問:測量法において、「測量士」と「測量士補」はそれぞれどのような立場で測量に従事できるか。両者の業務範囲の違いを答えよ。
答:測量士は、測量に関する計画を作製し、または実施する立場で測量に従事する。測量士補は、測量士の作製した計画に従って測量に従事する(測量法48条1項・2項)。両者の最大の違いは、計画作製の権限の有無である。
解説:測量士補は測量士の指揮監督のもと、測量士が作製した計画に従って実施する技術者という位置づけになる。測量士補は単独で測量計画を作製することはできない。基本測量および公共測量においては、これらの資格を有しない者は従事できない(同法48条柱書、ただし測量士の指示に基づく補助作業の限定的取扱いはある)。試験では「測量士補は計画を作製できない」点が頻出する。
問:公共測量を実施する計画機関と作業機関は、それぞれ何を行う主体か。両者の関係を簡潔に説明せよ。
答:計画機関は公共測量を計画し、実施する責任を負う者(国・地方公共団体等)であり、作業機関は計画機関の依頼または委託を受けて実際の測量作業を行う者をいう。計画機関は公共測量実施計画書を作成し、国土地理院長に提出してその技術的助言を求めなければならない(測量法36条)。
解説:公共測量の主役は計画機関である。発注(計画)と実施(作業)を分けて理解することが、測量法の枠組みを掴むうえで重要。計画機関は基本測量の成果や既存の公共測量の成果を活用し、二重計測を避ける義務を負う(同法38条参照)。作業機関は計画機関の指示に従い、作業規程に基づいて測量を実施する。
問:基準点測量において、新たに設置する基準点を「新点」、既に成果が確定している基準点を「既知点」と呼ぶ。1〜4級基準点測量における既知点の種類と、新点を求める基準点測量の等級の区別を、概要のみ答えよ。
答:既知点の種類は、上位の基準点(電子基準点、1〜2等三角点、1〜4級基準点等)であり、新点を求める基準点測量は、所要の精度に応じて1級基準点測量、2級基準点測量、3級基準点測量、4級基準点測量に区分される。上位の既知点を用いて下位の新点を求めるのが原則である(上位の精度を下位に伝搬する)。
解説:基準点測量は、上位(精度の高い)既知点を起点として、下位(精度の低い)新点を求めていく階層構造をもつ。1級が最も高精度(路線長平均1.5km・最大4km程度)で、4級は最も簡易(路線長平均50m程度)。等級が下がるにつれ、観測機器の精度・観測回数・許容誤差が緩和される。試験では、各等級でどの上位点を既知点として使えるか(電子基準点は1級から使用可、等)の組合せが問われる。
問:多角測量で、ある基準点から目標点を直接視通できない場合、目標点付近に偏心点を設けて観測を行う。この偏心観測において、偏心距離と偏心角の違いを答えよ。また、両者を「偏心要素」と総称する。
答:偏心距離は、本来観測すべき点(目標点)と実際に観測した偏心点との間の水平距離である。偏心角は、本来観測すべき点から見た偏心点の方向角(または偏心方向)である。両者をあわせて偏心要素と呼び、観測値の偏心補正計算の入力となる。
解説:偏心観測の補正計算は、観測値(角度・距離)を本来の点を基準とした値に換算する作業である。偏心要素(偏心距離・偏心角)が正確に測定されていなければ補正計算全体の精度が崩れるため、偏心要素そのものの観測精度を上位として確保する必要がある。前回(第15回)で偏心観測の概念を扱ったが、本問では偏心要素の中身(距離と角度の2要素)を整理した。
問:閉合トラバース測量における、閉合差と閉合比の定義をそれぞれ簡潔に答えよ(公式のみ述べてよい。具体数値の計算は不要)。
答:閉合差は、出発点に戻ってきた点の座標が、出発点の座標とどれだけずれているかを表す残差(ベクトルの大きさ)であり、
$$\text{閉合差} = \sqrt{(\Delta X_\text{閉合})^2 + (\Delta Y_\text{閉合})^2}$$
閉合比は、閉合差を多角形の全測線長(路線長)$\sum S$ で除した値である。
$$\text{閉合比} = \frac{\text{閉合差}}{\sum S}$$
解説:閉合差は単位がメートル(または㎝・mm)、閉合比は無次元の比(あるいは「1/N」形式)で表される。閉合比は精度の指標であり、公共測量作業規程の準則では等級別に許容範囲が定められている(たとえば3級基準点測量では1/3000程度を基準とする等、級により異なる)。計算問題では、許容範囲内かどうかの判定を求める形式が出題されやすい。
問:水準測量における直接水準測量と間接水準測量の違いを、それぞれの原理に即して答えよ。
答:直接水準測量は、水準儀(レベル)と標尺を用い、視準線が水平になるよう調整したうえで、後視と前視の標尺読定値の差から高低差を直接求める方法である。間接水準測量は、高低角と斜距離(または水平距離)から三角関数を用いて高低差を計算する方法(三角水準測量等)であり、TS(トータルステーション)等の角度・距離測定機器を利用する。
解説:公共測量における水準測量は、原則として直接水準測量を用いる。間接水準測量は、急斜面や谷越えなど直接水準ができない地形で補完的に用いられる方法である。直接水準は精度が高い反面、設置回数が多く時間がかかる。間接水準は機動性に優れるが、距離が長くなると気差・球差の影響が大きくなる。
問:水準測量で用いる標尺について、零点誤差(標尺の0目盛りが標尺底面と一致していない誤差)を、観測手順の工夫で消去する方法を答えよ。
答:往復観測を行い、1区間の標尺の使用順序を行きと帰りで入れ替えることで零点誤差を消去できる。あるいは、1区間内の観測回数を偶数にし、出発時と到着時に同じ標尺を用いる運用でも零点誤差を相殺できる。
解説:零点誤差は標尺ごとに固有の系統誤差(一方向に偏った誤差)であり、後視・前視で同じ標尺を交互に使うと累積する。これを避けるため、1区間内の往復で標尺の使用ペアを入れ替えると、零点誤差が打ち消し合う。実務では「標尺をペアで運用する」「観測回数を偶数にする」がセットで指導される。試験では、零点誤差は観測手順で消去可能な誤差として、視準軸誤差(自動レベルの十字線調整)と並んで頻出する。
問:水準測量における気差と球差は、それぞれ何が原因の誤差か。また、両者を合わせた「両差」を消去するには、観測上どのような工夫が有効か。
答:気差は、地球の大気の屈折により光線が下方に湾曲することによる誤差であり、観測距離が長いほど影響が大きい。球差は、地球が球面であるために、水平視準線と地球面(水準面)が乖離することによる誤差である。両差を消去するには、前後視距を等しくする運用が有効であり、後視と前視で同じ距離・同じ大気条件で観測すれば、両差の影響が相殺される。
解説:両差は、観測距離 $S$(km)の概ね 2 乗に比例して大きくなる(およそ $0.067 S^2$ 〔m〕程度とされる)ため、視準距離を短く・前後視距を等しくする運用が水準測量の精度確保の要となる。公共測量作業規程の準則では、視準距離の最大値、前後視距の差の許容範囲が等級別に細かく定められている。受験対策としては、「前後視距を等しくする」運用と「視準距離を一定範囲に収める」運用の両方を、両差消去とセットで覚えることが定石。
問:GNSS(衛星測位)測量におけるサイクルスリップとは何か、また発生したときの影響を答えよ。
答:サイクルスリップとは、GNSS受信機が衛星からの信号(搬送波位相)を一時的に追跡できなくなり、波数(整数バイアス)の連続性が失われる現象である。発生すると、連続的に観測しているはずの搬送波位相に整数波長分の飛びが生じ、そのまま処理すれば基線解の精度が大きく劣化する。
解説:サイクルスリップは、衛星と受信機の間に障害物(建物・樹木・自動車等)が一時的に入る、低仰角の衛星で多重反射が起きる、強い電離層擾乱が起きる、などの状況で発生しやすい。解析ソフトウェアはサイクルスリップを検出して整数バイアスを再決定する処理を行うが、検出漏れがあると誤った基線解が確定する。受験対策としては、「サイクルスリップは整数波数の飛び」と「仰角マスクを設定して低仰角衛星を排除する」運用上の対策をセットで覚えるとよい。
問:地形測量における等高線には、主曲線・計曲線・補助曲線の区別がある。2万5千分の1地形図における主曲線と計曲線の間隔はそれぞれ何メートルか。
答:2万5千分の1地形図において、主曲線は10メートル間隔、計曲線は50メートル間隔(主曲線5本ごとに1本の太線)で描かれる。
解説:等高線の主曲線間隔は、地形図の縮尺によって規定される。
- 5万分の1:主曲線20m、計曲線100m
- 2万5千分の1:主曲線10m、計曲線50m
- 1万分の1:主曲線2m、計曲線10m
計曲線は読図の便宜のために主曲線5本ごとに太く描く線である。補助曲線(第1次・第2次)は、主曲線だけでは地形を表現しきれない緩傾斜地などで、主曲線間隔の1/2や1/4の間隔で破線として補助的に描かれる。地形図問題では、主曲線・計曲線の間隔と縮尺の対応をワンセットで暗記しておくこと。
出題分野の振り分け
| 問 | 分野 | 中心論点 |
|---|---|---|
| 第1問 | 測量法総論 | 測量士と測量士補の業務範囲(測量法48条) |
| 第2問 | 測量法・公共測量 | 計画機関と作業機関、実施計画書(測量法36条) |
| 第3問 | 基準点測量 | 等級区分と既知点の階層構造 |
| 第4問 | 多角測量 | 偏心観測における偏心要素(偏心距離・偏心角) |
| 第5問 | 多角測量 | 閉合差と閉合比の定義(公式) |
| 第6問 | 水準測量 | 直接水準と間接水準の違い |
| 第7問 | 水準測量 | 零点誤差と消去のための観測手順 |
| 第8問 | 水準測量 | 気差・球差・両差と前後視距等距 |
| 第9問 | GNSS測量 | サイクルスリップと仰角マスク |
| 第10問 | 地形測量 | 等高線(主曲線・計曲線)の縮尺別間隔 |
試験日まで毎日、知識確認問題を連載していきます。今年の合格をめざして、諦めずに頑張っていきましょう‼