問:未成年者Aが甲土地を成年Bに売却した後、Aが当該売買契約を取り消した。その後、甲土地の登記名義がBに残ったままBがCに甲土地を売却した。AはCに対して、登記なくして甲土地の所有権を主張することができるか。

答:原則として、登記なくして所有権を主張することはできない。取消し後の第三者であるCとの関係は、二重譲渡類似の対抗問題として民法177条によって処理されるためである。

解説:取消しの効果は遡及する(民法121条)が、判例・通説は、取消しに登場した第三者との関係を「取消しによりAに所有権が復帰した」と擬制したうえで、Bを起点とした二重譲渡類似の関係として民法177条で処理する立場をとる(大判昭和17年9月30日民集21巻911頁の流れ)。一方、取消しの第三者については、未成年者取消・錯誤取消の場合は取消しの遡及効が原則として貫徹され、第三者保護規定は限定的(錯誤・詐欺取消しに関する民法95条4項、96条3項のように善意・無過失要件付きの保護規定がある類型を除く)。未成年者取消には、これに相当する善意第三者保護規定は置かれていないため、取消し前の第三者は原則として保護されない。本問は「取消し後の第三者」の枠であり、177条の対抗関係に持ち込まれる点が出題ポイント。


問:被相続人Aの法定相続人がB・C・Dの3名である場合に、Bだけが相続人申告登記(不動産登記法76条の3)の申出をしたとき、Bの申出によって、未だ申出をしていないC・Dの相続登記の申請義務(同法76条の2第1項)も履行されたものとして扱われるか。

答:扱われない。相続人申告登記の申出は、申出をした相続人ごとに義務履行の効果が生じる(不動産登記法76条の3第2項)。C・Dについては別途、相続人申告登記の申出または相続登記の申請が必要である。

解説:相続登記の義務化(令和6年4月1日施行、不動産登記法76条の2)と同時に整備された相続人申告登記(同法76条の3)は、遺産分割協議が整わない等の事情で相続登記を期限内にできない相続人が、自らが法定相続人であることを申し出ることで、当該相続人について義務履行があったものとみなす制度である。条文上、効果は申出人個別に発生する(同条2項)。したがって、一人の相続人の申出によって全相続人の義務が一括で履行されたものとされるわけではなく、共同相続人ごとに個別の対応が必要となる。なお、申出は単独で可能、戸籍情報の収集も住所等変更登記の義務化(同法76条の5)と同様、相続人が独立して進められる設計になっている。


問:株式会社が、すでに発行している種類株式に新たに譲渡制限の定めを設ける定款変更をしようとする場合、当該種類株式の種類株主による種類株主総会の決議は必要か。必要であるとして、その決議要件はどのようなものか。

答:原則として、当該種類株式の種類株主による種類株主総会の特殊決議が必要である(会社法111条2項1号、324条3項1号)。決議要件は、議決権を行使することができる種類株主の半数以上(頭数要件)であって、当該種類株主の議決権の3分の2以上の賛成。

解説:会社法111条2項は、すでに発行されているある種類の株式について、その内容として全部取得条項または譲渡制限の定めを新たに設ける定款変更には、当該種類の種類株主による種類株主総会の決議を要するとする。決議要件は同324条3項1号により特殊決議となり、株主総会の特別決議(同条2項)よりも重い「半数以上の頭数要件」が加わる点が押さえどころ。商業登記の実務では、定款変更を決議した株主総会議事録に加えて、種類株主総会議事録、株主リスト、定款(変更後)の添付が必要となり、議事録の決議要件・出席種類株主数の記載が補正リスクの中心となる。


問:訴訟告知(民事訴訟法53条)を受けた者が、当該訴訟において補助参加をしなかった場合に、後の訴訟において、被告知者と告知者との間で、前訴判決のいわゆる参加的効力(同法46条)は及ぶか。

答:及ぶ。訴訟告知を受けた者が補助参加しなかった場合でも、参加できる第三者であった限り、参加的効力の規定の適用については補助参加したものとみなされる(民事訴訟法53条4項)。

解説:補助参加の参加的効力は、前訴判決の主文の判断のみならず、敗訴の原因となった理由中の判断にも及ぶ(最判昭和45年10月22日民集24巻11号1583頁)。これは既判力と異なり、当事者間の判決の効力ではなく、補助参加人・被参加人間の特殊効力である。訴訟告知は、被告知者が補助参加するかどうかを問わず、後の求償等の訴訟で前訴判決と矛盾する主張をすることを防ぐ機能をもつ。実務上、訴訟告知を受けた者が「自分は関係ない」と参加を見送っても、参加的効力からは免れない点が試験で問われやすい。


問:認定司法書士は、訴額140万円の事件について簡易裁判所における第一審の訴訟代理人として活動した。当該事件が控訴され地方裁判所に係属した場合、認定司法書士は控訴審の訴訟代理人として活動することができるか。

答:できない。認定司法書士の訴訟代理権限は、簡易裁判所における訴訟手続に限られる(司法書士法3条1項6号・2項)。控訴審以降は弁護士でなければ訴訟代理人として活動できない(弁護士法72条)。

解説:司法書士法3条1項6号は「簡易裁判所における訴訟手続」と限定しており、同項7号の和解・調停手続も簡易裁判所の手続を対象とする。簡裁訴訟代理関係業務は、訴訟物の価額が140万円を超えない請求事件に限られ(同項6号イ)、認定司法書士は控訴の提起や上訴の起案など簡裁段階の手続には対応できるが、地方裁判所に係属した控訴審の口頭弁論期日への出頭・準備書面の作成代理は、原則として権限外となる。実務上は、敗訴判決を受けた依頼者から控訴審の代理を求められた場合に、弁護士を紹介する切替えが必要になる。司法書士法上の業務範囲を超えて代理行為を行えば、弁護士法72条違反のほか、司法書士法上の懲戒対象にもなり得る。


出題分野の振り分け

分野 中心論点
第1問 民法 取消し後の第三者と民法177条
第2問 不動産登記法 相続人申告登記の効果範囲
第3問 商業登記法/会社法 種類株式への譲渡制限付与と特殊決議
第4問 民事訴訟法 訴訟告知と参加的効力
第5問 司法書士法 認定司法書士の訴訟代理権限の範囲