遺留分と事業承継の特例とは──自社株を後継者に集める「除外合意・固定合意」の入口

この記事の要点 自社株を生前贈与で後継者に集めると、相続のときにほかの相続人から遺留分(法律で保障された最低限の取り分)を金銭で請求されるおそれがあります 中小企業の事業承継には、経営承継円滑化法の「遺留分に関する民法の特例」があり、推定相続人全員と後継者の書面の合意で、贈与した自社株を遺留分の計算から外す(除外合意)か、その価額を合意の時点で固定する(固定合意)ことができます 合意の効力が生じるには、合意から1か月以内に後継者が経済産業大臣の確認を申請し、確認から1か月以内に家庭裁判所へ許可を申し立て、許可を受けることが必要です 対象は「生前贈与」で渡した株式等です。遺言で渡す株式は、この特例の対象ではありません 合意の内容づくりと家族間の調整は弁護士、税金は税理士、株主名簿・定款・登記は司法書士と、役割を分けて進めます 自社株を後継者1人に集中させたい経営者にとって、遺留分は「後から効いてくる」問題です。生前に株式を後継者へ贈与しておいても、経営者が亡くなったとき、ほかの相続人が遺留分を主張すれば、後継者はまとまったお金の支払いを求められることがあります。これに備える制度として、経営承継円滑化法(正式名称「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」)には「遺留分に関する民法の特例」が設けられています。 ...

2026年10月23日 · ひぐらしさとし

自社株を誰に遺すか──経営者の遺言の書き方と「相続させる」株式の名義書換

この記事の要点 自社株を特定の後継者に渡したいなら、遺言で「どの会社の、どの種類の株式を、何株(または全部)」と特定して書くのが出発点です 後継者が相続人なら「相続させる」と書く遺言が一般的です。この場合、株式に譲渡制限(会社の承認がないと譲渡できない定め)があっても、会社の承認を受けずに株主名簿の名義書換を請求できます(会社法134条4号) 遺言執行者(遺言の内容を実現する役目の人)を遺言で決めておくと、名義の書き換えなどの手続きを進める役を担える場面があります 株主名簿の名義書換は会社の中の手続きで、登記ではありません。亡くなった経営者が取締役・代表取締役だった場合は、役員の変更登記が別に必要です(2週間以内) 株の値段の評価や相続税は税理士、遺留分(最低限の取り分)をめぐるもめごとは弁護士、公正証書遺言の作成は公証人の役割です 経営者が遺言を残さずに亡くなると、自社株は相続人全員で共有する状態(「準共有」)になり、遺産分割がまとまるまで株主としての権利を使うことにも手間がかかります。これを避けるもっとも基本的な備えが、遺言で「誰に」「どの株式を」渡すかを決めておくことです。 ...

2026年10月22日 · ひぐらしさとし

自社株の相続と議決権──株式が分散すると会社が動かなくなる理由

この記事の要点 経営者が亡くなって自社株が複数の相続人に分散すると、普通決議(過半数)・特別決議(3分の2以上)の数字が揃わず、役員選任や定款変更が進められなくなることがある 遺産分割がまとまるまでの株式は相続人全員の準共有(共同で持ち合う状態)となり、権利行使者を1人定めて会社に通知しなければ、原則として議決権を行使できない(会社法106条) 会社側の対応策として「相続人等に対する売渡請求」(会社法174条)があるが、定款の定め・特別決議・1年の期限・価格の協議という条件と限界がある 最も確実なのは、経営者が元気なうちに株式を後継者へ集約しておくこと 中小企業の経営者が亡くなったとき、会社にとって最も深刻な影響のひとつが、自社株(経営者が持っていた自社の株式)の分散です。株式が複数の相続人に分かれて承継されると、株主総会で必要な賛成の数が揃わなくなり、役員の選任すら決められない──つまり「会社が動かなくなる」事態が現実に起こりえます。 ...

2026年8月25日 · ひぐらしさとし

非上場株式を相続したら──取引相場のない株の名義書換と少数株主の現実

この記事の要点 非上場株式を相続しても会社の承認は不要だが、会社が定款で定めていれば「売渡請求」を受けることがある 株主としての権利を会社に主張するには、株主名簿の名義書換(めいぎかきかえ)が必要 配当も売却先もないまま少数株主になるケースは珍しくなく、対応は早めの整理が肝心 「親が中小企業の株を少し持っていた。相続財産の一覧に出てきたが、上場株のように証券会社に問い合わせれば済む話ではないらしい」──非上場株式(取引相場のない株式)の相続で、こうした戸惑いを抱える方は少なくありません。 ...

2026年8月18日 · ひぐらしさとし