第1問(測量法総論・作業規程の準則)
問: 公共測量における「作業規程の準則」の役割と、その制定主体について述べよ。
答: 作業規程の準則は、公共測量を行う際の標準的な作業方法と精度を定める技術基準であり、国土交通大臣が定めて公示する。
解説: 測量法33条に基づき、公共測量の実施機関(地方公共団体等)は作業規程を定めなければならず、その作業規程は国土交通大臣の承認を受けることが必要である。国土交通大臣は、これらの作業規程の標準となる「作業規程の準則」を定めて公示する(測量法34条)。準則は告示として公表されており、平成20年3月31日国土交通省告示第413号で全部改正されたのち、令和7年(2025年)3月31日付の国土交通省告示第240号により一部改正された。最新版では、標高成果「測地成果2024」への対応、GNSS標高測量の公共測量への導入、三次元点群データを利用する測量技術の規定整備などが反映されている。準則は公共測量における精度・観測方法・成果品の様式等の基準として機能し、各機関の作業規程はこの準則に整合する形で定められる。
第2問(基準点測量・電子基準点)
問: 電子基準点(GEONET)の役割と、その成果物の利用範囲について述べよ。
答: 電子基準点は、全国に設置されたGNSS連続観測局であり、24時間365日のGNSS信号を受信して、地殻変動の監視と高精度測量の基準点としての役割を果たす。成果物(座標値・観測データ)は基準点測量・地殻変動研究・防災・カーナビ等の即時測位サービスに広く利用される。
解説: 電子基準点は国土地理院が管理する基準点で、全国約1,300点に配置されている(GEONETの呼称はGEodetic Earth Observation NETwork system)。連続的なGNSS観測により、(1)地殻変動の監視(地震・火山活動の検知)、(2)公共測量の高精度な基準点としての利用、(3)即時測位サービス(リアルタイムキネマティック測量)の補正情報配信、などに活用される。基準点測量における新点設置の際の与点として用いられ、電子基準点のみを既知点とした基準点測量も認められている。
第3問(写真測量・パスポイント/タイポイント)
問: 航空写真測量における「パスポイント」と「タイポイント」の意味と配置の役割を述べよ。
答: パスポイントは、同一コース内の隣接する写真同士をつなぐための共通点であり、コース方向の連続性を確保する役割を持つ。タイポイントは、隣接するコース間の写真同士をつなぐための共通点であり、コース間の接合(横方向の整合)を確保する役割を持つ。
解説: 空中三角測量(航空三角測量)では、隣接する写真間に共通する標定点を設定し、これを介して写真同士を結合する。パスポイント(pass point)はオーバーラップ部分(隣接写真の重複部)に配置され、コース内の連続性を担保する。タイポイント(tie point)はサイドラップ部分(隣接コースの重複部)に配置され、コース間の接合を担保する。両者を適切に配置することで、撮影区域全体を一体として処理することができる。実際の自動空中三角測量では、画像解析により大量のパスポイント・タイポイントが自動抽出されることが一般的である。
第4問(河川測量・水準基標/距離標/水位観測)
問: 河川測量における水準基標、距離標、水位観測の役割と配置の意味を述べよ。
答: 水準基標は河川の縦断・横断測量や水位観測の標高基準となる基準点で、河川沿いに概ね5〜20kmごとに設置される。距離標は河川の中心線上の距離を示す標識で、河口又は合流点を起点として0キロから順に設置される。水位観測は水位観測所で水位を継続的に記録し、洪水対策・河川管理の基礎資料となる。
解説: 河川測量は治水・利水・環境管理を目的とした測量であり、水準基標・距離標・水位標(量水標)の3点が基本構造となる。水準基標(BM)は1級水準点と同等の精度で設置され、当該河川区間の高さの統一基準として用いられる。距離標は河川延長上の位置の特定に使用され、横断面測量・河道計画・占用許可の位置基準となる。水位観測は水位観測所において継続的・定期的に行われ、観測結果は水位流量曲線の作成や洪水予報に活用される。
第5問(用地測量・境界確認手続)
問: 用地測量における境界確認の手続の流れと、境界点を保全するための措置について述べよ。
答: 境界確認は、(1)関係資料(公図・地積測量図・登記簿等)の収集・整理、(2)現地踏査と既存境界標の確認、(3)関係権利者への立会い依頼、(4)現地での立会い・協議による境界の特定、(5)境界点の表示と境界確認書の作成の流れで進められる。境界点の保全には、永続性のある境界標(コンクリート杭・金属標等)の設置と、座標値の保存(後日復元のため)が用いられる。
解説: 用地測量は、公共事業の用地買収や境界画定のために行う測量であり、境界の確定と保全が中核となる。境界確認の手続は、関係権利者の合意を得て境界を画定するもので、立会い結果は「境界確認書」として書面化され、関係者が署名・押印する。境界点の保全には、地中に埋設するコンクリート杭、金属プレート、リベット等が用いられ、現地復元のための座標値(公共座標系)も併せて記録される。なお、境界確認の対象は所有権の境(私法上の境界)であり、筆界(公法上の境界)の特定とは別の概念である。
第6問(地図編集・縮尺と取捨選択)
問: 地図編集において、縮尺の大きい原図から縮尺の小さい編集図を作成する場合に、地物の取捨選択が必要となる理由と、その判断基準について述べよ。
答: 縮尺が小さくなると、図上に表現できる情報量が物理的に減少し、すべての地物をそのまま描画すると重なって判読不能になるため、地物の取捨選択が必要となる。判断基準は、(1)地物の重要度(公共施設・主要交通網は優先)、(2)縮尺に対する地物の大きさ・密度、(3)地図の使用目的、などである。
解説: 地図編集は、より大きい縮尺の原図を素材として、目的とする縮尺の地図を作成する作業である。縮尺が1/2,500から1/25,000に変わると、図上の長さは1/10になり、面積は1/100になるため、表現できる情報量が大幅に減る。このため地物の取捨選択(総描・省略)と転位(重なる地物の位置をわずかにずらす操作)が必要になる。優先順位の例として、(1)公共施設・主要道路・主要河川・鉄道は優先的に表現、(2)細かい建物・小道・小流水は省略または総描、というように判断する。
第7問(応用測量・道路の縦断曲線)
問: 道路設計に用いられる「凸型縦断曲線」と「凹型縦断曲線」の違いと、設計速度との関係を簡潔に述べよ。
答: 凸型縦断曲線は、上り勾配から下り勾配へ変化する箇所に用いる縦断曲線で、視距の確保が設計の主眼となる。凹型縦断曲線は、下り勾配から上り勾配へ変化する箇所に用いる縦断曲線で、夜間の前照灯による視距・乗り心地(遠心力)の確保が設計の主眼となる。設計速度が大きいほど、必要な縦断曲線半径も大きくなる。
解説: 道路の縦断線形は、勾配の変化点で滑らかに接続する必要があり、その接続曲線が縦断曲線である。凸型(凸曲線)は山型の頂点を作る曲線、凹型(凹曲線)は谷型の底を作る曲線。凸型では運転者の視線が遮られて前方視距が短くなりやすく、停止視距の確保が制約条件となる。凹型では夜間の前照灯の照射範囲、また谷型での重力方向の遠心力が乗員に違和感を与えないことが制約条件となる。設計速度が大きいほど、停止視距も大きく必要となるため、縦断曲線半径も大きくなる。道路構造令で設計速度ごとの最小値が定められている。
第8問(写真測量・縮尺計算)
問: 航空写真の撮影縮尺を求めよ。撮影高度を $H = 2{,}400$ m、カメラの焦点距離を $f = 0.15$ m とし、地表面は基準面の標高にあるものとする。
答: 1/16,000
解説: 航空写真の撮影縮尺 $S$ は、カメラの焦点距離 $f$ と撮影高度 $H$(地表面からの高さ)の比で表される。
$$ S = \frac{f}{H} $$
数値を代入する。
$$ S = \frac{0.15}{2{,}400} = \frac{1}{16{,}000} $$
なお、地形に高低差があると撮影縮尺は地点ごとに変化する(高い地点では撮影高度が小さくなるため、写真上の縮尺は大きくなる)。本問は基準面で計算しているため、$H$ をそのまま用いてよい。撮影縮尺は写真測量の精度・地上画素寸法(GSD)の議論の出発点となる重要な指標である。
第9問(水準測量・高低差と標高計算)
問: A点とB点の間で直接水準測量を1区間で行ったところ、A点側に立てた標尺の読定値(後視)が $a = 1.234$ m、B点側に立てた標尺の読定値(前視)が $b = 0.876$ m であった。A点の標高を $H_A = 10.000$ m とするとき、B点の標高 $H_B$ を求めよ。
答: $H_B = 10.358$ m
解説: 直接水準測量における高低差 $\Delta H$ は、後視 $a$ と前視 $b$ の差で求められる。
$$ \Delta H = a - b $$
数値を代入する。
$$ \Delta H = 1.234 - 0.876 = 0.358 \text{ m} $$
B点の標高は、A点の標高に高低差を加えて求める。
$$ H_B = H_A + \Delta H = 10.000 + 0.358 = 10.358 \text{ m} $$
後視(既知の標高に立てた標尺の読み)と前視(求めたい点に立てた標尺の読み)の差で高低差を求めるのが直接水準測量の基本である。観測精度向上のため、レベルは前視・後視の標尺の中間に据え(前後等距離)、標尺は鉛直に立てる。多区間にわたる水準測量では、後視の総和と前視の総和の差で全区間の高低差が得られる。
第10問(基準点測量・閉合トラバースの閉合誤差)
問: ある閉合トラバース測量で、各測線の緯距・経距を全測点について合計したところ、緯距の合計(閉合差) $\Delta X = +0.060$ m、経距の合計(閉合差) $\Delta Y = +0.080$ m となった。路線の総延長を $L = 300.000$ m とするとき、閉合誤差 $E$ と閉合比 $1/M$ を求めよ。
答: 閉合誤差 $E = 0.100$ m、閉合比 $1/M = 1/3{,}000$
解説: 閉合トラバースでは、すべての測線の緯距・経距を合計したときに理論上はゼロになるべきだが、観測誤差により残差が生じる。これが緯距の閉合差 $\Delta X$、経距の閉合差 $\Delta Y$ である。閉合誤差 $E$ は2方向の閉合差を合成したベクトルの大きさである。
$$ E = \sqrt{(\Delta X)^2 + (\Delta Y)^2} $$
数値を代入する。
$$ E = \sqrt{0.060^2 + 0.080^2} = \sqrt{0.0036 + 0.0064} = \sqrt{0.0100} = 0.100 \text{ m} $$
閉合比は路線の総延長 $L$ に対する閉合誤差 $E$ の比で表され、慣例として $1/M$($M = L/E$)の形式で示す。
$$ \frac{1}{M} = \frac{E}{L} = \frac{0.100}{300.000} = \frac{1}{3{,}000} $$
閉合比は基準点測量の精度評価指標として古くから用いられてきた指標である。なお、現行の公共測量作業規程の準則(令和7年3月31日改正)では、基準点測量の点検計算における閉合差の許容範囲は、路線長 $S$(km単位)を用いた式(4級基準点測量の既知点間の閉合差は $50\text{ mm}\sqrt{S}$ など)で規定されており、閉合比による直接の評価ではない点に留意したい。本問の数値は、閉合誤差と閉合比の計算手順を確認するための例示である(※許容範囲の具体的な数値は最新の準則別表で必ずご確認ください)。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 形式 | 論点 |
|---|---|---|---|
| 第1問 | 測量法総論 | 知識 | 作業規程の準則(測量法33条・34条) |
| 第2問 | 基準点測量 | 知識 | 電子基準点(GEONET)の役割 |
| 第3問 | 写真測量 | 知識 | パスポイント・タイポイント |
| 第4問 | 河川測量 | 知識 | 水準基標・距離標・水位観測 |
| 第5問 | 用地測量 | 知識 | 境界確認手続と境界点保全 |
| 第6問 | 地図編集 | 知識 | 縮尺と地物の取捨選択 |
| 第7問 | 応用測量 | 知識 | 道路の縦断曲線(凸型・凹型) |
| 第8問 | 写真測量 | 計算 | 撮影縮尺 $S = f/H$ |
| 第9問 | 水準測量 | 計算 | 高低差と標高計算(後視−前視) |
| 第10問 | 基準点測量 | 計算 | 閉合誤差と閉合比(合成ベクトル) |