第1問
問: A土地(地番1番1)とB土地(地番1番2)の合筆登記を申請したい。両土地ともに同一銀行を抵当権者とする抵当権設定登記がある。両抵当権について、どのような事項が一致していれば合筆登記が可能か。
答: 登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号、登記原因及びその日付のすべてが同一であることが必要(不動産登記規則105条2号)。
解説: 不動産登記法41条6号は、「所有権の登記以外の権利に関する登記がある土地の合筆の登記」は原則としてすることができないと定める。
ただし、不動産登記規則105条が例外を規定しており、同条2号は抵当権・先取特権・質権といった担保権の登記であって、
- 登記の目的(例:「抵当権設定」)
- 申請の受付年月日及び受付番号
- 登記原因(例:「年月日金銭消費貸借年月日設定」)
- 登記原因の日付
のすべてが同一である場合には、合筆登記を妨げないと定めている。
実務的には、「同一銀行で同日設定」というだけでは足りず、受付番号まで同一である必要がある。これは、同一申請書で複数土地に対する抵当権設定を一括申請して受付番号を共通化させる工夫が必要となることを意味する。既存の別個申請の抵当権では合筆できないため、合筆前に抵当権者と協議し、(1)被担保債権を整理して抹消後に合筆、(2)抵当権を解除して合筆後に再設定、等の対応が必要となる。
なお、同条1号は「承役地についてする地役権の登記」、同条3号は「信託の登記であって信託目録の番号が同一のもの」、同条4号は鉱害賠償登録を例外とする。
第2問
問: 土地家屋調査士法3条1項に列挙される調査士の業務のうち、法務大臣の認定(特別研修の修了考査合格)を受けた者でなければ行うことができない業務を2つ挙げよ。あわせて、それらの業務範囲の特徴的な制限について述べよ。
答:
- 筆界特定の手続についての代理(土地家屋調査士法3条1項4号)
- 筆界が現地においてどこに存在するかについての民事に関する紛争(境界に関する民間紛争解決手続=ADR)における代理(同条1項7号)
これらは土地家屋調査士法3条2項により、法務大臣が指定する特別研修の課程を修了し、修了考査に合格したうえで法務大臣の認定を受けた認定調査士でなければ行うことができない。
解説: 土地家屋調査士法3条1項は調査士の業務として、不動産の表示に関する登記の調査・測量・申請代理・書類作成のほか、筆界特定の代理・書類作成、境界ADRの代理・書類作成等を列挙する。このうち、**筆界特定の代理(4号)および境界ADRの代理(7号)**は、3条2項の認定を受けた者(認定調査士)でなければ行うことができない。
業務範囲の特徴的な制限として、
- 対象は「筆界」紛争に限定:所有権界(境界線そのものの帰属)に関する民事紛争は弁護士の専属業務であり、認定調査士の代理権限は地番と地番との境を画する公法上の筆界の特定に限られる
- ADRは弁護士との共同受任が必要:ADRにおける代理は、紛争目的物の価額が一定額を超えるものについて、弁護士との共同受任が必要となる場合がある(土地家屋調査士法3条1項関連号、同条2項)
- 実体法上の所有権の判断には及ばない:筆界はあくまで「公法上の境」であり、所有権の帰属判断は弁護士の業務範囲
これは弁護士法72条との業際を画する重要論点で、本試験では「認定調査士でない一般の調査士は何ができないか」という形でも問われる。
なお、認定調査士の修了考査合格率は概ね6〜7割で推移しており、特別研修の修了は必須要件である点を押さえておきたい。
第3問
問: A所有の竹木の枝が隣地B所有の土地に越境している。Bは、令和3年改正後の民法233条に基づき、自らその越境した枝を切り取ることができる場合が新設された。Bが自ら切除できる場合を3つ挙げ、根(地中の根)と枝の取扱いの違いを整理せよ。
答: Bが自ら越境した枝を切り取ることができる場合(民法233条3項):
- 竹木の所有者Aに枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当の期間内に切除しないとき(同項1号)
- 竹木の所有者Aを知ることができず、又はその所在を知ることができないとき(同項2号)
- 急迫の事情があるとき(同項3号)
根は従来どおり、隣地権者が自ら切り取ることができる(同条4項。改正前は同条2項)。
解説: 改正前の民法233条は、隣地から越境してきた枝については「所有者にその枝を切除させることができる」とのみ規定し、隣地権者が自ら切除することは認められていなかった。所有者が応じない場合は、訴訟により切除を命ずる判決を得て強制執行する必要があり、実務上の負担が大きかった。
令和3年民法等改正(令和5年4月1日施行)により、民法233条3項が新設され、隣地権者が自ら切除できる3類型が定められた。同改正では、民法233条2項として「竹木が共有である場合は、各共有者が単独で越境枝を切除できる」旨も新設された点もあわせて押さえたい。
| 規定 | 対象 | 隣地権者の自力救済 |
|---|---|---|
| 改正後233条1項 | 枝 | 原則:所有者に切除させる |
| 改正後233条2項(新設) | 共有竹木の枝 | 各共有者が単独で切除可 |
| 改正後233条3項(新設) | 枝 | 例外3類型の場合は自ら切除可 |
| 改正後233条4項 | 根 | 自ら切り取ることができる(変更なし) |
枝と根の違いは、所有権の構造に由来する。枝は竹木所有者の所有物のままなのに対し、根は土地に付合するとの考え方の対比から、根については従来から自由な切除が認められていた。改正後も根の規律は維持されている。
なお、「急迫の事情」の典型例として、台風で枝が建物や電線に倒れかかり危険な状況、放置すると重大な損害が生じる状況等が挙げられる。
切除費用の負担については、枝の所有者(A)が負担すべきと解されており、Bが自ら切除した場合、不当利得返還請求等によりAに費用を求償できると考えるのが一般的である。
第4問
問: 4点 $P_1(100.00, 200.00)$、$P_2(180.00, 220.00)$、$P_3(220.00, 290.00)$、$P_4(140.00, 320.00)$ により囲まれる土地の面積を、座標法(倍面積法)により求めよ(単位 m²、小数第2位まで)。各点は反時計回りに番号が振られているものとする。
答: 7,800.00 m²
解説:
座標法(倍面積法)の式は次のとおり:
$$ 2A = \left| \sum_{i=1}^{n} x_i (y_{i+1} - y_{i-1}) \right| $$
ここで、添字は循環的に扱う($y_{n+1} = y_1$、$y_0 = y_n$)。
各項を計算する:
$$ \begin{aligned} x_1(y_2 - y_4) &= 100.00 \times (220.00 - 320.00) = 100.00 \times (-100.00) = -10{,}000.00 \ x_2(y_3 - y_1) &= 180.00 \times (290.00 - 200.00) = 180.00 \times 90.00 = 16{,}200.00 \ x_3(y_4 - y_2) &= 220.00 \times (320.00 - 220.00) = 220.00 \times 100.00 = 22{,}000.00 \ x_4(y_1 - y_3) &= 140.00 \times (200.00 - 290.00) = 140.00 \times (-90.00) = -12{,}600.00 \ \end{aligned} $$
合計:
$$ -10{,}000.00 + 16{,}200.00 + 22{,}000.00 - 12{,}600.00 = 15{,}600.00 $$
したがって、
$$ A = \frac{15{,}600.00}{2} = 7{,}800.00 \text{ m}^2 $$
実戦上のチェックポイント:
- 回転方向:反時計回りなら $\sum x_i(y_{i+1} - y_{i-1})$ は正、時計回りなら負になる。絶対値をとれば結果は同じだが、符号で図形の回転方向を検算できる
- 閉合の確認:始点と終点が一致しているか、座標値の入力ミスがないかを必ず確認
- 倍面積の検算:三斜法など別の手法でクロスチェックすると安心。台形分割法(座標を踏まえた台形面積の和)でも同じ結果になる
- 電卓の使い分け:本試験では関数電卓2台までの持込みが認められている(プログラム機能不可)。複雑な座標計算では、メモリ機能と括弧計算を活用して入力ミスを減らすのが王道
中級者は、座標法の倍面積式を反射的に書けること、及び符号と回転方向の対応を即座に判断できることが、書式試験の得点源となる。
第5問
問: 分筆登記の申請に添付する地積測量図に記載すべき事項として、不動産登記規則77条に列挙される項目のうち、(1)「筆界点間の距離」、(2)「基本三角点等に基づく測量の成果(座標値)」、(3)「平面直角座標系の番号又は記号」のそれぞれの意義と、令和2年改正以降の運用上のポイントを述べよ。
答:
(1) 筆界点間の距離:分筆後の各土地について、隣接する筆界点を結ぶ直線の長さを記載する事項。座標値からの計算値を記載するのが実務である。 (2) 基本三角点等に基づく測量の成果(座標値):分筆登記等の地積測量図には、原則として、基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値を記載しなければならない。 (3) 平面直角座標系の番号又は記号:国土調査法施行令2条1項1号に規定される平面直角座標系(19系統)のうち、当該土地が属する系の番号又は記号を記載する。
解説: 不動産登記規則77条は地積測量図の記載事項を定めており、おおむね次の項目が記載必須となる。
- 地番区域の名称
- 方位
- 縮尺
- 地番(隣接地の地番を含む)
- 地積、求積方法、筆界点間の距離
- 基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値
- 平面直角座標系の番号又は記号
- 境界標の表示
- 測量年月日
- 作製者の住所・氏名・資格
令和2年改正以降の運用ポイント:
令和2年8月1日施行の不動産登記規則改正により、地積測量図への基本三角点等に基づく世界測地系の座標値の記載が原則化された。これにより、現地復元能力の高い地積測量図が公的に蓄積されることとなった。
ただし、基本三角点等が周辺にない場合や地形的にこれによる測量が困難な場合は、その限りではないとされており、任意座標による測量成果での提出も例外的に認められる運用となっている。任意座標で作成した場合は、その旨を地積測量図に明記する必要がある。
実戦上の注意点:
- 平面直角座標系は19系統あり、土地の所在地により系が決まる。系を間違えると座標変換が必要となり、測量成果がそのまま使えなくなる
- 「筆界点間の距離」は座標値から逆算した辺長を記載するのが原則。実測辺長との差は、座標の計算精度(通常 mm 単位)に依存する
- 書式試験では、座標値を四捨五入して小数第2位(cm)まで記載するのが標準(測量成果は小数第3位まで保持し、図上記載で第2位丸めの慣行)
- 境界標の有無は地積測量図の重要記載事項で、現地確認の根拠となる
中級者は、規則77条の記載事項を「地番情報・座標情報・測量成果情報」の3グループで整理して記憶し、令和2年改正で何が原則化されたかを言語化できるようにしておきたい。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主な論点 | 主たる根拠 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 不動産登記法(表示登記) | 合筆登記と抵当権の登記事項一致 | 不登法41条6号/不登規則105条2号 |
| 第2問 | 土地家屋調査士法 | 認定調査士の業務範囲(筆界特定代理・境界ADR代理) | 調査士法3条1項4号・7号、2項/弁護士法72条 |
| 第3問 | 民法(相隣関係) | 越境枝の切除(令和3年改正) | 民法233条1項・2項・3項・4項 |
| 第4問 | 測量計算 | 座標法(倍面積法)による面積計算 | 倍面積法公式/関数電卓2台まで持込可 |
| 第5問 | 作図書式 | 地積測量図の記載事項(座標・系番号) | 不登規則77条/国土調査法施行令2条1項1号 |