養子縁組があると戸籍はどう動く?──相続で実方の戸籍までさかのぼる理由

この記事の要点 養子縁組をすると、養子は原則として養親の戸籍に入り(戸籍法18条3項)、それまでいた実父母の戸籍からは除籍される 被相続人の戸籍を死亡から出生までさかのぼる作業で「養子」の記載に行き当たったら、その戸籍だけでは足りず、縁組前に在籍していた実方の戸籍も別途取得する必要がある 普通養子縁組は実方との親族関係が続くため実方の血族も相続人になりうるが、特別養子縁組では原則として実方との親族関係が終了し、相続人の範囲が変わる(連れ子を特別養子とした場合の例外あり) 結論から言うと、養子縁組があると戸籍は「乗り換え」が起きます。養子は養親の戸籍に入るのが原則で(戸籍法18条3項「養子は、養親の戸籍に入る。」)、氏も養親の氏を称します(民法810条本文)。戸籍は一人につき一つの籍に在籍する仕組みですから、養親の戸籍に入るということは、それまで在籍していた実父母の戸籍からは除籍される、ということでもあります。なお、これには例外があり、婚姻によって氏を改めた人は、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は養親の氏を称しません(民法810条ただし書)。戸籍はもともと、同じ氏を称する夫婦とその子を単位として編製される仕組みですから、縁組をしても氏が変わらないのであれば、養親の戸籍に入ることにもなりません。たとえば妻の氏を称して婚姻した夫が妻の父母の養子となる、いわゆる婿養子の縁組では、夫婦の戸籍に在籍したままとなり、縁組の事実はその戸籍の身分事項欄に記載されるだけで、戸籍の「乗り換え」は起きません。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

亡くなった方の銀行口座を解約するには──凍結から相続手続き完了までの流れ

この記事の要点 銀行は名義人の死亡を知った時点で口座を凍結し、以後は相続人であっても自由に出金できなくなる 解約・払い戻しには戸籍一式や遺産分割協議書など複数の書類が必要で、金融機関への連絡から完了まで数週間から数か月かかることが多い 口座数が多い場合は法定相続情報証明制度を使うと、戸籍の束を出し直す手間を減らせる 銀行口座の名義人が亡くなると、口座は解約や払い戻しの手続きを経て初めて相続人が受け取れる状態になります。それまでの間、口座は「凍結」され、家族であっても自由に引き出すことはできません。ここでは、凍結が始まるタイミングから解約完了までの一般的な流れを整理します。 ...

2026年8月13日 · ひぐらしさとし

分籍とは?──自分の意思で戸籍を分けると、相続の戸籍集めはどう変わるか

この記事の要点 分籍とは、成年に達した人が自分の意思で届け出て、それまでの戸籍から抜けて新しい戸籍を単独で作ること 分籍をすると、転籍や改製のときと同じく「戸籍が区切られる」。新しい戸籍に、それ以前の戸籍の記載がそのまま引き継がれるわけではない 被相続人が生前に分籍していた場合、死亡時の戸籍だけでは兄弟姉妹の有無が分からず、分籍前の戸籍まで遡って集める必要がある 本文 分籍をしたことがある方が亡くなった場合、相続の戸籍集めでは死亡時の戸籍だけでは足りません。分籍する前の戸籍まで、さらに遡って取り寄せる必要があります。 ...

2026年8月9日 · ひぐらしさとし

「除籍謄本」とは?──戸籍謄本との違いと、相続登記で必要になる理由

この記事の要点 除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて閉鎖された戸籍の写し 「今も誰かが在籍している戸籍」の写しである戸籍謄本とは別の書類で、保存の仕方も呼び方も異なる 相続登記では、被相続人の死亡から出生までを切れ目なくたどる必要があり、その過程で除籍謄本や改製原戸籍が必要になる 本文 相続の手続きを進めていると、市区町村の窓口や案内文で「戸籍謄本」だけでなく「除籍謄本」という言葉に出会います。結論から言うと、除籍謄本とは、記載されていた人が全員その戸籍から抜けて、戸籍としての役目を終えたものの写しです。 ...

2026年8月5日 · ひぐらしさとし

戸籍の「身分事項欄」の読み方──婚姻・養子縁組・認知の記載から相続人を読み取る

この記事の要点 続柄欄が「その人の立ち位置」を示すのに対し、身分事項欄は「その人にいつ何が起きたか」という出来事の記録を示す欄 認知は父と子の双方、普通養子縁組は養親と養子の双方、婚姻・離婚は夫と妻の双方の身分事項欄に記載される(戸籍法施行規則35条) そのため、被相続人自身の戸籍の身分事項欄をたどることで、認知した子・養子縁組した子・前の婚姻の存在といった相続人確定に直結する事実を拾える 本文 結論から言うと、相続人を確定する作業では、続柄欄と身分事項欄を役割分担で読み分けるのが基本です。戸籍の「続柄」欄の読み方で扱ったとおり、続柄欄はその人が父母や筆頭者から見てどの続き柄にあたるかという「立ち位置」を示す欄です。これに対して身分事項欄は、出生・婚姻・離婚・養子縁組・離縁・認知・死亡といった「その人の身の上に起きた出来事」を、日付とともに記録していく欄です。相続人の範囲を左右する事実の多くは、続柄欄ではなく身分事項欄に現れます。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

相続関係説明図の書き方──法定相続情報一覧図との違いと、戸籍を返してもらう仕組み

この記事の要点 相続関係説明図は、相続登記の申請書に添えて出す図です。これを出しておくと、一緒に提出した戸籍・除籍の原本を、登記の調査が終わった後に返してもらえると法務局が案内しています 法定相続情報一覧図は、法務局に申し出て登記官の認証文が付いた写しを無料で交付してもらう証明書です。戸籍の束そのものの代わりとして、他の法務局・金融機関・年金の手続にも使えます ひとことで言うと、相続関係説明図=戸籍を返してもらうための添え物/法定相続情報一覧図=戸籍の束の代わりになる証明です。似た形の図ですが、位置づけがまったく違います 相続関係説明図には決まった様式はなく、法務局が相続登記の申請書の記載例のなかで見本を公表しています(被相続人は住所・死亡年月日、相続人は住所・出生年月日を書く形) 一覧図そのものの書き方(様式・記載例・不備で戻される例)は法定相続情報一覧図の作り方にまとめています。**この記事は「2つの図の役割の違い」と「相続関係説明図の書き方」**を扱います 相続登記を自分で進めようとすると、「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」という、名前も見た目も似た2つの図が出てきます。どちらも家系図のような形をしていて、亡くなった方と相続人を線でつないだものです。 ...

2026年8月1日 · ひぐらしさとし

外国籍になった相続人がいるとき──宣誓供述書と必要書類

この記事の要点 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、相続人としての地位は失われません。変わるのは、そろえる書類の中身です 日本人が外国籍を取得して日本国籍を失うことは「国籍喪失」(国籍法11条1項)または「国籍離脱」(同13条)と呼びます。「帰化」は逆方向、つまり外国人が日本国籍を取得する場合の言葉です(同4条) 在外公館(大使館・総領事館)の署名証明(サイン証明)・在留証明は、日本国籍を有する方向けの制度です。外国籍になった方は原則として発給の対象外とされています 印鑑証明書の代わりとして、現地の公証人などが認証した**宣誓供述書(せんせいきょうじゅつしょ/affidavit)**の提出を求められることがあります 求められる書類・記載事項は提出先によって違います。着手前に管轄の法務局へ事前照会するのが確実です 相続人が日本国籍を失って外国籍になっていても、その方が相続人であることは変わりません。 「相続人の一人が、何年も前に外国の国籍を取得していて、いまは日本国籍ではない」というケースで、まず押さえておきたいのがこの点です。手続きで変わるのは、本人であることや住所をどう証明するか、つまり「そろえる書類」の中身だけです。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

法定相続情報一覧図の作り方──書式・記載例・やり直しになりやすい例

この記事の要点 一覧図に必ず書くのは「亡くなった方の氏名・生年月日・最後の住所・死亡年月日」と「相続開始のときの同順位の相続人の氏名・生年月日・続柄」(不動産登記規則247条1項1号・2号。このほか作成の年月日と記名が必要)。相続人の住所や被相続人の最後の本籍は、任意で記載できる項目です(ただし住民票の除票が市区町村で廃棄されていて最後の住所を確認できないときは、住所に代えて最後の本籍を記載します) 様式は法務局が公表しているひな型から、相続人の組み合わせに合うものを選べばよい(配偶者と子/子のみ/配偶者と父母/配偶者と兄弟姉妹/代襲相続/旧民法下の相続/養子を含む場合/列挙形式) 相続分や遺産分割の結論は記載事項に入っていないので、書き込まない やり直しになりやすいのは「戸籍が出生時までそろっていない」「続柄を『子』とだけ書いた」「住所を書いたのに住所を証する書面を付けていない」の3つ 制度そのもののしくみ・申出先・メリットは法定相続情報証明制度をやさしく解説にまとめています。この記事は「図を実際にどう書くか」の実践編です 法定相続情報一覧図は、書く項目が法令で決まっている書面です。家系図のように見えますが、自由に情報を足していい図ではありません。不動産登記規則247条1項各号に挙げられた項目を正確に書き、そこに挙げられていない事情(相続分や遺産分割の結論)は足さないのが基本です。相続人の住所や被相続人の最後の本籍、作成者の住所のように、法務局の様式・記載例が記載を認めている(または求めている)項目は別です。各号の項目を外すと、登記官から直すよう求められて出し直しになります。 ...

2026年7月31日 · ひぐらしさとし

改製原戸籍の読み方──「はらこせき」で手が止まったら見るポイント

この記事の要点 改製原戸籍は「戸籍事項欄 → 筆頭者・戸主 → 各人の身分事項欄」の順に見ると読みやすくなります。最初に見るのは名前ではなく日付です。 線が引かれて消してある記載こそ読んでください。 その線は「この人はこの戸籍から抜けました」という印で、消された内容自体は有効な情報です。 改製のときに新しい戸籍へ書き写されるのは、決められた事項だけです。すでに終わった婚姻・養子縁組などは書き写されません(戸籍法施行規則39条1項)。だから改製原戸籍を見ないと相続人が漏れます。 手数料の標準額は改製原戸籍謄本1通750円(実際の額は各市区町村の条例によります)。 読めない、つながっているか分からない、と感じたらお近くの司法書士にご相談ください。 この記事は「読み方」の話です 結論から書きます。改製原戸籍(かいせいげんこせき)は、上から順に読もうとすると必ず迷子になります。見る順序を決めて、日付から入るのが早道です。 ...

2026年7月30日 · ひぐらしさとし

転籍があると戸籍の記載は引き継がれない──相続で古い戸籍まで必要になる理由

この記事の要点 転籍とは本籍地を移すことで、他の市町村に移すと転籍先で新しい戸籍が作られる 新しい戸籍には、すでにその戸籍から抜けている人(除籍された人)の記載が引き継がれない そのため、転籍後の戸籍だけを見ても相続人が分からず、出生まで遡って戸籍を集める必要がある 本文 他の市町村へ転籍すると、その戸籍からすでに抜けた人の記載は、新しく作られる戸籍に引き継がれません。相続手続きで「いま手元にある戸籍だけでは足りない」と言われるのは、これが理由のひとつです。 ...

2026年7月28日 · ひぐらしさとし