第1問(不動産登記法・表示登記)
問:登記簿上の地目が「畑」と記録されている土地について、現況が住宅敷地に変更されているにもかかわらず、所有権登記名義人がそのまま放置していた場合、登記申請義務違反となるか。義務違反の場合の根拠条文と過料の上限を述べよ。
答:不動産登記法37条1項により、地目に変更があったときは、表題部所有者または所有権の登記名義人は変更があった日から1月以内に地目変更登記を申請する義務を負う。義務違反の場合は同法164条1項により10万円以下の過料に処せられる。
解説:地目変更登記の申請義務は、表示登記の代表的な義務化制度である。地目の認定は土地の主たる用途による(現況および利用目的に重点を置く)とされ、不動産登記事務取扱手続準則68条以下に地目認定の基準が定められている(同準則68条は宅地・田・畑・山林・原野・雑種地など全23種類の地目を列挙)。住宅敷地として利用されているにもかかわらず登記簿上「畑」のまま放置されているケースでは、「変更があった日」を起算点として1月で申請義務違反となる。実務では「変更があった日」の特定が困難な場合があり、登記官の認定や合理的な期日推定によって運用されるのが通例である。表題部のみが登記されている土地でも、所有権登記名義人がいる場合は登記名義人が申請義務者となる点に注意。なお、地目変更登記は「地番に変更を生じない」点で分筆・合筆登記とは異なる位置付けとなる。
第2問(土地家屋調査士法)
問:土地家屋調査士法3条1項が規定する調査士の業務を列挙し、特にADR代理関係業務(土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続代理)を行うことができる調査士の要件を述べよ。
答:土地家屋調査士法3条1項は1号から8号まで列挙し、①不動産の表示に関する登記について必要な土地・家屋に関する調査または測量(1号)、②不動産の表示に関する登記の申請手続またはこれに関する審査請求の手続についての代理(2号)、③同申請または審査請求の手続について法務局・地方法務局に提出・提供する書類または電磁的記録の作成(3号)、④筆界特定の手続についての代理(4号)、⑤筆界特定の手続について法務局・地方法務局に提出・提供する書類または電磁的記録の作成(5号)、⑥前各号に掲げる事務についての相談(6号)、⑦土地の筆界が現地において明らかでないことを原因とする民事紛争に係る民間紛争解決手続についての代理(7号、ADR代理)、⑧前号に掲げる事務についての相談(8号、ADR相談)。ADR関連業務である7号・8号は、土地家屋調査士法3条2項により、法務大臣の認定を受けた土地家屋調査士(ADR認定土地家屋調査士)のみが行うことができる。
解説:調査士法3条1項は調査士の業務範囲を1号から8号まで列挙する。1号から6号が基本業務、7号がADR代理、8号がADR相談である。ADR代理関係業務は平成17年改正で創設され、法務大臣の指定する研修(特別研修)を修了し、考査に合格した認定土地家屋調査士のみが行うことができる(同条2項)。ADR代理関係業務は弁護士共同受任により行うのが基本的な枠組み(同条4項参照)。なお、ADR代理関係業務は司法書士法3条1項6号(簡裁訴訟代理関係業務)の認定制度と類似する。補助者制度(調査士法24条)については、補助者は調査士の指揮監督下で業務を補助するに過ぎず、補助者の名義で登記申請代理を行うことはできない点に注意。**「業務範囲は1号〜6号の基本業務+7号・8号のADR関連業務」「7号・8号はADR認定土地家屋調査士のみ」「補助者は指揮監督下のみ」**の3点で押さえるのが頻出整理。
第3問(民法・相隣関係改正)
問:令和5年4月1日施行の改正民法209条(隣地使用関係)について、改正前の規律と改正後の規律の主な違いを述べよ。
答:改正前は「隣地使用請求権」として、隣地所有者の承諾または承諾に代わる判決を要する構成だったが、改正後は「隣地使用権」として、一定の目的のために必要な範囲で隣地を使用できる権利として整理された。使用目的は①境界・近傍における障壁・建物等の築造・収去・修繕、②境界標の調査または境界に関する測量、③民法233条3項の規定による枝の切取り、の3類型に明示された(209条1項各号)。使用にあたっては事前通知義務(同条3項)と償金支払義務(同条4項)を負う。
解説:改正前民法209条は「土地の所有者は、境界又はその近傍において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる」と規定し、隣地所有者の同意または同意に代わる判決を必要とする構成だった。これでは隣地所有者が所在不明の場合や非協力的な場合に実務上の支障が大きく、令和3年改正(令和3年法律第24号、令和5年4月1日施行)で「請求権」から「使用権」へ性質が変わった。改正後209条1項各号は使用目的を限定列挙し、3項では「あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地を現に使用している者に通知しなければならない」と通知義務を、4項では「隣地の所有者又は隣地を現に使用している者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる」と償金請求権を定める。「請求権から使用権への性質変更」「目的の限定列挙3類型」「事前通知義務」「償金請求権」の4点で押さえる。境界測量に必要な隣地立入りが「使用権」として明示された意義は調査士実務にとって大きい。
第4問(測量計算・座標法)
問:四角形の土地の4頂点が次の座標値で時計回りに与えられているとき、座標法(シューレース公式)により面積を求めよ。座標の単位はメートル、面積の単位は平方メートルで小数第3位まで答えよ。
A(X=0.000, Y=0.000)、B(X=20.000, Y=10.000)、C(X=30.000, Y=30.000)、D(X=5.000, Y=25.000)
答:450.000 m²
解説:座標法による面積計算では、次の公式(倍横距法)を用いる。
$$S = \frac{1}{2}\left|\sum_{i=1}^{n} x_i \cdot (y_{i+1} - y_{i-1})\right|$$
ここで $y_{n+1}=y_1$、$y_0=y_n$ とする。4点A・B・C・Dを順に当てはめると:
$$S = \frac{1}{2}\left| x_A(y_B - y_D) + x_B(y_C - y_A) + x_C(y_D - y_B) + x_D(y_A - y_C) \right|$$
$$= \frac{1}{2}\left| 0 \times (10 - 25) + 20 \times (30 - 0) + 30 \times (25 - 10) + 5 \times (0 - 30) \right|$$
$$= \frac{1}{2}\left| 0 + 600 + 450 - 150 \right| = \frac{1}{2} \times 900 = 450.000\ \text{m}^2$$
別解として、シューレース公式(行列式形式)でも同じ結果が得られる:
$$S = \frac{1}{2}\left|\sum_{i=1}^{n}(x_i y_{i+1} - x_{i+1} y_i)\right|$$
調査士試験は**関数電卓2台まで持込可(プログラム機能なし)**であり、座標差の積和計算は電卓に手早く落とし込めるよう日頃から練習しておきたい。実務では座標求積簿の様式(不動産登記規則別記第二号様式)に従って各点ごとに計算経過を記載する。座標値の精度(小数点以下の桁数)は地積測量図の精度区分(国土調査法施行令2条1項1号)に応じて要求される点も併せて確認しておきたい。
第5問(書式論点・地積測量図)
問:地積測量図の必須記載事項を、不動産登記規則77条1項に基づいて主要な記載事項を列挙せよ。
答:①地番区域の名称(1号)、②方位(2号)、③縮尺(3号)、④地番(隣接地の地番を含む。4号)、⑤地積および求積方法(5号)、⑥筆界点間の距離(6号)、⑦国土調査法施行令2条1項1号に規定する平面直角座標系の番号または記号(7号)、⑧基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値(8号)、⑨境界標があるときは当該境界標の表示(9号)、⑩測量の年月日(10号)。
解説:地積測量図の記載事項は不動産登記規則77条1項各号に列挙されており、表示に関する登記の中核を成す書式である。特に「地積および求積方法」(同項5号)と「筆界点間の距離」(同項6号)は求積の根拠を明示する重要事項であり、書式試験で記載を漏らすと大きな失点となる。平成17年改正以降は世界測地系に基づく測量が整備されたことに伴い、平面直角座標系の番号または記号(同項7号)と基本三角点等に基づく測量の成果による筆界点の座標値(同項8号)の記録が定められた。境界標があるときは当該境界標の表示(同項9号)も必須で、不動産登記規則77条2項により、境界標の存する筆界点に符号を付し、適宜の箇所にその符号および境界標の種類(コンクリート杭・金属プレート・石杭など)を記録する方法によることとされている。地積測量図は分筆登記・地積更正登記・地図訂正等の添付書面として最重要書類の一つで、座標法による求積を採用する場合は別記第二号様式の座標求積簿を添付するのが一般的である。条文順に・号番号付きで暗記しておくのが直前期の定石。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 主要根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 不動産登記法(表示) | 不登法37条1項・164条1項/不動産登記事務取扱手続準則68条 |
| 2 | 土地家屋調査士法 | 調査士法3条1項各号・2項・24条 |
| 3 | 民法相隣関係(改正) | 民法209条1〜4項/令和3年法律24号 |
| 4 | 測量計算・座標法 | シューレース公式・倍横距法/関数電卓持込可ルール |
| 5 | 書式論点 | 不動産登記規則77条1項各号/別記第二号様式 |