家族信託が向かないケース──身上監護・年金・認知症がすでに進んでいるとき

この記事の要点 家族信託は「財産を家族に託して管理してもらう」契約です。財産以外のこと(施設入所や介護の契約など)を任せる仕組みではありません 年金を受け取る権利のように、法律で人に譲れないとされている財産は、信託することができません 家族信託は本人が結ぶ契約なので、本人が契約の内容を理解できなくなった後は、新しく始めることができません 受託者を引き受けられる家族がいない場合も、家族信託は使いにくくなります それぞれの場面には、任意後見・法定後見・日常生活自立支援事業など、代わりに検討される制度があります。迷ったら、お近くの司法書士にご相談ください 家族信託は、認知症への備えとしてよく名前が挙がる仕組みですが、どんな場面にも使える万能の制度ではありません。結論から言うと、「財産以外のことを任せたい」「任せたい財産がそもそも信託できない」「本人がもう契約を結べない」「託せる人がいない」という場面では、家族信託は向かないか、使うことができません。こうした場面では、別の制度を中心に考えることになります。 ...

2026年10月31日 · ひぐらしさとし

親の判断能力が落ちてきたと感じたら──使える制度を時間軸で並べる(見守り・委任・後見・信託)

この記事の要点 見守り契約・財産管理等委任契約・任意後見契約・家族信託・銀行の代理人の届出は、どれも親本人が内容を理解して自分で決めることが前提の「契約による備え」です。判断能力が落ちるほど、新しく始めるのは難しくなります 判断能力が落ちてきた時期に新しく使い始められる仕組みとして、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業や、法定後見のうちの「補助」があります 契約の内容を理解するのが難しくなった後は、元気なうちに用意してあった備えを動かすか、家庭裁判所の法定後見を使うか、が基本の選択肢になります 親がいまどの段階にあるかを医学的に判断するのは医師です。家族の見立てだけで決めつけないことが大切です 迷ったら、介護や暮らしのことは地域包括支援センター、制度や手続きのことはお近くの司法書士にご相談ください 親の物忘れが増えた、通帳の置き場所が分からなくなることがある──そう感じたとき、子の立場で知っておきたいのは、「どの制度が、親のどの段階まで使えるのか」です。結論から言うと、契約で結ぶ備えの多くは、親本人が内容を理解して決められるうちでなければ新しく始められません。逆に、その時期を過ぎても使える仕組み(法定後見など)もあり、早めに用意しておいた備えには、判断能力が落ちてきたときに初めて動き出すものもあります。 ...

2026年10月27日 · ひぐらしさとし

成年後見の申立ては取り下げられる?──家庭裁判所の許可が必要な理由(家事事件手続法121条)

この記事の要点 後見開始の申立ては、審判(家庭裁判所の決定)が出る前であっても、家庭裁判所の許可がなければ取り下げられない(家事事件手続法第121条) 同じ制限は、保佐・補助の開始の申立てや、任意後見監督人の選任の申立て(任意後見契約の効力を発生させるためのものなど)にも置かれている 後見人を誰にするかは家庭裁判所が決める。家庭裁判所の案内では、「希望した候補者が選ばれそうにないから取り下げる」といった選任への不満を理由とする取下げは、本人の利益に配慮して許可されない可能性が高いと説明されている 「親に後見人をつけようと申し立てたけれど、やはりやめたい」と思っても、成年後見の申立ては自由に取り下げることができません。結論から言うと、審判が出る前でも家庭裁判所の許可が必要で、審判が出た後は取り下げ自体ができなくなります。本記事は、執筆時点(2026年09月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月29日 · ひぐらしさとし

生前対策は何から始める?──遺言・贈与・家族信託・後見の全体マップ

この記事の要点 生前対策は「制度」から選ぶのではなく、「何が心配か・何をしたいか」から入ると迷いにくい 財産の行き先を決めたいなら遺言、元気なうちに渡したいなら生前贈与、判断能力が下がったときの備えなら任意後見・家族信託、体が弱ったときや亡くなった後の事務なら見守り契約・財産管理委任契約・死後事務委任契約が入口になる 遺言・任意後見・家族信託などは、本人に判断能力があるうちでなければ準備できない。生前対策そのものに法律上の期限はないが、「元気なうち」が実質的な期限になる 制度は組み合わせて使うこともできるが、どう組み合わせるかは家族構成や財産の内容によって変わるため、一律の正解はない 下の一覧表で自分の心配ごとに近い行を探し、詳しくはそれぞれの記事へ進んでください 「生前対策をしたほうがいいとは聞くけれど、何から始めればいいのか分からない」──そう感じたときは、まず「何が心配か」を一つ決めて、その心配に対応する制度の記事から読むのが近道です。遺言・生前贈与・家族信託・任意後見といった制度は、それぞれ得意な場面が違うため、心配ごとが決まれば読むべき記事もおのずと絞られます。 ...

2026年9月26日 · ひぐらしさとし

任意後見契約はやめられる?──効力が生じる前と後で違う解除の方法

この記事の要点 任意後見監督人が選ばれる前なら、本人・任意後見受任者のどちらからでも、公証人の認証を受けた書面によって、いつでも解除できる(任意後見契約に関する法律9条1項) 任意後見監督人が選ばれた後は、本人・任意後見人のどちらからの解除も、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て行う(同条2項) 家庭裁判所が任意後見人をやめさせる「解任」(同法8条)は、当事者の意思で契約をやめる「解除」とは別の仕組み 任意後見契約は、結んだあとでもやめる(解除する)ことができます。ただし、その方法は、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任する前か後かで大きく変わります。選任の前は比較的簡単な手続きで解除できますが、選任の後は家庭裁判所の許可が必要になります。本記事は、執筆時点(2026年9月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年9月25日 · ひぐらしさとし

見守り契約・財産管理委任・死後事務委任──「後見の手前」を支える3つの契約

この記事の要点 見守り契約は「定期的な連絡・訪問で本人の状況を確認する」契約、財産管理委任契約は「判断能力はあるが体が不自由なときに財産管理などの事務を代わってもらう」契約 どちらも判断能力が低下する前から使え、判断能力が低下した後に備える任意後見契約、死亡後に備える死後事務委任契約と組み合わせることで、生前から死後まで切れ目のない備えになる 4つの契約は役割が異なるため、まずは自分がどの時期・どの場面の備えを必要としているかを整理することが第一歩 「まだ判断能力はしっかりしているが、足腰が弱って銀行や役所に出向くのが難しくなってきた」「ひとり暮らしで、何かあったときにすぐ気づいてもらえるか不安」――こうした声から検討されることが多いのが、見守り契約と財産管理委任契約です。判断能力が低下した後の備えである任意後見契約や、死亡後の備えである死後事務委任契約とは対象となる時期が異なり、いわば「後見の手前」の期間を支える仕組みといえます。この記事では、見守り契約・財産管理委任契約を中心に、死後事務委任契約・任意後見契約との役割分担を整理します。 ...

2026年7月17日 · ひぐらしさとし

家族信託と任意後見はどう違う?──認知症対策の2つの制度を比較

この記事の要点 家族信託は「財産を柔軟に活用・承継する」ため、任意後見は「財産管理と生活・療養の手続きを幅広く任せる」ための制度で、目的が違う どちらも本人が元気なうち(判断能力があるうち)に準備する必要があり、判断能力が下がってからでは間に合わない 両方を組み合わせて使うこともできる。自分の状況にどちらが合うかは、お近くの司法書士や公証役場に相談しながら決めるのが安心 「親が認知症になったら、家のことやお金のことは誰がどう管理するのか」——その備えとしてよく比べられるのが、家族信託とはと任意後見契約とはの2つです。結論から言うと、両者は「認知症に備える」という目的こそ重なりますが、得意なことも仕組みもかなり違います。この記事では、それぞれの深い解説は上の2記事にゆずり、「何がどう違うのか」を一般的な内容として並べて整理します。 ...

2026年7月15日 · ひぐらしさとし

任意後見契約とは──元気なうちに「将来の後見人」を自分で選ぶ

この記事の要点 任意後見契約(にんいこうけんけいやく)は、判断能力があるうちに、将来判断能力が低下したときに備えて「誰に・何を任せるか」を自分で決めておく契約 家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と違い、支援する人(任意後見人)と任せる内容を自分で選べるのが最大の特徴 契約は必ず公証役場で公正証書として作成し、実際に効力が生じるのは判断能力が低下して家庭裁判所が「任意後見監督人」を選んだ時点から 将来、認知症などで判断能力が下がったとき、財産の管理や契約を誰に任せるか——それを、元気なうちに自分の意思で決めておけるのが「任意後見契約」です。判断能力が下がってから家庭裁判所が支援者を選ぶ法定後見の3類型(後見・保佐・補助)とは、支援者を「誰が選ぶか」という点で大きく異なります。この記事では、任意後見契約とは何か、どんな流れで使われるのかを一般的な内容として整理します。 ...

2026年7月14日 · ひぐらしさとし

認知症になると預金は凍結される?──本人と家族が「できなくなること」

この記事の要点 認知症そのものではなく、「判断能力が低下したと金融機関が認識すること」が引き金になって、預金の引き出しなどが制限されることがあります 制限がかかると、家族であっても本人名義の口座から自由にお金を引き出せなくなる場合があります 対策には、判断能力があるうちに結ぶ「家族信託」や「任意後見契約」などがあります 判断能力が低下したあとは、家庭裁判所が関与する「法定後見」という制度で財産管理を支える仕組みがあります 制度の使い分けは個別事情によって変わるため、早めにお近くの司法書士にご相談ください 認知症になると、なぜ預金が引き出せなくなるのか 結論から言うと、預金口座は「認知症と診断された瞬間」に自動的に凍結されるわけではありません。実際に制限がかかるのは、窓口でのやり取りなどを通じて金融機関が「本人の判断能力が低下している可能性がある」と気づいたときです。 ...

2026年7月13日 · ひぐらしさとし