第1問(民法・抵当権の物上代位)
問: A所有の甲建物に、Bを抵当権者とする抵当権が設定され、その登記がされている。Aは甲建物をCに賃貸していたところ、Cが賃料を滞納している。Bは、Cが滞納している賃料債権について、物上代位による差押えをすることができる。なお、当該賃料債権は他に譲渡・差押えがされていないものとする。
答: ○
解説: 抵当権者は、その目的物の賃貸により債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても物上代位することができる(民法372条による民法304条1項の準用)。賃料は「目的物の賃貸により債務者が受けるべき金銭」に当たり、物上代位の対象となる(最判平成元年10月27日民集43巻9号1070頁)。物上代位の権利行使は、払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない(民法304条1項ただし書)。なお、抵当権設定後に賃料債権が第三者へ譲渡された場合の優劣は、抵当権設定登記と債権譲渡通知(民法467条2項)の先後で決まる(最判平成10年1月30日民集52巻1号1頁)。
第2問(不動産登記法・仮登記に基づく本登記)
問: 所有権に関する仮登記に基づき本登記を申請する場合において、当該仮登記の後に登記された第三者の所有権に関する登記名義人は、登記上の利害関係人として承諾を要する。当該第三者が承諾しない場合、申請人は当該承諾に代わる確定判決を得て本登記を申請することができる。
答: ○
解説: 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、その第三者の承諾があるときに限り申請することができる(不動産登記法109条1項)。承諾が得られないときは、その承諾に代わる確定判決を得たうえで本登記を申請することが認められている(同条同項)。本登記がなされた場合、当該利害関係人の登記は登記官の職権で抹消される(同条2項)。仮登記の順位保全効により、本登記の順位は仮登記の順位による(不動産登記法106条)。
第3問(会社法・取締役の競業避止義務)
問: 取締役会設置会社でない株式会社の取締役が、自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとする場合は、当該取引について重要な事実を開示し、株主総会の承認を受けなければならない。
答: ○
解説: 取締役会設置会社でない株式会社(取締役会非設置会社)の取締役は、自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引(競業取引)をしようとするときは、株主総会において重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない(会社法356条1項1号)。取締役会設置会社では、株主総会ではなく取締役会の承認となる(会社法365条1項)。取締役会設置会社の場合、取引後遅滞なく当該取引についての重要な事実を取締役会に報告する義務もある(会社法365条2項)。承認を欠いた競業取引で会社が損害を被った場合、当該取締役は会社に対し任務懈怠による損害賠償責任を負い、当該取引によって取締役又は第三者が得た利益の額は会社の損害額と推定される(会社法423条2項)。
第4問(民事訴訟法・既判力の主観的範囲)
問: 確定判決の既判力は、当事者及び当事者と同視すべき者にのみ及び、口頭弁論終結後の承継人には及ばない。
答: ×
解説: 民事訴訟法115条1項は、確定判決が効力を有する者として、(1)当事者、(2)当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人、(3)前2号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人、(4)前3号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者、を列挙している。したがって、口頭弁論終結後の承継人にも既判力は及ぶ(同条1項3号)。これは、訴訟物たる権利関係の決着を尊重し、終結後にその地位を引き継いだ者が同じ争いを蒸し返すことを防ぐ趣旨である。承継人には特定承継人(売買等)も包括承継人(相続人等)も含まれる。なお、口頭弁論終結前の承継については、承継参加・引受訴訟の手続(民事訴訟法49条〜51条)で処理される。
第5問(供託法・弁済供託の取戻請求)
問: 弁済供託をした債務者は、供託物の還付を受ける権利を有する債権者から供託所に対し供託受諾の意思表示があった後でも、供託原因が消滅したことを理由として、供託物の取戻しを請求することができる。
答: ×
解説: 弁済供託の供託者は、原則として供託物の取戻しを請求することができる(民法496条1項本文)。ただし、(1)債権者が供託を受諾した時、(2)供託を有効と宣告した判決が確定した時、又は(3)供託によって質権・抵当権が消滅した時は、取戻しはできなくなる(民法496条1項ただし書、2項)。本問の「供託所に対する供託受諾の意思表示」は(1)に該当するため、その後は取戻請求ができない。供託受諾の意思表示は、供託所に対してなされる必要がある(供託規則47条、最判昭和33年5月20日民集12巻7号1086頁参照。※判例の民集巻号頁は執筆時点で一次資料での最終確認に至らず)。なお、供託原因が消滅したかどうかは取戻事由とは別個の問題で、本肢の理由付けは誤りである。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 論点 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 民法 | 抵当権の物上代位(賃料) | 民法372条・304条1項、最判平成元年10月27日民集43巻9号1070頁 |
| 第2問 | 不動産登記法 | 仮登記に基づく本登記と利害関係人 | 不動産登記法106条・109条 |
| 第3問 | 会社法 | 取締役の競業避止義務(取締役会非設置会社) | 会社法356条1項1号、365条、423条2項 |
| 第4問 | 民事訴訟法 | 既判力の主観的範囲(口頭弁論終結後の承継人) | 民事訴訟法115条1項3号 |
| 第5問 | 供託法 | 弁済供託の取戻制限事由 | 民法496条、供託規則47条 |