自筆証書遺言が無効になる典型例──日付・押印・加除訂正・共同遺言・パソコン本文

この記事の要点 自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分の手で書き、印を押すのが法律の定める方式です(民法968条1項)。1つでも欠けると、遺言として効力が認められないおそれがあります 失敗しやすいのは「日付」「押印」「書き間違いの訂正」「夫婦で1枚に書く」「本文をパソコンで作る」の5つです 押印を不要にする改正法(令和8年法律第45号)は公布されていますが、2026年10月の執筆時点では施行されていません。今書くなら押印が必要です 書き終えたら、方式どおりかどうかを第三者に確認してもらうと安心です 自筆証書遺言は、紙とペンと印鑑があれば自分ひとりで作れます。その手軽さの一方で、民法が決めた書き方(方式)を1つでも外すと、遺言として扱われないおそれがあります。民法960条は「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」と定めているからです。 ...

2026年10月16日 · ひぐらしさとし

公正証書遺言の作り方──公証役場での流れ・証人2人・必要書類・手数料の考え方

この記事の要点 公正証書遺言は、公証役場への事前相談→資料の提出→文案の確認→作成当日→正本・謄本の受け取り、という流れで作るのが一般的です 作成当日には証人2人以上の立会いが必要で、推定相続人や財産を受け取る人などは証人になれません(民法974条) 手数料は「財産を受け取る人ごとの金額」を基準表に当てはめて合算し、加算をのせて決まります。2025年10月1日に手数料の額が改定されています 2025年10月1日から、公正証書は原則として電子データで作成されるようになり、条件を満たせばウェブ会議での手続も制度上可能になりました まずは必要書類をそろえ、内容のメモを作ってから公証役場に相談するのが近道です 公正証書遺言は、公証人(公証役場で公正証書の作成などを担当する法律の専門家)が、遺言をする人から内容を聞き取って作る遺言です。作り方の大きな流れは、公証役場に相談し、必要書類と内容のメモを出し、公証人が作った文案を確認したうえで、作成当日に証人2人の立会いのもとで仕上げる、というものです。 ...

2026年10月15日 · ひぐらしさとし

相続人申告登記を自分で申し出る手順──申出書の書き方・添付書類・費用がかからない理由

この記事の要点 相続人申告登記の申出は、①戸籍の証明書を集める→②申出書を作る→③不動産の所在地を管轄する法務局に出す→④完了の通知書を受け取る、の4ステップで進みます 申出書に書くのは、亡くなった方の氏名と相続開始の日、申出人の住所・氏名、連絡先、添付書類、不動産の表示などです。押印は不要とされています 添付する戸籍は「申出人が登記上の所有者の相続人であること」が分かる範囲で足りるとされていますが、数次相続(相続が二重三重に重なっている状態)などでは範囲が広がります 登録免許税はかかりません。申出はWebブラウザの「かんたん登記・供託申請」からもできます 戸籍の範囲の判断に迷う、相続人が多い、相続が何代も重なっているといった場合は、お近くの司法書士にご相談ください 相続人申告登記は、法務局に「自分は登記上の所有者の相続人です」と申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたものとみなしてもらう手続です(不動産登記法76条の3第1項・第2項)。結論から言うと、亡くなった方と申出人の関係がシンプルな相続であれば、法務省が公開している申出書の様式と記載例に沿って、ご自身で申し出ることも想定された手続になっています。 ...

2026年10月14日 · ひぐらしさとし

相続した不動産を売ったときの「取得費加算の特例」とは──納めた相続税の一部を、売却益の計算で差し引ける制度(租税特別措置法39条)

この記事の要点 相続税額がある人が、相続した財産を一定の期間内に売ると、納めた相続税のうちその財産に対応する部分を「取得費」に加えて、売却益(譲渡所得)を計算できる(租税特別措置法39条1項) 期間は「相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」。申告期限は原則として相続の開始を知った日の翌日から10か月以内なので、おおむね相続開始から3年10か月が目安 相続税額がない人(基礎控除の範囲内で相続税がかからなかった人など)は対象外。使うには確定申告で特例を受ける旨を書き、計算明細書などを添付するのが原則 相続した不動産を売って利益が出ると、売った相続人に所得税・住民税(譲渡所得の税金)がかかることがあります。一方で、その不動産にはすでに相続税もかかっています。このように「相続税」と「売ったときの税金」の両方がかかる場面で、納めた相続税の一部を売却益の計算で差し引けるのが 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例 です。以下は、執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

相続登記が終わったら次にやること──固定資産税の名義・火災保険・賃貸契約・売却の準備

この記事の要点 相続登記が終わると、登記所から市区町村へ通知が届き、固定資産税の課税台帳の名義は登記をもとに切り替わる仕組みになっている(地方税法382条) ただし固定資産税は毎年1月1日時点の状況で決まるため、新しい名義人あての納税通知書になるのは、登記後に迎える1月1日を基準とする年度から 火災保険は登記で自動的に切り替わらない。契約者・被保険者などの名義や引き落とし口座を、保険会社・代理店に連絡して確認する 人に貸している物件は、貸主の立場も相続で引き継がれる。借主・管理会社への連絡を忘れずに 売却を考えるなら、登記後に届いた書類の保管、共有者どうしの意思確認、仲介は不動産会社・税金は税理士への相談を早めに 相続登記が終わると、ひと区切りついた気持ちになります。ただ、不動産の名義が変わったことで、まわりの手続きにも見直しが必要なものが出てきます。結論からいうと、固定資産税の名義は登記をもとに市区町村の側で切り替わる仕組みですが、火災保険や賃貸借契約、売却の準備は、名義を引き継いだ方が自分で動く必要があります。 ...

2026年10月13日 · ひぐらしさとし

相続人が一人だけのときの相続手続き──遺産分割協議が要らない分、何をどの順番で進めるか

この記事の要点 「相続人が一人」と言えるのは、亡くなった方の戸籍を出生から死亡までたどり(親や兄弟姉妹が相続人になる場合は親の戸籍なども)、ほかに相続人がいないと確かめてから。前の結婚で生まれた子・認知した子・養子が見つかれば、相続人が増えたり、相続人だと思っていた人が相続人でなくなったりする 遺言がなく相続人が一人なら遺産分割協議は不要。ただし相続放棄・限定承認の3か月、準確定申告の4か月、相続税申告の10か月、相続登記の3年という期限は、当てはまる場合にはそのまま残る 協議の成立を待つ必要がないため、相続すると決めたあとは、戸籍などがそろえば相続登記の準備を進められる 相続人が一人だけの場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議は必要ありません。そのぶん手続きは軽くなりますが、期限のある手続きがなくなるわけではありません。結論から言うと、①本当に一人かを戸籍で確かめる、②遺言の有無を確かめる、③財産と借金を調べ、3か月以内に相続するかどうかを決める、④税金の期限を確認する、⑤相続登記を申請する、という順番で進めるのが基本です。 ...

2026年10月12日 · ひぐらしさとし

帰化した人が亡くなったときの相続の戸籍──帰化前の婚姻・認知・子の出生などの経過は日本の戸籍ではたどれない

この記事の要点 帰化した人の日本の戸籍は、帰化の届出を受けて記載されたところから始まり、帰化する前の身分関係の経過(前の婚姻や離婚、認知、帰化前に生まれた子など)は原則としてたどれない 帰化後に亡くなった人の相続は日本の法律によるが、相続人を確かめるには帰化前の身分関係を示す本国の公的書類とその翻訳文が必要になることがある 相続登記で書類がそろわないときにどう補うかは、提出先の法務局の取扱いによる 相続の手続きでは、亡くなった人の「出生から死亡まで」の戸籍を集めて相続人を確かめるのが基本です。ところが、亡くなった人が帰化して日本の国籍を取得した人だった場合、日本の戸籍だけでは出生までさかのぼれません。日本の戸籍は帰化したところから始まっているためです。なお、本記事は執筆時点(2026年10月)の制度に基づく一般的な解説です。 ...

2026年10月12日 · ひぐらしさとし

相続登記の完了後に届くもの──登記識別情報通知・登記完了証・還付書類の保管と使いどころ

この記事の要点 相続登記が終わると、登記識別情報通知(いまの「権利証」にあたるもの)・登記完了証・原本還付を求めた書類(還付の対象になるもの)の原本が手元に戻ってくる いちばん大切なのは登記識別情報通知。相続した不動産を将来売る・担保に入れるときに使い、なくしても再発行されない 返ってきた戸籍や遺産分割協議書の原本は、預貯金など不動産以外の相続手続きで使うことがあるので、まとめて保管しておく 書類が届いたら、登記事項証明書で名義と持分が申請どおりになっているかを確かめておくと安心 登記識別情報をなくした・盗まれたかもしれないときは、代わりの本人確認の手続きや「失効の申出」という制度がある 相続登記の申請を終えて、しばらくすると法務局から書類が戻ってきます。結論から言うと、最優先で保管すべきは「登記識別情報通知」、次に、返ってきた戸籍や遺産分割協議書などの原本です。「登記完了証」は登記が終わったことのお知らせで、次の登記で提出する書類ではありません。 ...

2026年10月12日 · ひぐらしさとし

相続登記をオンラインで申請する──「かんたん登記・供託申請」と申請用総合ソフト、自分でやるならどちら?

この記事の要点 相続登記(相続による所有権の移転の登記)をオンラインで申請する道具は、パソコンにインストールして使う「申請用総合ソフト」です。ブラウザで使う「かんたん登記・供託申請」で申請できる不動産登記は、建物滅失の登記と登記名義人の表示変更の登記に限られています(2026年10月10日確認)。 戸籍の証明書は電子データでは発行されていないため、相続登記はオンラインだけでは完結しません。申請はオンラインで送り、戸籍などの紙の書類は「特例方式」で法務局に持参するか、書留郵便などで送ります。 紙の書類は、オンライン申請の受付の日から2日以内に法務局に届いている必要があります(初日は数えません。土日祝日が絡むときの数え方は本文で説明します)。 申請する人のマイナンバーカードの電子証明書、ICカードリーダライタ、申請者情報の登録とソフトのインストールが前提になります。 相続人が多い、数次相続がある、遺産分割の内容で迷っているといった場合は、オンラインか書面かを決める前に、お近くの司法書士にご相談ください。 相続登記をオンラインで申請したいとき、まず知っておきたいのは「どの道具を使うか」です。結論から言うと、相続登記の申請そのものは、法務省の登記・供託オンライン申請システムが提供する「申請用総合ソフト」を使います。ブラウザだけで使える「かんたん登記・供託申請」は、2026年10月10日に確認した時点では、相続登記の申請に対応していません。 ...

2026年10月11日 · ひぐらしさとし

公衆用道路・私道・墓地など『評価額のない土地』の相続登記──登録免許税の考え方と、近傍宅地の価格の確かめ方

この記事の要点 評価証明書の「価格」欄が空欄や0円の土地(公衆用道路として使われている私道など)でも、相続登記の登録免許税がかからないとは限りません。課税標準(税額を計算するもとになる金額)は、似た土地の台帳の価格をもとに、登記官が認定した価額になります(登録免許税法施行令附則3項)。 近くの宅地(近傍宅地)の価格をどう使い、どう計算するかは、登記官の認定にかかわる事項です。法務局の案内は地域によって異なるため、割合や計算式を自分で当てはめず、管轄の法務局に確認してください。 近傍宅地の価格を証明書に書くか、別の書面で出すかは、市区町村ごとに違います。確かめる先は「市区町村の窓口」と「管轄の法務局」の2か所です。 認定された価額が100万円以下の土地は、2027年3月31日までの相続登記であれば免税の対象になりえます。また、墓地(墳墓地)に関する登記は、登録免許税法で非課税とされています。 相続登記の準備で評価証明書を取り寄せたら、価格の欄が空欄や「0円」になっている土地が混ざっていた──公衆用道路として使われている私道や、墓地などで起こりやすい場面です。 ...

2026年10月10日 · ひぐらしさとし