問:A所有の甲土地上にA所有の乙建物がある状態で、甲土地と乙建物の双方に同一順位で同一の抵当権者を共同抵当として抵当権が設定された後、乙建物が取り壊されて新たに丙建物がAによって建築された。その後、共同抵当権の実行により甲土地のみが競売され、Aと異なる者が買受人となった場合、丙建物のために法定地上権(民法388条)は成立するか。

答:原則として成立しない。

解説:

  • 民法388条は、土地・建物が同一所有者に属する場合に、抵当権設定後に競売により所有者を異にするに至ったとき、建物のために法定地上権が成立する旨を規定する。
  • 設例のように 共同抵当が設定された旧建物が取り壊され、新建物が再築されたケース については、最判平成9年2月14日民集51巻2号375頁が、「土地と建物の双方に共同抵当を設定した抵当権者は、土地について法定地上権の負担のない更地としての担保価値を把握していたと解されるから、新建物について法定地上権の成立を認めると、抵当権設定時に把握していた担保価値が著しく害されることになる」として、原則として法定地上権の成立を否定 する立場を示した。
  • もっとも、同判例は「新建物の所有者が土地の所有者と同一であって、新建物について従前の建物と同順位の共同抵当権が設定されたなどの特段の事情がある場合は別である」と述べており、例外の余地を残している。
  • これに対して、土地のみに抵当権が設定された後に建物が再築された場合(単独抵当のケース)の判例(最判昭和52年10月11日民集31巻6号785頁)は、新建物について法定地上権の成立を認める立場であり、共同抵当の場合と区別される。
  • 共同抵当では「全体価値考慮説(同一順位再築の特段事情があれば成立)」、単独抵当では「個別価値考慮説(原則成立)」と整理されるのが受験対策上の通説的整理。

問:抵当権の順位変更の登記(不動産登記法89条)の申請にあたり、当該順位変更によって順位が下がる抵当権者から見た転抵当権者は、利害関係人として承諾を要するか。

答:要する。

解説:

  • 民法374条1項:抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。
  • 同条2項:前項の順位の変更は、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければ、その効力を生じない。
  • ここで「順位変更の当事者」は順位変更の対象となる抵当権者全員(その合意は実体要件)。一方、「利害関係人」は順位変更によって新たな不利益を被る第三者を指す。
  • 順位が下がる抵当権者の 転抵当権者 は、原抵当権の順位下降により担保価値が劣後するため、典型的な利害関係人である(昭和46年12月27日付 法務省民事局長依命通知ほか、順位変更登記の事務取扱に関する運用通知)。
  • 不動産登記法89条1項は、登記申請にあたり「利害関係を有する第三者の承諾を証する情報」を添付情報とする旨を定めている(添付情報の具体は不動産登記令の別表で規定)。
  • なお、順位変更の対象抵当権者の差押債権者・仮差押債権者は、順位変更による直接の不利益が観念しにくいため、原則として利害関係人に当たらない(学説)と整理される。

問:取締役会設置会社でない非公開会社(株式譲渡制限会社)において、定款で取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までに伸長している場合、監査役の任期も定款で同様に10年まで伸長することができるか。

答:できる。

解説:

  • 会社法336条1項:監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までである。
  • 同条2項:「公開会社でない株式会社」は、定款によって、監査役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができる。
  • 取締役の任期について会社法332条1項本文は2年と定め、同条2項で非公開会社は10年まで伸長可とする。
  • したがって、非公開会社では取締役・監査役のいずれも、定款の定めにより10年まで任期を伸長することができる。
  • ただし、監査役の任期は原則として短縮できない(会社法336条1項。任期保障の趣旨)点に注意。取締役の任期短縮は認められる(会社法332条1項ただし書、同条3項以下)が、監査役については定款による単純な短縮規定が認められない。例外として、非公開会社では「補欠として選任された監査役の任期を、退任した監査役の任期の満了する時までとする」旨を定款で定めることは可能(会社法336条3項)であり、これは終期合わせの特則として位置づけられる。
  • 商業登記の実務では、定款変更による任期伸長があっても、現任の監査役の任期がただちに伸長されるかどうかは定款の経過規定により決まる。改任時から新任期が適用されるのが通例であり、登記実務でも改選登記の時点で新任期が反映されることになる。

問:被告に補助参加した者が、当該訴訟において被告が敗訴した場合、後の訴訟において補助参加人と被参加人との間で、当該前訴判決はどのような効力を有するか。

答:参加的効力(民事訴訟法46条)が及ぶ。

解説:

  • 民事訴訟法42条:補助参加(訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため訴訟に参加することができる)。
  • 民事訴訟法46条:補助参加に係る訴訟の裁判は、当該訴訟において補助参加人がしたまたはすることのできなかった訴訟行為について、被参加人と補助参加人との間で、判決の効力(参加的効力)を生ずる。ただし、同条各号の例外(被参加人が訴訟行為を妨げた場合等)に該当するときは効力を生じない。
  • この参加的効力は、判決主文に表示された訴訟物に関する判断のみならず、被参加人の敗訴の原因となった理由中の判断にも及ぶとするのが判例の立場(最判昭和45年10月22日民集24巻11号1583頁)。理由中の判断のうち、敗訴を直接導いた部分を中心に効力が及ぶと整理される。
  • 既判力(民訴法115条1項)とは性質が異なり、参加的効力は 被参加人と補助参加人との間にのみ生じる 一方で、理由中の判断にも及ぶ という二重の特殊性をもつ。これは「敗訴責任の公平な分担」という制度趣旨から導かれる。
  • 補助参加人は、被参加人の利益のために必要な訴訟行為をすることができるが、被参加人の訴訟行為と抵触する行為(自白の撤回・上訴の取下げ等)はできない(民訴法45条2項)。

問:弁済供託は、原則としてどこの供託所に対して行うべきか。

答:原則として、債務の履行地の供託所。

解説:

  • 民法495条1項:弁済供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
  • 「債務の履行地」は実体法上の弁済場所を指すから、特約がなければ民法484条1項により決定される。
  • 民法484条1項:特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所 において、それぞれしなければならない(持参債務原則)。
  • 通常の金銭債務は持参債務であるから、債権者の現在の住所地の管轄供託所 が供託地となる。なお、民法484条1項は平成29年改正により現行の文言に整理された(特定物の引渡しは「債権発生の時に物が存在した場所」と明確化)。
  • 例外として、当事者間に契約による履行地の指定(別段の意思表示)がある場合、その指定地の供託所となる(民法484条1項本文ただし書部分の「別段の意思表示」)。
  • また、事実たる慣習(民法92条)や商慣習(商法1条2項)により取立債務化が認められる場合もあり、その場合は債務者の住所地が履行地となる。
  • 不動産関連債務(賃料等)の弁済地は、契約・慣習・取立金集金の運用などにより事案ごとに分かれる。
  • なお、債権者を確知することができないことを供託原因とする場合(民法494条2項)でも、債務の履行地の供託所への供託となる点は変わらない(債権者の住所が不明であっても、供託所は債務の履行地の管轄)。

出題分野の振り分け

科目 主題 主要根拠
第1問 民法(担保物権) 共同抵当下の法定地上権の再築建物への成否 民法388条/最判平9.2.14民集51巻2号375頁
第2問 不動産登記法 順位変更登記の利害関係人(転抵当権者) 民法374条1・2項/不動産登記法89条
第3問 商業登記法(会社法) 非公開会社の監査役の任期伸長 会社法336条1・2項/同法332条1・2項
第4問 民事訴訟法 補助参加の参加的効力(理由中の判断にも及ぶ) 民訴法42条・45条・46条/最判昭45.10.22民集24巻11号1583頁
第5問 供託法・民法 弁済供託の供託地 民法484条1項・495条1項/持参債務原則