であることに変わりはない 「相続登記をしないと過料」「役員変更の登記を忘れると過料」という言い方を耳にしたとき、「かりょう」と読むのが「過料」なのか「科料」なのか、また罰金と何が違うのか、はっきり区別できる方は少ないと思います。結論から言うと、「罰金」と「科料」は刑罰、「過料」は刑罰ではないという点が、三つを読み分ける軸になります。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

登記の書類に押すのは実印?認印?──印鑑証明書が要る人と、押印が要らない場面

この記事の要点 書面で登記を申請するときは、申請書や委任状に記名押印(名前を書いて印鑑を押すこと)をするのが原則です(不動産登記令16条1項・18条1項)。実印と印鑑証明書が要るのは、主に売買や贈与で名義を渡す側(登記義務者)になる所有権の登記名義人などです。 相続登記で名義を受け取る相続人は、申請書への押印は要りますが印鑑証明書は要らないため、法務省の案内では「認印で可」とされています。一方、遺産分割協議書には、実務上、相続人全員の実印の押印が求められ、印鑑証明書の添付も必要です。 名義を渡す側など印鑑証明書が要る立場でも、登記によって新しく登記識別情報を受け取る側でもない申請人などは、押印せずに署名だけで足りる場合があります(不動産登記規則47条・49条)。 「登記の書類には実印を押すもの」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。結論から言うと、実印が要るのは、その書類に印鑑証明書を付ける必要がある場合で、申請書や委任状では押す人の立場によって分かれます。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

自社株を誰に遺すか──経営者の遺言の書き方と「相続させる」株式の名義書換

この記事の要点 自社株を特定の後継者に渡したいなら、遺言で「どの会社の、どの種類の株式を、何株(または全部)」と特定して書くのが出発点です 後継者が相続人なら「相続させる」と書く遺言が一般的です。この場合、株式に譲渡制限(会社の承認がないと譲渡できない定め)があっても、会社の承認を受けずに株主名簿の名義書換を請求できます(会社法134条4号) 遺言執行者(遺言の内容を実現する役目の人)を遺言で決めておくと、名義の書き換えなどの手続きを進める役を担える場面があります 株主名簿の名義書換は会社の中の手続きで、登記ではありません。亡くなった経営者が取締役・代表取締役だった場合は、役員の変更登記が別に必要です(2週間以内) 株の値段の評価や相続税は税理士、遺留分(最低限の取り分)をめぐるもめごとは弁護士、公正証書遺言の作成は公証人の役割です 経営者が遺言を残さずに亡くなると、自社株は相続人全員で共有する状態(「準共有」)になり、遺産分割がまとまるまで株主としての権利を使うことにも手間がかかります。これを避けるもっとも基本的な備えが、遺言で「誰に」「どの株式を」渡すかを決めておくことです。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし