問:A所有の甲土地(要役地)の通行のためにB所有の乙土地(承役地)に地役権を設定する場合、地役権の登記はどの不動産の登記記録に行い、地役権図面の添付はどのような場合に必要となるか。
答:地役権の設定登記は、承役地(乙土地)の登記記録の権利部に「地役権設定」として行う。要役地(甲土地)には登記官の職権で地役権の登記がされる。地役権の範囲が承役地の一部に及ぶ場合は、地役権図面の添付が必要となる。
解説:
- 不動産登記法80条1項:地役権の設定の登記の登記事項として、要役地、地役権設定の目的、範囲、地役権の特約等が規定されている。
- 同条4項:登記官は、承役地に地役権の設定登記がされたときは、職権で要役地の登記記録の地役権の登記事項として要役地である旨を記録する(要役地の登記)。
- 不動産登記令の別表(地役権設定登記の項):地役権の範囲が承役地の一部であるときは、地役権図面を添付情報とする旨が規定されている。
- 不動産登記規則79条:地役権図面の作成基準(縮尺・記載事項)。
- 民法280条:地役権は要役地の便益のために承役地に設定される物権。
- 民法281条:地役権の付従性・随伴性──要役地の所有権に従い、要役地と運命を共にするため、要役地の所有権が移転すれば地役権も移転する(要役地の登記名義人の変更があれば地役権も付従的に移転)。
- 地役権の存続期間や報償の特約、共有要役地の場合の取扱い等についても登記事項となる。
問:土地家屋調査士は、その業務の補助のために補助者を使用することができるが、その根拠規定および補助者使用の届出先はどこか。
答:土地家屋調査士法施行規則23条が補助者の根拠規定。補助者の使用については、所属する土地家屋調査士会の会則の定めるところにより当該調査士会に届け出る運用となる。
解説:
- 土地家屋調査士法施行規則23条:調査士は、その業務の補助をさせるため、補助者を置くことができる。
- 土地家屋調査士法24条は 会則遵守義務 に関する規定(「調査士は、その所属する調査士会及び調査士会連合会の会則を守らなければならない」)であり、補助者の根拠条文ではない点に注意。条文番号を取り違えやすい。
- 補助者の使用の届出先・届出方法は、各単位会(所属する土地家屋調査士会)の会則によって定められており、原則として 所属する土地家屋調査士会への届出 が運用上の基本となる。
- 補助者は調査士の 指導・監督 の下で業務を補助する立場であって、独立して調査士業務(不動産の表示に関する登記の代理等)を行うことはできない。
- 補助者の使用を開始したときだけでなく、変更(補助者の交替)・廃止のときも届出が必要なのが通例。
- 業界実務では、補助者証の交付・回収は所属会の会則で定められ、補助者は業務時に補助者証を携帯することが通例となる。
- 調査士法人においても、社員以外の使用人として補助者の届出が同様に必要。
問:建物を築造する場合、隣地境界線から50cm以上の距離を保つことが原則として民法上必要とされている(民法234条1項)。これに違反して建築が始められた場合、隣地所有者はいつまで建築の中止または変更を請求できるか。
答:建築に着手したときから1年を経過し、または建物の完成があるまでの期間に限られる。1年経過後または完成後は、損害賠償の請求のみができる(民法234条2項)。
解説:
- 民法234条1項:建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければならない。
- 同条2項本文:違反した場合、隣地所有者はその建築を中止させ、または変更させることができる。
- 同条2項ただし書:建築に着手したときから1年を経過し、または建物の完成があった場合は、損害賠償の請求のみができる。
- ここでの「建築に着手したとき」「建物の完成」の基準時の判定が試験頻出論点。判例上、「建築に着手したとき」は基礎工事の開始時とされる。
- 民法236条:異なる慣習がある場合、その慣習に従う(地域慣習による境界接続建築の許容など)。
- 関連改正の整理:民法234条そのものは令和3年改正(令和5年4月1日施行)の対象外だが、同時期に隣接する民法209条(隣地使用権)・233条(枝・根の取扱い)は改正されている。相隣関係を体系的に整理するときは、改正の射程を取り違えないこと。
- 建築基準法65条との関係:防火地域・準防火地域内における外壁が耐火構造の建築物については、隣地境界線に接して建築できる。判例(最判平成元年9月19日民集43巻8号955頁)は、建築基準法65条が適用される建築物については民法234条1項は適用されない旨を判示しており、建築基準法65条が 特則 として位置づけられる。
- 受験対策上は、「中止・変更請求権」と「損害賠償請求権」の使い分け、建築基準法65条の特則性、慣習による例外(民法236条)の3点をセットで押さえる。
問:既知点 $A(X_A = 100.000,\mathrm{m},\ Y_A = 200.000,\mathrm{m})$ から、方向角 $T = 60°$、距離 $S = 50.000,\mathrm{m}$ の位置にある点 $P$ の座標 $(X_P, Y_P)$ を、計算式とともに求めよ(測量座標系:X軸は北、Y軸は東、方向角は北方向を0°として右回り)。
答:
$$ X_P = X_A + S \cos T = 100.000 + 50.000 \times \cos 60° = 100.000 + 25.000 = 125.000,\mathrm{m} $$
$$ Y_P = Y_A + S \sin T = 200.000 + 50.000 \times \sin 60° = 200.000 + 50.000 \times 0.86603 = 200.000 + 43.301 = 243.301,\mathrm{m} $$
よって、$P$ の座標は $(X_P, Y_P) = (125.000,\ 243.301),\mathrm{m}$。
解説:
- 既知点から方向角・距離で未知点を求める計算を 放射計算(極座標から直交座標への変換)と呼ぶ。
- 公式:$X_P = X_A + S \cos T$、$Y_P = Y_A + S \sin T$
- 測量座標系の慣行:X軸を北、Y軸を東とする(数学座標系とは X・Y の役割が入れ替わる点に注意)。方向角は北方向を 0° として時計回りに測る。したがって東方向は 90°、南方向は 180°、西方向は 270°。
- $\cos 60° = 0.50000$、$\sin 60° = \dfrac{\sqrt{3}}{2} = 0.86602540\ldots$
- 計算上の桁数:方向角・距離の有効数字に従い、座標値は 小数点以下3桁(mm単位) で表記するのが地積測量図の運用に合致する。
- 検算(直線距離):
$$ \sqrt{(X_P - X_A)^2 + (Y_P - Y_A)^2} = \sqrt{25^2 + 43.301^2} = \sqrt{625 + 1{,}875.0} = \sqrt{2{,}500.0} = 50.000,\mathrm{m} $$
距離が一致するため、計算結果は妥当である。本試験では関数電卓を用いて三角関数値を直接読み出して計算するのが一般的(土地家屋調査士試験では、プログラム機能のない関数電卓を2台まで持ち込み可)。
問:建物の表題登記を申請するときに添付する 建物図面 の記載事項として、不動産登記規則上、原則的に求められるものを4項目以上挙げよ。また、建物図面の縮尺は原則何分の1か。
答:記載事項:(1)建物の位置(敷地に対する形状・配置)、(2)方位(北の方位)、(3)縮尺、(4)申請人の氏名、(5)作成の年月日、(6)作成者の氏名(資格者代理人が作成した場合)、(7)敷地の地番、(8)隣接地の地番。縮尺は原則 500分の1。
解説:
- 不動産登記規則82条:建物図面の記載事項として、方位・縮尺・敷地(地番および形状)・隣接地の地番・附属建物の区分と符号などが規定されている。
- 同条:建物図面の縮尺は、原則として 500分の1。ただし、建物の状況その他の事情によりこの縮尺によることが適当でないときは、これと異なる縮尺により作成することができる旨の例外規定が置かれている。
- 建物図面の機能は 「敷地に対する建物の位置関係」を示すこと。これに対して 各階平面図 は建物自体の各階の形状・床面積算出を示す図面で、両者は機能・縮尺が異なる。
- 建物図面:縮尺500分の1、敷地と建物の位置関係を示す
- 各階平面図(不動産登記規則83条):縮尺250分の1、建物の各階の形状・床面積を示す
- 区分建物の表題登記では、一棟の建物の建物図面と各階平面図、加えて専有部分の各階平面図が必要となる(不動産登記法48条以下)。
- 建物図面の作成において、敷地境界線・隣地地番を正確に表記することは、建物の現地特定のために重要であり、表題部所有者と隣地所有者との間のトラブル防止にも資する。
- 作成者の表示として、土地家屋調査士が代理作成した場合は調査士の事務所所在地・氏名・登録番号を記入する運用。
出題分野の振り分け
| 問 | 科目 | 主題 | 主要根拠 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示・権利) | 地役権の設定登記と地役権図面の添付要件 | 不動産登記法80条1・4項/不動産登記令別表(地役権設定)/不動産登記規則79条/民法280・281条 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 補助者制度(根拠規定と届出先) | 土地家屋調査士法施行規則23条/所属調査士会の会則 |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 境界線付近の建築(50cm離隔)と請求権の期間制限 | 民法234条1・2項/236条/建築基準法65条/最判平1.9.19民集43巻8号955頁 |
| 第4問 | 測量計算 | 放射計算(方向角・距離からの座標展開) | 平面直角座標系の方向角規約/三角関数計算 |
| 第5問 | 作図書式 | 建物図面の記載事項と縮尺 | 不動産登記規則82条(建物図面)/同規則83条(各階平面図) |